ファントム、協力する12
数分後。 先に、膝をついたのは、マッド・ドッグだった。 灰島の精密な打撃は、確実に彼のスタミナと体幹を奪っていた。方や、灰島は無傷。その差は、歴然だった。
「が……はっ……」
マッド・ドッグの巨体が、まるで糸の切れた操り人形のように、その場に崩れ落ちる。
「終わりだな、お前の雇い主のところまで案内してもらおうか」
マッド・ドッグはアルケナに雇われた、ただの傭兵にすぎない。だからそう聞く灰島に、マッド・ドッグは笑った。
「ははっ……、結局は俺の勝ちってわけだ」
そう言いながら、マッド・ドッグはコンパクトで頑丈な軍専用スマートフォンを取り出し、その画面を灰島に向けた。
そこに映し出されていたのは、化学室で椅子に縛り付けられ、口を塞がれた佐々木のライブ映像だった。
マッド・ドッグは、手に持っていたスマートフォンをインカメラに切り替え、窓際の机の上に立てかけた。
「さあ、ゲームを始めようか。俺の部下がお前の動きを監視している。もし俺に逆らう素振りを見せたら、こいつの指を一本ずつ折るよう命令する」
マッド・ドッグは下品な笑みを浮かべた。
灰島は身動きが取れない。表情は無だが、その瞳の奥では思考が高速で回転していた。
「逆に、俺の攻撃を甘んじて受ければ、こいつは無事だ。さあ、どうする、ヒーローさんよぉ!」
マッド・ドッグはゆっくりと立ち上がると、無防備な灰島の顔面に渾身の拳を叩き込んだ。
ゴッ、と鈍い音がして、灰島の身体が壁に叩きつけられる。口の端からは血が流れていた。
「どうせ仲間がいるんだろう? いいか? 生徒を助けようとしても無駄だ」
今度は鳩尾に一撃を受け、灰島の体が宙に浮いた。
「妙な動きをすればスナイパーがズドンだ」
笑いながら、マッド・ドッグは両手を組んだ拳を、彼の背中に叩き落とした。
「がはっ……」
ここから戦いは一方的な「蹂躙」へと変貌した。
マッド・ドッグはサンドバッグを殴るかのように、灰島の全身に強烈な打撃を与え続ける。灰島は致命傷だけは避けながら、その暴力の全てをその身に受け止め、ただ耐えるしかなかった。




