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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
【第二巻】第四幕・第一章:共鳴のアルカディア

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第百十四話:未知の地図、大陸の広さ

第百十四話:未知の地図、大陸の広さ


王立図書館の奥底、埃の舞う一角で、サキモリは巨大な羊皮紙の地図を広げていた。

その地図の大部分を占めるのは、人類が支配を失った「魔族領」と、辛うじて維持されている「人間領」。


その二つの勢力が、互いに手を出せずに放置している広大な空白地帯――「死の山脈」が今回の焦点だ。


「……ルミナ先生、こちらの古文書にある、山脈北部の気流と地質記録を照合させてください」


「これだね、おじさん。……でも、ここは人間も魔族も寄り付かない、凶悪な魔物の巣窟だよ? 調査なんて無理だと思うけど……」


ルミナが差し出した書物を、サキモリは瞬き一つせずスキャンしていく。


彼の脳内では、魔族の監視網の限界点と、人類の進軍限界が重なり合う。

その「境界線」に位置する死の山脈の向こう側には、誰も知らない隠しルートが眠っていた。


「……見つけました。ここです」


サキモリの指が、険峻な岩壁が続く「未踏の辺境」を指した。


「魔族はここを『管理コストに見合わない死地』として放置しています。

ですが、この山岳地帯の深部には、かつての地殻変動で断絶した古代の回廊が残っている。


ここを通れば、魔族との無用な接触を避けつつ、聖域への最短経路を確保できます」


「……あえて一番危険な場所を通り、安全を確保するというのですか?」


横から覗き込んだエレンが、驚きに目を見開く。


「はい。今の私の出力は三割。軍を率いた正面突破は論理的ではありません。

ですが、魔物しかいないこの領域なら、私たち四人の連携で突破可能です。


……それに、この山脈には魔族以外の『何か』が残したような、不自然な魔力反応も観測されています」


「魔族以外の何か……? 精霊の気配でも、あるいはもっと別の……無機質な力のような……」


アリサが腰の剣に手をかけ、目を細める。

山脈の奥から漂う、魔族のものとは異質の、冷たい「魔動機械」のような予兆を彼女も感じ取っていた。


「ふふ……ワクワクする計画ではありませんわ。

ただの奪還作戦ではなく、誰も知らない世界の裏側を覗く『冒険』のようですわね、サキモリ様」


エレンが楽しげに微笑む。


その言葉に、サキモリは静かに頷いた。


「これより、私たちは軍の指揮下を離れ、独自の調査を開始します。……識別名『特務小隊:アルカディア』。これが私たちの新しい名前です」


「おじさん、いい名前だね! よし、アルカディア小隊、まずは死の山脈越えの準備開始だよ!」


ルミナが元気よく拳を突き出す。


「四人でなら、どこまでも行ける。……いえ、四人でなければ、この先にある『世界の正体』には辿り着けません。アリサ、エレン。……ルミナ先生」


サキモリは、絶望の地図に刻まれた、誰の手も及んでいない空白の領域を見つめた。


人類と魔族の境界線。

その向こう側に眠る「未知」へと、四人の足跡が刻まれようとしていた。


(第百十四話:完)

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