ファントム、依頼される2
「……なんで俺に呼ばれたか、分かるよな?」
そんな特別な日でもあるにもかかわらず、二人はコクチョウに呼び出しを食らう。二人の目の前には、長官である佐伯が仁王立ちしている。
「さっぱり。何も問題になるようなことはしていません」
灰島がそう言えば、佐伯の額に青筋が一本浮かぶ。
「俺も何もしてません。ずっとファントムを見張ってました」
続いて同じようにしれっと話す瀬尾に、もう一本青筋が追加される。
「とぼけるな! では、なぜMI6からうちに、丁重な『感謝』の連絡が来るんだ!? 説明しろ、ファントム!」
バンっと机を叩かれようが、怒鳴られようが、二人の涼しい顔は変わらない。 灰島は、まるで天気の話でもするかのように、淡々と報告を始めた。
「ユキの通う中学の美術教師、三枝誠氏が、アルケナと名乗る国際犯罪組織から脅迫を受けていました。目的は、彼の祖父が遺したとされる、ナチス由来の美術品。MI6も、同じ美術品を追っていたため、現場で接触」
「接触、だと……?」
「はい。アルケナは、文化祭の混乱に乗じて、美術品の強奪を計画。我々は生徒の安全確保を最優先とし、介入しました。結果、アルケナの国内部隊は無力化。対象の美術品は、MI6が確保。人質とされた生徒も、無事、保護しました」
灰島はそこで一度言葉を切ると、完璧に無表情なまま佐伯の血走りそうな目をまっすぐに見つめた。
「――我々は違法行為は、一切行っていません」
あまりにもしれっとした報告に、 佐伯はわなわなと震え、ついに絶叫した。
「だから! その手柄を全てMI6にくれてやった挙句、感謝まで述べられて何も返せないこっちの立場になってものを言え!!」
佐伯の胃が、きりきりと痛む。 彼は大きく息を吸い込むと、怒りを無理やり腹の底へと押し込めた。そして、氷のように冷たい声で告げた。




