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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第三幕・第五章:反撃ののろし 【後編:原点にして頂点】

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第百七話:場外乱闘:崩落のジャバウォック

第百七話:場外乱闘:崩落のジャバウォック


城壁を突き破った魔王ジャバウォックの巨躯とともに、サキモリは高度数百メートルの空中へと投げ出された。


「おのれ……空中に逃げ場などないわ! 塵に還れ!」


落下しながら、ジャバウォックが全方位に向けて魔法陣を展開する。放たれたのは、回避不能の速度を持つ極太の魔法雷撃。空中に足場はなく、慣性に従って落ちるだけのサキモリに、それを避ける術はない。


バリバリバリィィィィッ!!


紫電がサキモリの全身を貫き、焼く。常人ならば一瞬で炭化し、意識が蒸発する絶望的な衝撃。だが、サキモリは牙を剥き、その雷撃を「正面から耐える」ことを選択した。


「……思考維持。神経伝達、強制バイパス。……再生開始」


雷撃によって焼かれた皮膚が瞬時に剥がれ落ち、その下から新しい筋肉が、六十倍の速度でブチブチと音を立てて編み上げられていく。さらなる脈動、さらなる血流、さらなる再生。死に至るダメージを、細胞の再生速度で力ずくで押し戻す。それは生物という枠組みを超えた、あまりに異常な「理詰めの耐性」だった。


サキモリは、雷撃に焼かれながらも、共に落下している城壁の巨大な石塊へと手を伸ばした。


足場ポイントを確保。……重心、移動」


サキモリは空中で石塊を掴み、自身の身体を支点に強引に振り回した。雷撃に耐え抜いたその肉体が、石塊の慣性を利用して落下軌道を変える。


ガッ!!


石塊を足場に、垂直落下以上の加速を自身に与える。自由落下の速度に、自らの筋力による爆発的な爆縮を上乗せした。


「なっ……雷撃を喰らって、なお動けるというのかッ!?」


ジャバウォックが驚愕に目を見開く。サキモリはすでに、魔王の頭上へと到達していた。位置エネルギーのすべてを、一点の破壊へと転換する。


「最大出力。……これ(重力)は、俺の味方だ」


サキモリの右脚が、魔王の脳天を捉えた。


ドォォォォォォォォォォォン!!


落下速度と超人的な質量が一体となった一撃。その衝撃は、魔王の巨躯を隕石のごとき質量兵器へと変えた。二つの質量が激突したままジャバウォック城下の市街地へと着弾し、重爆撃機の絨毯爆撃を受けたかのような凄まじい衝撃波が、一帯を更地へと変えていく。


家屋が粉砕され、大地がクレーター状に陥没する。戦場はもはや城内ではない。ジャバウォック領の広大な平原へと引きずり出されたのだ。


「……ガ、ハッ……ア、ガ……」


静まり返ったクレーターの中心。立ち込める土煙を割って、ゆっくりと立ち上がる影があった。


サキモリだ。その姿は、もはや「人間」の限界を超えていた。全身の血管はミミズのように浮き上がり、破裂と再生を繰り返す肉体からは、灼熱の蒸気が絶え間なく立ち昇っている。


雷撃で焼けた軍服の隙間から見えるのは、赤く剥き出しになった筋肉が脈動する、異様な光景だった。


「……心拍数、維持。……計算通りだ」


赤黒く濁った瞳で魔王を見据えるその姿は、血の通った勇者ではない。ただ標的を解体するためだけに熱を放ち続ける、純粋な「暴力の炉」と化していた。


ダメージレースは最終局面。死を忘れた軍人と、誇りを傷つけられた魔王。二人の怪物が放つ殺意が、平原の温度を物理的に上昇させていた。


(第百七話:完)

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