ファントム、依頼される15
極上のサービスを受け、カジノを後にしようとする二人。
「あ、ちょっと待ってて」
「どちらに? お嬢様」
「……お手洗い! 言わせないでよ」
少し頬を膨らませる玲奈に、「失礼しました」と頭を下げる灰島。
その場で灰島が待っていると、フロアマネージャーが近づいてきた。
「クロウ様。先ほどは、誠に見事な腕前でございました」
その目は、もはや執事を見る目ではなく、一流のプロを値踏みするものだった。
「……私どもの『キング』も、大変感銘を受けておりました」
マネージャーは、漆黒のカードキーを灰島に差し出した。
「これは、選ばれたお客様にのみお渡ししているものです。……ですが、クロウ様には、『客』としては、少々物足りないかと」
「……私には、お話の意味が分かりかねますが」
「マカオのカジノの件、調べさせていただきました」
それは瀬尾が作り上げた、でっち上げの事件。
「私どもは常に『本物』を探しております。もし、クロウ様が今宵のハウスの対応にご満足いただけたのなら……、ぜひ、そのカードでご連絡を」
クロウという得体の知れない男。その正体を徹底的に調べ上げた末に、オーナーが出した結論――それが、この黒いカードだった。
灰島は無言で、その黒いカードキーを受け取った。




