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大商人として

依頼の報酬金100万ゴールド、とんでもない大金を連続で受け取り

何だか気分が高鳴っていく。

リバーススキュラの高危険度に対して勝利したことで

俺達の評価もうなぎ登り、ドンドン上へ行く。


「貴族からの護衛の依頼が結構来ますね」

「護衛の依頼というか、勧誘でしょこれ」


ここまで評価が上がってくると、色々な所から声が掛る。

勧誘に近い物も多いし、報酬金額も凄まじい。

この勧誘を受ければ人生安泰、安全安心に余生を過せそうだな。


とは言え、多い物で1人1000万ゴールドの報酬。

俺が借金を返済するために必要な金額は1億ゴールド。

高価な依頼をこなしても、その10分の1しか稼げない。


それと確か1000万ゴールドはイリアさんの鞄程度の価値だ。

まぁ、何でも入る魔法の鞄とか程度じゃすまないけど。


「そういう依頼を受けるなら、私の養子になる方が絶対に安泰よ?

 もっと沢山お金を出してあげられるし、1億ゴールド位」

「け、桁が…」

「あら、もう一つ欲しいの? 卑しん坊ねぇ、なら10億ゴールドでどうだ!」

「そう言う意味じゃないですよ! と言うかどんだけお金あるんですか!」

「今の貯金が8000万ゴールドで、恐らく私の予想では3年後には3億ゴールドね」

「ど、どんな規模の取引を…」

「資金繰りって結構簡単だし、あ、株投資とか、そう言う感じのよ。

 どの店とかが伸びるかを予想するのは簡単だからね」


うん、圧倒的な観察眼を持つイリアさんだからこそ出来る芸当である。

この人が現代日本にいたら、日本経済スゲー潤いそう。


「どの企業にどれ位の投資を行なえば伸びるかも予想して投資してるわ」


そしてイリアさんのことだ、その予想は全て的中しているのだろう。

ヤバいよこの人、ハイスペック過ぎて恐いです。

チート級だよ、あの観察眼は…人を見る目も化け物みたいだしな。


「後はお店の経営ね、どの地域にどんな店を押せば受けるかも予想してるわ。

 こっちは、毎年2000万程度の売り上げね」


さらっと日本円で20億も稼いでいるとか恐すぎて笑えない。

やっぱりこの世界のお金って、結構インフレしてるんじゃねーの?

安い店はかなり安いが、高い店はクソ高いしな。


「本当はもっと牛耳りたいところだけど、流石に他の店もあるしね。

 無駄に深く広く根を張るって言うのは喜ばしくないわよね。


 畑の作物で例えると、1つだけ栄養を吸収しまる状態二なるからね。

 そうなると、畑を管理している農家さんは困るわ。

 他の作物が栄養を吸えないで成長出来ないんだから」


さらっとその気になればもっと稼げるけどと言ったな。

だが、その言葉にはどうしても説得力という物を感じる。

この人にはそれが出来るだけの技量も資金も人徳もあるからな。


「株取引に複数のお店の同時経営。

 で、たまに趣味で自分のお店を開いてる感じね。

 正直、全部趣味みたいな物だけど」

「金稼ぎを趣味とか1度は言ってみたい台詞ですね…」

「冒険者で例えれば、冒険を趣味と言ってるような物かしら?

 まぁ、冒険は面白いし、そっちは何ら不思議はない言葉だけどね」


だがまぁ、確かにこの人が長い間この街に居ないというのはでかいと言う事が分かった。

女王にも影響力を与え、その外では慈善活動を趣味で行なっている。

これだけの人が抜けてしまったら、最悪の場合、国の経済が回らない可能性だってある。


「だけど、そんなにやること多いはずなのに…イリアさんは基本家に居ますよね?」

「私は全体の基本的な営業方針を定めて、問題とかの書類を処理してる感じだしね。

 その気になれば、家だけでも十分完結できる仕事なのよ。

 たまに店の方に出向くけど、あまり意味は無いしね」


そんな事が出来るのは、イリアさんの人望と観察眼の賜物だろう。


「……何で最初、護衛に裏切られたのか不思議ですよ」

「あの時は適当だったから、あの1件から学習したけど」


彼女にとって不幸な経験だったはずの裏切られた経験。

しかし、イリアさんはその経験すら糧にして成長したと。

やはや、流石はイリアさんとしか言えないね。


「でも本当凄いよね、昔、何してたの?」

「ん? 私は昔から商人よ? 家が元々商家だったからね。

 まぁ、当時の我が家は没落寸前だったけど」

「そ、そうなんですか?」

「えぇ、かなりの負債を背負っててね、甘すぎたのが原因だけど。

 何せ稼いだお金の大半を寄付してたんだから」


た、確かにそれではどれだけ儲けても意味が無いな。


「……」


そして、この話をしようとしたイリアさんの表情は曇ってしまう。

もしかして、過去の出来事はイリアさんに取ってはトラウマ…なのか?

雰囲気から考えても…護衛に裏切られたときよりも深いトラウマ。


「…ねぇ」

「は、はい…」

「結構暗い話になるかも知れないけど…聞いてみる? 私の話」

「い、いえ、話すのが辛そうですし」

「いやいや、話したいから聞いてるのよ。

 話すつもりがないならこんな質問はしない。

 信頼した相手には話したいからね、私の過去を」

「……」


イリアさんの言葉に、この場にいた全員が息を呑む。

マリスとクロは平常通りだけどな。

恐らくマリスはこの雰囲気を読み取れていない。

クロも恐らくそうだろう。


「……私は聞いてみたい…です」


この重々しい空気の中、言葉を発したのはレベッカだった。


「わ、私も…です」


レベッカに釣られ、メリーも同じ様に言葉を発した。

イリアさんは目を少し瞑り、俺達の方を向く。

視線の先に居るのは俺とポーラさんだ。


「私も…です」


ポーラさんも提案を受ける。残りはお前だけだという風に

イリアさんがこっちを見る。


「…自分も聞いてみたいです、イリアさんの昔話。

 その中に成功の秘訣が隠れてるかも知れませんしね」


ちょっと重たい雰囲気の空気に耐えられなかった俺は

下手な冗談を良い、全体の場を和ませようとしてみた。

だ、大丈夫なのだろうか? 俺はこう言う冗談は得意ではない。


だけど、俺の返事を聞いたイリアさんは少しだけ吹き出し

最初と比べると、緩やかな表情へと変った。


「聞いても、そんなに良い話じゃ無いと思うけどね。

 まぁ、成功の秘訣はあるかも知れないし、ちゃんと聞いてね」

「は、はい!」


笑顔で返してくれた…せ、成功したという判断で良いのだろうか?

とにもかくにも空気を凍らせる結果にならなくて安心した。


「それじゃあ、お話ししましょう。ま、つまらない独話だけどね。

 マリスちゃんにも言ったけど、過去なんてどう足掻いても過去。

 誰かに告げたり、誰かに話したり、過去に思い焦がれたところで

 その過去が変るわけでは無いのだけど、スッキリすることは出来るしね。


 と言う訳で、これから先の私達の関係をより深い物にするために

 私は私の過去を話そうと思うわ。

 過去の話も、過去の出来事も、未来を作る素材にはなるからね」


そう告げた後、イリアさんは小さく咳払いをする。


「では告げましょう、話しましょう。一部しか知らない私の過去を

 では告げましょう、伝えましょう。私のどうでも良いくだらない過去を」


そう言った後、イリアさんはにやりと笑い

楽しそうに過去を語り始めた。


その過去は何というか寂しく、正直者は馬鹿を見ると言う言葉を

より身近に感じさせるだけのインパクトがあった。

あまりにも甘すぎる両親と、その両親の間に生まれた1人の少女。


慈悲深い思いの結果を知ってもなお

彼女が慈悲深いままなのは不思議でならない。

下手な人なら、容易に心は折れ、優しさも甘さも全て捨てても不思議ないのに。


「では語りましょう、私の昔話を。甘すぎた我が両親の末路を」


何とも寂しい昔話が始まった。

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