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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第三幕・第五章:反撃ののろし 【後編:原点にして頂点】

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第百十話:原点にして頂点

第百十話:原点にして頂点


魔王ジャバウォックが光の塵となって消滅し、戦場に静寂が戻る。

サキモリの体内では、四百時間に及ぶ「狂気」の演算が終了を告げていた。


爆音を立てていた心臓の鼓動が急速に落ち着き、血管を焼き続けていた熱が引いていく。

赤黒く濁っていた眼光は光を失い、代わりにいつもの、少し眠たげな「人間の瞳」が戻る。


「……あ、が……」


リミッター解除の反動は、凄まじい疲労となって肉体を襲った。

全身の筋肉が断線したかのように力が抜け、膝が折れそうになる。


だが、サキモリは震える足に力を込め、泥の中に落ちていたボロボロの軍帽を拾い上げた。


彼はそれを深くかぶり直し、乱れた軍服の襟を整える。

血と泥に汚れ、もはや元が何色だったかも定かではない布切れだが、彼はそれを正しく「軍人」として纏い直した。


「サキモリ様!」 「おじさん!」


駆け寄るエレン、アリサ、ルミナ。

三人の顔には、恐怖を乗り越えた安堵と、言葉にできないほどの愛着が溢れていた。


サキモリはゆっくりと彼女たちに向き直り、かつての、物腰の柔らかい「おじさん」の微笑みを浮かべた。


「お待たせしました。……ご無事で何よりです。お怪我はありませんか?」


その声は、つい先ほどまで空間を震わせていた咆哮とは程遠い、穏やかなものだった。


サキモリは優しく手を差し伸べ、彼女たちの頭を順に撫でていく。

戦艦の装甲を砕き、魔王を物理的に解体したその手は、今はただ震える彼女たちを慈しむように、温かな体温を伝えていた。


その瞬間、張り詰めていた戦場の地獄が溶け落ちた。

彼女たちにとって、この無骨で優しい手の感触こそが、本当の意味での「日常」の帰還を告げる福音だった。


かつて人類が繁栄を謳歌した大陸アステリア。しかしこの数百年で勢力図は大きく変わる。


アステリア大陸において、人類は百数十年もの間、敗北の歴史を積み重ねてきた。

広大な大陸の八割を魔族に奪われ、数十の小国が百数十年、数千回という勇者召喚――成功の保証もない「博打ガチャ」に縋り、そのたびに失望を繰り返してきた暗黒の時代。


だが、この日、歴史は決定的に塗り替えられた。


そこにいたのは、伝説に語られるような光り輝く勇者ではない。

神の加護を受けた聖者でもない。


ただ、平和な日常を守るために、徹底的に合理的な手段を選び、己の肉体さえも「構造」として管理しきった、一人の軍人であった。


一人の男の執念という名の「礎」の上に、百数十年ぶりに灯った反撃ののろし。


魔王国連合の1つ、ジャバウォック城の残骸に朝日が差し込み、荒野を照らし出す。

サキモリが守り抜いた三人の少女たちの瞳には、もはや絶望の影はない。


彼らが選ぶ次の道がどこへ続くのか、それはまだ誰にも分からない。

しかし、サキモリという「最強の男」が切り拓いたこの平穏の上に、新しい世界の種は、確実に芽吹き始めていた。


(第三幕:完)

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。


気が付けば110話。

サキモリたちの旅も少しずつ広がり、多くの出会いと別れを積み重ねてきました。


毎日の更新を続けてこられたのは、読んでくださる皆さまのおかげです。


もし少しでも面白い、続きが気になると思っていただけましたら、評価やフォローで応援していただけると嬉しいです。


これからもサキモリたちの旅を、のんびり見守っていただければ幸いです。

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