ファントム、協力する10
彼の後ろ、廊下には武装した部下が五人 。彼らはマッド・ドッグの命令に従い、美術室の中には入ってはこなかった。
「さて、うちのボスがご立腹だ。お前さんのせいで、無駄な時間を食っちまったからな。で、そこに残されたものが本物だな?」
「……っ」
三枝は恐怖に顔を引きつらせ、じりじりと後ずさる。 その怯えた獲物の姿を、マッド・ドッグは心底、楽しむように舌なめずりをした。
「安心しろ、殺しやしねぇよ。ボスはお前を生け捕りにしろと言っている。その額縁の秘密を、吐くまではな」
彼はゆっくりと三枝との距離を詰めていく。
「だが……、まあ、腕の一本、足の一本くらいは構わんだろう」
手に持ったナイフに、自分の舌を這わせてニヤリと笑う。
「わ、私を殺したらっ」
三枝は震えながらも後ろに下がり、自らの価値を口にするが、マッド・ドッグは「あぁ、分かってる」と持っていたナイフを手の中でくるくると回す。
「どこをどうすれば動かなくなるか、どこまでなら生かすことができるか、そのぎりぎりを俺は知ってるから安心しろ」
そして一歩、踏み込んだと思ったら、信じられないほどの速さで距離を詰め寄り、三枝の喉元に突きつける。
マッド・ドッグのナイフが三枝の喉元に突きつけられる寸前、三枝は常人には不可能な体捌きで凶刃を最小限の動きでかわした。
ナイフの切っ先が頬を浅く切り裂いたが、血は流れない。代わりにそこから精巧なラテックスの皮膚がめくれ上がった。
「……!」




