作戦
モンスター達に情報をバレないように動く。
何処に内通者がいるか分からない状態では非常に高難易度だ。
しかしながら…冷静に考えてみると、ある方法が浮かぶ。
「……うん」
「どしたの?」
とは言え、結構賭けの要素が強いというのはある。
そもそも、この事を相手側が知っているかも分からない。
知っているとすれば効果的ではあるんだがな。
「可能性が低いんで、何とも言えないんですけど
俺を囮にするのはどうでしょうか?」
「は?」
「イリアさんは分かってると思いますけど」
「いや、待ちなさいな。その情報を知ってるのは極一部。
確かに、知っていればあなたを狙うかも知れないけど」
「…何の話?」
この話を知っているのは俺達一部だけだからなぁ。
知っているなら、俺が囮になる事も可能なのに。
「うーん……セイナちゃん。どうする?」
「……伝えれば何か良い手が…でも、出来れば伝えたくは…」
「私を前に隠し事?」
「彼女、出来れば名誉欲しく無いみたいでね」
「はぁ? どう言う意味?」
「それを伝えるにはセイナちゃんの許可が要るのよね。どう?」
「……まぁ、俺のわがままよりも国全体の方が大事ですし…」
「じゃあ、伝えるわね」
「は、はい」
イリアさんは俺がネクロマンサーを撃破したであろう事と
吸血鬼撃破の話を女王様に告げた。
彼女は驚愕の表情を浮かべ、少しの間だ、俺の顔を見ていた。
その表情から、そんな事信じられないと思っていたのは明白だった。
こんな小娘が、危険度が高いネクロマンサーと吸血鬼を撃破した
なんて事を告げられても、信頼できないのは辺りまではある。
しかしながら、女王様は少し考えた後、納得したように1人頷く。
「イリアねーさんが言うなら間違いないわよね。
そして、彼女はそのイリアねーさんが信頼に足ると評価した人物。
実力が見た目と反していても、何ら不思議はないか」
「私が伝えたと言うだけで信頼するの? 私は商人よ?
嘘くらい言っても不思議ないと思うけどね」
「それなりに長くねーさんと付き合いあるし流石に分かるよ。
イリアねーさんは嘘は吐かない。嘘は不利益にしかならないから。
そう、私に教えてくれたじゃないの」
「あら、覚えてたのね。出来の良い教え子を持って先生は幸せよ」
本気でやり取りをする時に、イリアさんは嘘を言わないのか。
まぁ、実際あの新聞の時だって、イリアさんは嘘を吐いてるとは言えない。
自分が関与していると言うのは間違いないからな。
「でも、なんでそれを発表しなかったの?」
「妬まれるのがいやだったんです」
「妬む奴なんて居るの?」
「…案外、民衆を見ていないわね。ギルドも殆ど見てないのかしら?」
「う゛…そ、それはその…公務が忙しくて」
「民衆が大事なら、ちゃんと自分の目と耳で調べた方が良いと思うわ。
でも、一応、私が嘘偽り無く言葉だけで伝えるとすれば
ここのギルド、かなりギスギスしてるわよ?」
「そ、そうなの!? でも、書面じゃ問題無いって!」
「不利益をわざわざ報告すると? 面倒になるのに?
全員が全員、嘘偽り無く全てを告げるわけじゃ無いわよ?
大人ってのは、基本卑怯なの。前にも教えたと思うけどね。
子供な大人は子供よりも子供よ? 自分の不都合は言わないで
全部隠して嘘吐いて。そのくせ、自分の事は棚に上げて
他者にはしつこく文句を垂れるのが子供な大人。
大体、何かを動かしてる人間って言うのはそう言う傾向が強いわね。
実力が無いから嘘で隠すしかないのよ」
「それはつまり、自分には実力があるから嘘で隠す必要が無いと言ってるんですね?」
「その通り、流石ねセイナちゃん」
凄く自信満々だな。実際この人の実績は凄まじいけど。
「ま、大人も子供も大差ないわよ。まず指摘されれば言い訳から入るの。
次に子供は言及されれば認めて謝罪するけど
大人は謝罪しないで逃げるわ。あ、上の連中とかがね。
下に着いてる大人は謝罪するわよ? 何で謝罪してるか分からなくてもね」
「それはそれで問題ね…でもそうかぁ、私が知らない間にそんな事に…どうしよう」
「こればっかりはそうそう変えられないでしょうね、集団を変えるのは難しいから。
まぁ、個人を変えるよりは断然簡単かも知れないけどね」
個人はそうそう変らないけど、集団や団体は何かあれば変るからな。
ルールが変れば集団は大きく変る。表面上は。
根本は知らない、そこら辺は社会に出てない俺にはわかんないからな。
「だから出来れば情報を大っぴらにしたくなかったって事ね。
こんな小さな子がそんな戦果を残したなんて知られちゃったら
確実に目の敵にされるわ。彼女が所属したギルドは知らないけど」
「俺の村はド田舎なんで、俺達位しか所属居ないので大丈夫ですよ」
「そ、それはまた凄まじいわね…」
「後、両親も村の実力者と言うか、人気者だったんで、村の人達は俺達の事を
嫌ったりはして無いみたいです」
「あぁ、レベッカもメリーもポーラも別にあなた達2人の事は嫌ってなかったわね。
レベッカとメリーにはちょっとイザコザがあったみたいだけど問題無いみたいだし」
「ん? そのレベッカとかメリーとかポーラって誰?」
「私の護衛部隊? いや、候補かしらね。まだ護衛をして貰ったのは
セイナちゃん、マリスちゃん、レベッカの3人だけだし」
「ま、マリスちゃんってのは?」
「セイナちゃんの双子の妹。あまり似てないけどね。
性格も容姿も。でも、芯はそっくりで信頼に足る少女。
まだまだ実力は発展途上だけど、私の予想だとあの子は確実に化けるわ」
おぉ! イリアさんの太鼓判が押されていると言うなら間違いないな!
ふふ、マリスが大きく成長する姿が想像出来るぜ!
「あまり実力は無いのに何で化けると思うの? そこら辺は、私あまり」
「今はあまり大々的に出ては無いけど、芯がしっかりしてるからね。
とは言え、確実に姉に依存しているわけだから、成長するとすれば
姉が酷い目に遭った場合に成長する可能性が高いと思ってる」
「それって、姉が怪我すれば妹が成長すると言う事?」
「マリスが成長してくれるのであれば、俺はいくらズタボロになろうと!」
「…え? この子はもしかして、妹大好きなの?」
「えぇ、多分世界で1番好きだと思うわよ」
「勿論ですとも!」
「…何か、さっきと目の色が変ったわ…真性ね…」
……しまった! ラング様が若干引いてしまった!
女王様を若干引かせるとかヤバすぎる! 不味い! 何とか取り繕わねば!
しかしだ、下手な事を言えば余計にこじれる気がする!
「ふふ、面白いでしょ? 私、この2人の関係好きよ?
見てて楽しいのよね」
「そ、そうなの?」
「仲良きことは美しきかな、どんな形であれ
お互いが笑顔で過せるなら、それが最も価値があるのよ。
これ以上の価値ある物は無いでしょう? 楽しい毎日こそ至高の宝石よ」
「た、確かに仲が良いことは大事よね。お互いが楽しいならそれで良いのか…」
な、何とかイリアさんがフォローしてくれた! マジでありがとうございます!
くぅ! マリスの話題になると、どうしてもテンションが上がってしまうのだ!
自慢の妹だからこそ、ドンドン自慢したい! 凄く自慢したい!
「さて、話は戻るけど。それが理由で名誉はまだ要らないと言う事なの」
「あぁ、発表の話だったっけ…ごめんなさい、少し忘れてた。
でもなる程…なら、出来れば公にはしない方が良いのか。
しかし…内通者をあぶり出すには確かに丁度良い餌になりそうよね。
ネクロマンサーと吸血鬼を撃退した無名の冒険者。
人類を蹂躙したいモンスターからして見れば邪魔な存在だしね。
現状、最も邪魔なのは王都で過ごしている冒険者。
その中で、恐らく最も実力がある相手を潰したいと考えるのは間違いない。
危険視するとすれば、Sランクのバックワード。
そして、この事実を知ればセイナを潰したいと思う筈。
でも、囮作戦はかなり危険よね…」
「大丈夫ですよ、覚悟は出来てます」
「でも…」
今まで何度も命は賭けてきた。命は投げ捨てる物なのだ。
と言うか、俺の場合、別に死んでも蘇れるし。
ルアが居るし、死んでもケロッとしてるだろ。
(今変な気持ちが聞えた気がするんで訂正というか釘を刺しておきますけど
蘇生しませんよ?)
(な、何!?)
(ただのバトルで敗北ならまだしも
囮になって結果敗北で蘇生とか都合良すぎです)
(……なら、結構危険なのでは!?)
(はい、囮作戦をしたいなら、命賭けてください)
……まぁ、それでもするけど、しちゃうけどね!
もう言っちゃったしね! もう口に出しちゃったからね!
言ってしまった以上はやるしかないだろこん畜生!
「……本当に良いの?」
「も、勿論でふ!」
「……その、無理しなくても良いのよ? 噛んだし、声上ずってるし」
「だ、大丈夫ですよ! 任せてください!」
国の危機はマリスの危機! 命くらい賭けてやんよ!
「…じゃ、じゃあ、その…私が考えた作戦…やっても良い?」
「あら、作戦を考えたのね」
「うん。上手く行くかは分からないけどね」
「じゃあ、私はその間にモンスターの可能性がある人物を探してピックアップするわ」
「分かるの?」
「あくまで予想だけだけどね。あまり過信しないでね?」
「わ、分かったわ、イリアねーさん」
ふ、ふふふ、もうどうにでもなりやがれ!




