ファントム、協力する13
「スナイパーの位置を特定するわ」
インカムから聞こえるユキの声に、セレスティーナは分解されたスナイパーライフルを組み立てながら、風速と湿度を計算していた。
「あら、クラブはどうしたの?」
「スナイパーが片付き次第、生徒を助ける。ユキちゃんに肉体労働は無理でしょ?」
そう話す瀬尾の隣には、玲奈がいた。
「ならこっちと変わってほしかったわ。私、500ヤードが限界なのよ」
「あ、それファントム得意なんだけどね。マッド・ドッグの相手、代わってあげる?」
「私は猛獣には興味ないの」
そんなやり取りの声の合間に聞こえてくるのは、マッド・ドッグが灰島を嬲る音声。ユキは瀬尾の用意してくれたPCの前でヘッドセットを付け、敵の電波を探していた。普段は使わない周波数、しかも暗号化されたものを探っていく。
「──見つけたわ。学校から北東、約500メートル先にある、マンションの屋上」
ユキの声に、セレスティーナはその場所をスコープで覗く。
「OK。5秒ちょうだい」
そういうと、セレスティーナはスナイパーライフルを構え、……息を止めた。
スコープの十字が、マンションの屋上に伏せる黒い影を捉える。風速3.2メートル、湿度48パーセント。弾道補正は完了している。セレスティーナは引き金に指をかけ、静かにカウントを始めた。
「……3、2、1」
乾いた破裂音が、空気を裂いた。
スコープ越しに見えたのは、仰向けに倒れるスナイパーの姿。反動を抑えながら、セレスティーナは小さく息を吐いた。
「排除完了。あなたの番よ、クラブ」
「了解。玲奈ちゃん、行こうか」
その声に玲奈もコクリと頷き、手に持ったものをグッと握った。彼らが仕込んだ煙は、ほとんど無く視界もクリア。
瀬尾が静かに化学室のドアを開けると、玲奈はその隙間から閃光弾を放り込んだ。
「なんだ──っ!?」
閃光弾は、爆発的な閃光と轟音で一瞬にして空間を支配する。
──バンッ!
化学室の中が、白昼のように光に包まれた。視界は真っ白に焼かれ、鼓膜を突き破るような衝撃音が壁を揺らす。
「ぐっ……目が……!」
「耳が……聞こえねぇ……!」
中にいた敵たちが混乱し、叫び声を上げる。その隙に玲奈が滑り込む。彼女の動きは迷いなく、灰島から受けた訓練通り体を動かした。
一人目の敵の手から銃を蹴り飛ばし、肘で喉を打つ。二人目が反応する前に、瀬尾が背後から制圧。玲奈は三人目の足を蹴り膝を付かせると、スタンガンで動きを奪う。その間に、瀬尾が残りの二人も後頭部を強打し、腹部を蹴り上げ完全に制圧した。
「佐々木君、大丈夫!?」
玲奈が駆け寄り、佐々木を縛っていた縄を切る。彼はそのまま玲奈に寄りかかってきた。
「佐々木君!?」
その彼の頸動脈に瀬尾は指を這わせ、「大丈夫、気を失ってるだけ」と状態を確認し、告げた。
「人質はクリア。あとは好きにしていいぞ? ファントム」




