不似合いすぎる場所
「はい、着いたわよ。目的地」
「……」
目の前に映る巨大な城…俺はその城を眼前にし、冷や汗が止まらなかった。
馬鹿な…何故俺はここに居る? 何で? 情報収集するんじゃなかったっけ…
あ、焦りすぎて思考が…何で俺とイリアさんの2人だけなんだっけ?
れ、冷静に思い出せ…このあまりにもイレギュラーな状況に至った経緯を。
いやまって、無理無理、こんなのそんな冷静になれるはずも無い。
だって城だよ? 城…一般人が入れる様な場所じゃないよ?
何でそれが、今目の前にある訳? 落ち着け…クールになれ。
ひ、ひとまずは思いだそう…し、思考をまとめねば。
た、確か…確か行動を開始するのは、あの会議の後日と決めて。
「ふぅ、ごちそうさまでした」
やっぱり高級食材が多いから美味しい…しかし、この料理よりも美味しいと感じる
マリスの料理とは、凄まじいよね! やっぱりマリス最高! マリスは俺の嫁。
ふふふ、普段はトゲトゲしてる所も好きだぜ!
……何で自分のくだらない妄想が、ここまで具体的に出てくるのだろうか。
どんだけマリス好き何だよ俺、良くこんな状況で思い出せるな。
いや、大事なのはここじゃなくて、この後この後。
「それじゃあ、ご飯も食べたし情報収集に向うか」
「うん!」
「じゃあ、情報収集のメンバー分けは、アイル探索時と同じ分け方で」
「あ、待って。セイナちゃんは私と一緒ね」
「え?」
こう、イリアさんのいつがいつも通りの感じで、笑って話し掛けてきたんだっけ。
「分かりました…でも、イリアさんはお城に」
「えぇ、そうよ? だから、私と一緒に行くと言うことは、あなたも一緒に来るの」
「……は!?」
「そんな露骨に驚いて、一歩下がらないで。そんなに難しい事じゃないでしょ?」
「いや、え? 俺が一緒に行く必要性ってありますか!?」
「だって、内通者の話をする為には、実体験した人が居るからね。
だから、あなたも一緒に来て貰わないと」
「え!? こんな礼儀知らずのクソ餓鬼である俺が城に行って良いわけ無いでしょ!?
服装も、そんな王族貴族様と面会できるほどにしっかりしてないし!」
「大丈夫よ、ちゃんとドレスあるから」
「なんで!?」
「いやほら、養子にしたかったから用意させててね」
「誰に!?」
「シオに、迎え入れる準備は万端なの♪」
「そ、そんな無茶な!」
「まぁ、これは拒否権無いから、大事な部分だからね。シオ」
「うわぁ!」
そして、不意に姿を見せたシオさんに抱きかかえられて
更衣室に連れ込まれ、強制的にドレスを着せられたんだった!
そのまま、馬車にぶち込まれて、城の前に…で、今に至ると。
「しかし、似合うわねドレス。普段からは想像出来ないけど」
「う、うぅ…その……普段、男物を着てる奴に…こんなドレスを着せますか?」
「家ではキャミソールなんでしょ? なら大丈夫よ」
「それはマリスが着て欲しいと言うから仕方なく着てるだけで」
「まぁまぁ、マリスちゃんもその格好のあなたに見惚れてたでしょ?」
「何も言ってませんでしたよ?」
「ボーッとあなたの方を見て、頬を赤らめてたわよ? 気付いてない?」
「この格好にされたことがあまりにも衝撃的すぎて…見る余裕が…」
「ふふ、情報共有をした後に、マリスちゃんの為に仕立てたドレスを着せるわ。
ドレスは女の子の憧れだからね。ましてや、こんな豪勢なドレスは」
まるでウエディングドレスみたいに真っ白なドレスで
スカートには大きな花と花の下に板? が隠れて置いており
その板に1匹の蝶が止まっている絵が描かれている。
これはイリアさんのドレスにもある。
でもなぁ…この花と蝶、どっかで見た様な気がするんだよなぁ。
「うーん…それにしても、もう少し宝石をちりばめた方が良かったわね」
「いや、もうこれで十分過ぎるんで…」
「こう、耳に緑の…あ、待って。ワーウルフにイヤリングは難しいのかしら。
今度、職人にワーウルフ用のイヤリングを作らせましょう。
後はネックレスね。セイナちゃんのイメージからルビーにしたけど
ダイヤモンドの方が良かったかも知れないわね。
後、お化粧は…要らないか、元々可愛らしいお顔だものね。
小さい間に化粧をしたら、お肌が歳を取っちゃうって言うし。
でも、指輪は付けてたほうが良かったかも? 後は大きなダイヤのブローチ。
ティアラも悪くなかったかも知れないわね。
こう、ワーウルフの特徴を生かすコーデを考えないと。
尻尾が難しいわね…今はおへそが見えちゃってるし。
普段もおへそが見えてるからね、何か考えないと」
尻尾を出すための穴がないため、このドレスは上下で少し隙間がある。
その隙間から尻尾を出してる形になってるんだな。
だから、ヘソが見えてる。普段の服装も同じ様な状態だから
どうしてもヘソが見えてしまうのは仕方がないのだろう。
しかし、寒くなってきたらお腹が冷えてしまうぞ。
マリスが風邪を引いたら大変だし、この状態は何とかしたい。
マリスも基本ヘソが見えてるからな。ワーウルフの宿命なのだろうか。
「スカートから出せばどうかしら…あ、駄目ね、スカートめくれちゃう。
大体、背中辺りに映えてるんだし…服で隠す感じとか…でも、浮くわね」
「背中じゃないですけどね、映えてる場所」
「あぁ、そうね、お尻ちょっと上よね。尾骨辺りね」
「あぁ、だから尾骨って」
「ち、違うんじゃないかしら」
流石に冗談だけどね。でも、そこら辺だよな。
あと少し下だったら大変な事になってる。
しかし…今まで気にも留めていなかったが…アニメの獣尻尾が生えてるキャラ。
あの服、どうなってるんだろうか…今、凄く気になる。
下心とかよりも、純粋に気になってる状態だ。
いやだって…ヘソ出てないし、つまり服に何かしらの秘密があるんだ。
そこだけ穴開けてるんだろうか? だとすれば、履くときどう履いてるんだ?
普段はそんな事、気にしてたらアニメ楽しめねーよ、馬鹿とか思うけど
今、その身体になってる今回は、普通に気になってしまっている。
構造が分かれば絶対に便利だもの!
「イリア様、服装を考える物良いですが、ここは城の前ですよ?
そう言うのは、後でなされた方がよろしいのでは?」
「その通りね、家に帰って考えましょ。今は情報共有が先ね」
イリアさんはすぐに再び歩き始め、城門付近に移動する。
「ようこそ、イリア・シャルロッテ・ビルドレート様。
此度は城内へ何のご用でしょうか?」
「モニアドール様に伝えたい事があるの」
「承知いたしました」
「せ、先輩…今、モニアドール様は公務の最中では?」
「イリア・シャルロッテ・ビルドレート様がわざわざ足を運んで下さったのだ。
モニアドール様も、イリア様の訪問はいかなる場合でも取り次げとの事だ」
「いつもありがとね」
「しかし、イリア様。そのワーウルフの幼子は?」
「ど、どうも…よ、よろしくお願いします」
「可愛いでしょ?」
「それは否定しませんが…もしや、その幼子と共にモニアドール様と面会を?」
「そうよ。何か必要なら言って頂戴」
「……」
兵士は俺には言及しているが、シオさんが一緒である事には疑問は抱いていない。
普段、城に来るときはイリアさんはシオさんと一緒だと言う事だな。
そりゃそうか。シオさんはイリアさんの護衛だからな。
「少々お待ちを。確認してきます」
「あら、そう言うのは詳しくないのね」
「流石に、今までと違う形で来られては私も対処しかねますよ」
「ふふ、それもそうね。じゃ、お願い」
「では、失礼します」
兵士達が駆け足で城の奥へと走っていった。
城門…誰も警備居なくて良いのかよ、と思ったが
それだけ、イリアさんが信頼されているという証拠なのだろう。
しばらくすると、兵士達が戻ってきて
俺が一緒でも特に何の問題は無いとの事。
俺達は兵士に案内されて、城内へと入った。
い、イリアさんの家も相当だったが、流石は城内…ここもまた別世界だぜ。




