ファントム、協力する3
セレスティーナは、完璧な「英会話教師」として生徒たちの人気を集めていた。休み時間にはいつも生徒に囲まれ、その輪の中心で楽しそうに笑っている。 しかし、そのサファイアの瞳は、常に校舎のどこかにいる三枝の姿を捉えていた。
『ターゲット、現在美術室で部活中、なんだけど本当にアルケナ、接触してんのかね? 24時間監視で、俺の方が死にそう』
彼女の「目」と「耳」である瀬尾からの緊張感のない報告は、多少なり彼女をイラつかせる。
「そう、ならあなたが学校の先生をやればいいのよ。日本では情報が必須科目なのでしょう? それなら教えられるんじゃない?」
『うーん、残念。俺の専門は、ハッキングと潜入だからなぁ。善良なる生徒には教えられないな』
そんな軽口を叩き合いながらも、二人の監視網に一切の死角はなかった。
そして、灰島。 昼間の彼は、いつも通りセグレトの寡黙で有能なバリスタだった。常連客と当たり障りのない会話を交わし、完璧なラテアートを描く。 マスターと二人で店を切り盛りするその姿は、どこにでもいる好青年そのものだ。
けれど、そんなセグレトにも休憩時間はある。例えば、ランチの時間が過ぎて客足が落ちる夕方までの時間、彼の姿はセグレトの2階にあった。
ヘッドセットを装着し、暗号化された衛星回線で、彼は世界の裏側に散らばる、古い「同僚」たちと連絡を取っていた。
「……ああ、俺だ。『マッド・ドッグ』の最新の情報を頼む。そうだ、元SASの。奴の行動パターン、特に潜入時の癖が知りたい」
情報は武器となる。それを誰よりも知っているから、疎かにはしない。
「あぁ、灰島くん、知り合いがこんなものを用意してくれてね」
さらにはマスターも、当然ながら準備を怠ることはない。
「……これは」
用意されたものに、灰島は驚きの声を上げ、隣で玲奈がニカっと笑う。
「私が取りに行ってきたの。使い方もばっちりよ!」
こうして、準備は着々と進んでいった。




