ファントム、協力する14
「どうした、ファントム! もう終わりか!?」
マッド・ドッグが勝利を確信し、灰島の髪を掴みその顔を引き上げた、その瞬間。
灰島のインカムに瀬尾の声が響き、それを最後に彼の瞳から全ての「情」が消え失せた。彼はマッド・ドッグに掴まれていた腕を、灰島の指がマッド・ドッグの手首を掴んだ瞬間──骨が軋む音がした。
「……なっ……!?」
マッド・ドッグの顔が歪む。握られた腕から力が抜け、灰島の顔を引き上げていた手が、まるで蛇に締め上げられた獲物のように震え始める。
灰島の瞳は冷たい湖面のように静まり返っていた。そこには怒りも痛みもない。ただ、任務を遂行する者の意志だけが宿っていた。
「終わりにする」
その声は低く、しかし確実にマッド・ドッグの鼓膜を打った。
次の瞬間、灰島の膝がマッド・ドッグの鳩尾に突き刺さる。空気を吐ききったマッド・ドッグが呻き声を上げる間もなく、灰島はその巨体を肩で押し上げ、壁に叩きつけた。
「ぐっ……がはっ……!」
壁が軋み、マッド・ドッグの背中がめり込む。だが灰島は止まらない。彼の動きは、まるでプログラムされた機械のように正確だった。
一歩踏み込み、肘をマッド・ドッグの顎に打ち込む。続けざまに、足払いで体勢を崩し、倒れかけたところに拳を叩き込む。
「これで授業は終了だ、質問は受け付けない」
そして最後の一撃──灰島の拳が、マッド・ドッグのこめかみに正確に打ち込まれた。
巨体が崩れ落ち、彼からの質問はなかった。




