表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コードネーム・ファントムの新たな日常2~少女と名画、そして英国の魔女~  作者: 桜瀬ひな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/53

ファントム、協力する5

 文化祭前夜。

 三枝は目の前に2枚の同じ絵を並べ、じっと見つめていた。彼の目から見ても、すぐには見分けがつかないほど 、精巧な模写、いや、これはもう贋作だ。


「……彼は、きっといい美術修復師になる」


 そう言いながら、指先で額に触れた。


「これで、すべて終わる。じーさん、これでいいよな?」


 誰もいない部屋でそう呟いて、その絵を丁寧にカバンにしまった。



 一方、閉店間際のセグレトでは、文化祭のパンフレットを広げて二人が楽しげに話していた。


「お化け屋敷コンサート? なにこれ」


「うんとね、それは軽音部なんだけど、普通にやっても受けないから、お化けに仮装して演奏するんだって」

「……それ、受けるの?」


 二人のほのぼのとした会話を聞きながら、灰島はカップを洗い棚に戻していく。そして、彼の前にも同じパンフレットがあり、会場の地図のページが開かれていた。



 同じころ、セレスティーナ はシャワーを浴び、バスタオル一枚で出てきたと思ったら、ソファに座る。テーブルの上には、愛用のワルサーPPK/S。


「使う必要がない方がいいのか、それとも……」


 そう言いながら手にし、メンテナンスを始める。


「私は、どちらでもいいのだけどね」


 とても楽しそうにそう呟いて、銃を構え夜空に浮かぶ月を照準に合わせる。


「BAN!」


 こうして、夜は更けていった。



 文化祭当日。

 抜けるような秋晴れの下、私立K中学校・高等学校の門は、朝から多くの来校者で賑わっていた。校庭には吹奏楽部のファンファーレが高らかに鳴り響き、模擬店のテントからは焼きそばの香ばしい匂いや、わたあめの甘い香りが漂ってくる。

 クラスTシャツに身を包んだ生徒たちの弾けるような笑い声、子供の手を引いて歩く保護者たちの穏やかな表情。誰もが、年に一度の平和な「祭典」を心から楽しんでいた。


「ユキちゃん、何食べたい?」

「え? えと、朝ごはんは食べたけど?」

「灰島さんの料理、美味しいもんね。それならどこみたい? お化け屋敷に、モンスターカフェも面白そうだよね」

「……よく、分からないけど」


 そんな会話をしながら、二人は文化祭を満喫していた。



 そして、美術部の展示室は、今年の目玉企画である「本物と偽物」展のおかげで、朝から黒山の人だかりだった。壁には、生徒たちが精巧に模写したゴッホの『ひまわり』やフェルメールの『真珠の耳飾りの少女』が、本物の写真と並べて展示されている。

 その中央には、厳重にガラスケースに収められた「名もなき貴族」があり、その横には「本物」という札が添えられている。一方、その隣の壁には、もう一枚の「名もなき貴族」が無造作に立てかけられ、こちらには「贋作」の札がかかっていた。


「佐々木くん、すごいね! どっちが本物か、全然見分けがつかないよ!」


 友人たちの賞賛に、佐々木は照れくさそうに頭を掻いた。


「ふふっ、ありがとう。でも、先生も手伝ってくれたから。僕一人ではここまでは無理じゃないかな?」


 笑顔でそう話す佐々木とは対照的に、その部屋の隅にいる三枝の表情は曇っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ