ファントム、保護者になる9
「おや、ちゃんと朝食を食べているのですね。感心です」
セグレトに出勤してきたマスターが、まるで出来のいい生徒を褒めるようにそう言ったのに、灰島は首を振る。
「これではビタミンDが足りません。さらにはカルシウムも十分とはいえない。かといってこのメニューに焼き鮭は合いませんし、カルシウムを得るためヨーグルトならいいかと思いましたが彼女の身体年齢ではカロリーもオーバーしてしまう。しかも、肝心なオムレツは少々焦げてしまいました。これでは──」
灰島の発言を、マスターは右手を軽く上げて制した。
「もういいですよ。確かにあなたの言う通り、その朝食は栄養学的には完璧ではなかったのかもしれません。カルシウムもビタミンも、少しだけ足りなかったのでしょう」
「ですから明日は……」
「ですが、それを食べたユキくんは、どう思いましたか?」
再びマスターに遮られた言葉は、ユキに向けられた。ユキはほとんど食べ終えたお皿を見て、顔を上げる。
「美味しかったわ。毎日食べたいくらい」
微笑む彼女の表情に、嘘は見当たらない。
「これが答えですよ、灰島君。君は間違えてもいないし、失敗もしていません」
「……」
「それに、1食ですべてを満たさなくてもいいのです。3食と、少々の間食で賄えばね」
灰島が、何も答えられないでいるとマスターは、「ほっほっほっ」と心底、楽しそうに笑った。




