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◆48◆

 どん亀が山城智音の写真を、俺のスマホに送ってきた。こ、この画像は!


「裸ナノハ所持品検査ノ直後ダカラデス」


「眼を開けてるから意識はあるんだよな」


「適切ニ調整シタなの・ましん群ニヨリ、非常ニ従順ナ状態デス」


 これは絶対に鈴佳に見られるわけにはいかない。『秘密のフォルダ』にしまっておこう。


 それにしても、かなり美人で、いろいろ発達した身体の持ち主だ。優奈より背が高い。というより、どん亀のデータを見ると、ほとんど俺と同じくらいじゃないか。


「脚長いなぁ」


 胴長短足の俺は劣等感《コンプレックス》に胸をえぐられた。筋肉はついているが、腕と脚が長いのでゴツい女という風には見えない。スポーツ・ウーマンという感じだ。


「はいすくーるマデハばれーぼーるノ選手デシタガ、身長ガ伸ビナイノデ、アキラメテ武道ニ転向シタソウデス」


 どん亀の奴、随分と詳細にわたる尋問をおこなったようだ。


「ハイスクールって、帰国子女か?」


「ソウデス。帰国後ハみっしょん系ノ私立大学ヲ卒業シ、とらいでんとノ日本支社ニ就職シテイマス。調査部ニ入ッタノハ、合気道ノ有段者デアルコトト、大学時代山岳部ニモ所属シ、基礎体力ニ優レテイタタメデス」


「でも、もうアラサーだろう。優奈より若く見えるけどな。ちょっと歳を食ったグラビアアイドルみたいだし」


「調査部ニ採用サレタ理由ニハ、容姿モ含マレテイマス」


「あ、ハニートラップ要員ね」


「実際ニハ、腕力ヲ活用シタ機会ノ方ガ多カッタソウデス」


 ひょっとしてこいつ、たまにいる『肉体的暴力に訴えたがる女』なの? 美人なのに!


 いや、美人だからこそ、そのタイプだとしたら怖い女だ。しかしその種の女にはまる一部の男も存在するから、少なくない需要はあるのかもしれない。それ系のハニトラ要員か?


「それにしても、何で裸にしたんだ?」


「女ハばいくニ乗リ、服装ハ黒革ノれーしんぐ・すーつデ、ソノ下ハ下着ダケデシタ」


「不二子かよ!」


「ばいくハいたりあ製空冷二気筒ノしゃふとどらいぶデス」


「お前、俺をからかってるだろ」


「本当デス。デモ赤イまふらーハシテマセンデシタ」


 その女の趣味か? なら、ネック・マフラーくらいしておけ、オタ女なら。いや、ひょっとしてガチのバイカーで、コスプレじゃないの?


「ばいくヲ県道ノ脇ニ隠シ、徒歩デ家ニ接近シテ来マシタ」


「ふーん、相当体力があるんだな。元山岳部だっけ」


「近接格闘術モ得意ト言ッテイマス」


「リアル・ボンド・ガールなのか? トライデントは何でそんな奴を飼ってるんだ?」


 女の供述によると、トライデントの調査部は世界中で情報収集活動を行っていて、その中ではあえてイリーガルな行動をとるケースも多い。いや世界的な規模のこの業界では、不法な手段をとるのをためらっていては、競争に打ち勝てない。そういうレベルなのだと言う。


 ある程度予想はしていたが、これは気を引き締めて週明けの交渉に臨む必要がありそうだ。


 そんなことを考えている日曜日の朝である。あくまで俺はどん亀が送ってきたトライデントに関してのデータを検討中なのだ。


「ねえ、明日の晩のアクセはパールでいいの?」


 鼻歌を歌いながら今朝もご機嫌の鈴佳が話しかけてくる。


「そっちは君嶋もオーケーを出しているだろう」


「何かつまんないな。他にもアクセ買ってよ。ゴールドのブレスレットなんてどう?」


 指輪はダメ出ししてある。こいつ左手の薬指にはめかねないからな。それで今度は腕輪にいったか。


「まあ、その内な」


「その内ね、約束だよ」


 言質を取ったつもりだ。甘く見られてるな。どこかでガツンとやっておかないと駄目だ。うーん、どうしよう?


 こいつの勤労意欲をそぐことは本意ではない。ただ今のこいつを動かしているのは、食欲と物欲それに多分性欲だ。もっと意識を高め、美意識《センス》を磨かないと、今後の戦力にならない。


 幸い自分にレベルが足りないことは自覚しているようで、君嶋や彼の紹介したメイクやマナーの講師の指導には抵抗を示していない。更なるレベルアップのため、どんなプログラムを組めば良いか、どん亀に相談してみよう。



 プログラムと言えば、どん亀は新しいプロジェクトのため金星に飛んでいる。さすがのどん亀と言えども、金星への往復とそこでの作業のためには一日以上かかるそうだ。


「ソレ以上ノ速度ヲ出スト、周囲ヘノ影響ガ出テ、観測ノ対象トナリカネマセン」


 多分人類にはお前が望まない限り、お前を見つけることはできないと思うけど……。どん亀は妙なところに慎重だ。


 プロジェクトの内容は、金星の衛星軌道にナノ・マシン工場を設置することだった。空力学的デザインの原料採集ボットがそこから金星の大気圏内に降下し、高度五十キロメートル付近の大気を採取する。


 地球近傍に設置すると見つかる可能性があり、地球以外で材料の供給が得られる最も近い場所が金星なのだそうだ。太陽に近いことから、工場稼働のためのエネルギーも容易に得られる。


「惑星改造《てらふぉーみんぐ》ノぷろぐらむヲ一部手直シシテ使用シマス。今後ノ計画ノタメ大量ノ資材ノ供給ガ必要デス」


 計画とは無論『地球征服計画』である。


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