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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第三幕・第五章:サキモリ「原点回帰」 【中編:次元の断絶】

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第百一話:次元切り:上段

第百一話:次元切り:上段


南部戦線、アルタ王国。

かつてサキモリが「始まりの地」として愛したその国は、今やドラグナイトの放つ高次元魔法の光に焼かれ、崩壊の淵に立たされていた。


「……おじさん、嘘……だよね……?」


ルミナは炎の中で力なく呟く。

視界を埋め尽くすのは、空を埋め尽くすほどの魔法陣と、そこから降り注ぐ「ことわり」を書き換える高次元の光。

ドラグナイトの障壁は絶対であり、この世界のいかなる攻撃も届かないはずだった。


だが、その絶望を切り裂いて、一人の「怪物」が戦場に降り立った。


ドォォォォォォォォン!!


「ア、ガ……。……待たせたな、ルミナ」


黒い霧を纏い、全身から命の燃えかすのような蒸気を噴き出す男。

サキモリだ。


彼は傍らに倒れた兵士が握り締めていた、一振りの標準的な鋼鉄の剣を無造作に拾い上げた。

それはどこにでもある、名もなき鍛冶屋が打った量産品に過ぎない。


「無駄だ。高次元の防壁を、そんななまくらで――」


ドラグナイトの嘲笑を、サキモリの「構え」が封殺した。


彼は剣を正しく上段に構える。

魔力など一滴も込めていない。


ただ、心拍数三倍、血圧三倍の状態から、さらに全身の筋力を一点に集中させる。

一般人の三十倍の筋力を、物理学的な「加速」と「重心移動」の極致へと流し込む。


「……一振りで、終わらせる」


サキモリが踏み込んだ。

大地がクレーター状に陥没し、衝撃波が周囲の炎を吹き飛ばす。


「次元切り――上段」


振り下ろされた一閃。


それは、あまりに速く、あまりに重かった。


鋼鉄の剣は、その異常な負荷に耐えきれず、振り抜かれる瞬間に分子レベルで崩壊し、消滅を開始する。

だが、その消滅と引き換えに放たれた「速度の極致」は、大気を、音を、そして「空間そのもの」を強引に断絶した。


パギィィィィィィィィィン!!


鏡が割れるような、物理的な破壊音が響き渡る。


ドラグナイトが誇る高次元魔法の障壁が、まるで薄いガラスのように粉砕された。


斬撃は止まらない。

一直線の振り抜きは、ドラグナイトの肉体を「概念ごと」真っ二つに分かち、そのまま背後の大地を割り、遥か彼方の水平線にある海さえも両断した。


「な……ば、な……物理、だと……っ!?」


ドラグナイトが絶叫と共に光の粒子となって消えていく。


後に残されたのは、サキモリが振り抜いた軌跡に沿って刻まれた、深さ数十メートルに及ぶ巨大な亀裂。


「……あ、あはは。すごい……めちゃくちゃだよ、おじさん……」


ルミナは呆然と、割れた空を見上げた。


そこには魔法の光など一つもない。

ただ、極限まで高められた「純粋な物理」が、世界の理を力ずくで書き換えた、圧倒的な勝利の跡だけが刻まれていた。


(第百一話:完)

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