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侵入

 お兄ちゃん、カッコよかったなぁ‥。

 バイクで走り去ったお兄ちゃんの余韻に浸っていた。

 いつもはそこまでカッコよくないけど、いざとなったら頼りになる自慢のお兄ちゃんだ。


 って、こんな事している暇はない。

 親友のピンチなのだ。

 早く親友の元に向かわないと。

 私は親友の元に急ぐ事にする。


 ただ、ここで一つ問題が発生する。


 どうやって病院の中に入るかだ。

 もうとっくに面会時間は終わっている。

 なので普通に入るわけにはいかなかった。

 さぁ、どうやって入るかだ。


 素直に正面突破は‥‥

 警備員に捕まるわ!

 下手したら警察沙汰になるかも。

 ‥‥却下だ。


 だったら窓からでも忍び込むか‥‥

 って、出来るか!

 最近の病院はいろんな場所に監視カメラが設置されているので不用意に近づけない。さらにSECO◯などが入っていたら安易に忍び込むのは不可能だ。

 これも却下だ。


 そうなると出来る事は一つだけだ。


 私は覚悟を決めると、夜間診察のインターホンを鳴らす。


 ボタンを押してから数分後に声が聞こえる。


「はい、どうされましたか?」


 インターホンからは若い女性の声が聞こえてくる。


 さぁ、ここからが腕の見せ所だ。


「すみません。

 何か喉に引っかかっているようで取れなくて困っています。」


 看護師さん、嘘をついてごめんなさい。

 私は心の中で看護師さんに謝るのであった。


「喉ですか?

 いつからですか?

 引っかかっている物に心当たりまりますか?」


 看護師さんから質問される。


「う〜ん、今日の夕食で魚を食べたので‥

 その骨かもしれません。」


 実際は夕食で魚は食べていない。

 嘘を重ねて心苦しく感じる。


「今日の夕食ですね。

 わかりました。

 何が引っかかっているのか確認しましょう。

 それでは、ロックを解除しますね。」


カチャ


 看護師さんが施錠された自動ドアの鍵を遠隔操作で解除してくれる。


ウィーン


 私が自動ドアの前に立つとドアが開かれる。


 私は病院に入ると、詰所に待機している警備員さん達に会釈をして中に進んでいくのであった。


*    *    *    *


 さて、計画通り病院に進入出来たのは良いが、このまま診察されるわけにはいかない。

 その後、インターホンで会話した看護師さんが出迎えてくれる。


「それでは、こちらにお越しください。」


 看護師さんは手順通り処置室へ私を案内しようとする。


 そこで、私は小芝居する。


「ゴホッ」


 まるでオッサンのような咳をわざとする。


「あっ、今の咳で取れたかも‥‥」


 自分でやっといてアレだが‥白々しく感じた。


「大丈夫ですか?」


 看護さんが心配してくれる。


 う゛

 優しい看護師さんを騙しているので心が痛かった。


「大丈夫です。

 それより骨、取れたみたいです。

 お忙しいのにお手を煩わせて、申し訳ございません。」


 私は深々と頭を下げる。


「謝る必要はないですよ。

 魚の骨、取れてよかったですね。」


 看護師さんと会話していると、突然インターホンが鳴り響く。

 きっと別の患者さんが訪ねてきたのだろう。


 看護師さんが受話器を取って、インターホンを鳴らした相手と会話を始める。


 ヨシ!

 かなりのチャンスだ。


「お忙しいと思うので、私は帰りますね。」


 病院の出口まで送られたらどうしようと思っていたので、正直助かった。


 私は電話で話す看護さんに頭を下げると、出入り口に向かう。


 もちろん帰るつもりはなかった。


 ゆっくり歩きながら他の看護師が居ないか確認しながら歩いていく。


 さぁ、病院への侵入は成功した。


 後は親友んの元に向かうだけ。


 私はエレベーターは使わずに、非常階段で6階を目指す。

 エレベーターを使わないのは監視カメラがあるからと、仮に誰かに遭遇した場合逃げられそうにないからだ。


「茜、待っててね。

 すぐ行くから。」


 私は自分に気合を入れながら階段を上がって行くのであった。

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