ファントム、協力する15
――学校裏通り。
黒いバンの中で、ヴァルチャーは、スナイパーからの通信が途絶えたことに、眉をひそめていた。
「……どうした? 応答しろ!」
その後、すぐにマッド・ドッグにも同じように返信を求めたが何も帰って来ない。
「ちっ、撤収する! 車を出せ!」
簡単な仕事と気を抜いていたのか? 鈍すぎる判断に舌打ちをして運転手に命令をする。運転手が「はっ」とアクセルを踏もうとした瞬間。
──コンコンッ
窓を叩く音が聞こえた。見れば、初老の男性が立っている。ここで騒ぎを起こしても面倒だと判断したヴァルチャーは、視線で運転手に「開けろ」と合図した。
「ここは駐車禁止ですよ」
穏やかな声が、運転席の窓越しに響いた。
「すぐに移動するので──」
「そうですか? でも、この車動きますか?」
「は?」と聞き返す運転手よりも先に、「出せ!」とヴァルチャーが命令する。その命令に従い運転手はアクセルを踏み込んだが、バンは動かない。どんなに踏んでも、タイヤが空転するだけだ。
「何やってる!?」
ヴァルチャーの叫び声を聞きながら、マスターは懐から小さな金属筒を取り出した。
「最近の車は便利ですが、脆弱なのが玉に瑕です。EMP(電磁パルス)で電子制御系が一時的にダウンしちゃうんですよ。それにしても、ちょっと電波が強すぎたかな? あ、これはお返しに」
そう言って、窓の隙間からスッと差し込まれたのは、銀色の小型カプセル。
「……なっ、やめ──」
プシュッ。
次の瞬間、車内に白い煙が充満した。目と喉を刺すような刺激に、ヴァルチャーと運転手は咳き込み、視界を失う。
「げほっ……くそっ、催涙……っ!」
こんな状況に耐えられるわけがなく、ヴァルチャーがドアを開け外に出れば──。
「MI6だ。お前の身柄を確保する」
セレスティーナの部下が、彼らを待ち構えていた。
「さて、こちらも完了です」
マスターの声がインカムから聞こえる。それを聞きながら、灰島は傍の椅子にドカッと座った。




