アイルの捜索
予想した箇所の付近までやって来た。
辺りは今までの場所と大差が無いが
ここら辺だけ人気が妙に少ない気がする。
他の場所は、少し見渡せば人が居たような場所だが
ここだけ、まるで別の街かと思うほどに静かだった。
僅かに歩く人も居るが、そう言う奴らは大体
まるで明日が月曜日、見たいな感じの面で歩いてる。
希望の色がないというか、何かやろうとしてる感じじゃないな。
彷徨っている、と言う表現が1番的確かもしれない。
「随分と陰湿な場所ですね…」
「この場所は街でも仕事がない浮浪者が集まっている場所です」
「国は結構裕福なのに放置してるのか?」
「元冒険者等も多いので、中々手が出せないんですよ。
とは言え、ここに汚い物を集めているから
他は問題無く治安を維持できてるのかもしれませんがね」
俺達が周りを見渡していると、何処からか怒鳴り声が聞えてきた。
「何の声だ?」
「喧嘩でしょうね、ここではよくありますよ。
兵士の巡回も殆どこない場所ですからね」
「何でですか?」
「兵士が巡回すれば、襲われるからですよ。
因みに女子が歩き回るのも危険な場所です」
「…その危険な場所に女子4人が歩き回ってるのか、それって」
「よう、姉ちゃん達」
まぁ、こう言う展開も十分あり得たって事なんだろうなぁ。
と言うか、こう言う展開が来るとしか考えられなかった。
そもそも、ここってエロゲーを元にした世界だし。
スラム街、女子4人って、フラグガンガン立ってるもん。
「こんな場所を子供連れて歩き回るのは危険だぜ?
ここら辺はロリコンも多いんだ、特にワーウルフが3人ってのもよ。
どうだ? 兄さん達も一緒に行ってやるぜ?」
「結構です」
「まぁ、そう言う」
「触れるな」
「うぉ!」
ナナさんに不審者が手を伸ばしたが、ナナさんが怒りを露わにしその手を払う。
その行動は男達の怒りを買ったようで、さっきまでと態度が変る。
「てめぇ! このアマ!」
「ふん、役にも立たぬ男共が、騒ぐな」
「ぐぁ!」
剣術しか取り柄がないなどと言っていたが、ナナさんは男達を見事な技で倒していく。
こりゃ強い。格闘術も出来るんだな。
「わぁ、格好いい!」
「いやぁ、ありゃ男達に勝ち目無いな。集団で掛っても勝てねぇよ」
流石はSランクの冒険者だよな。
当然、あれだけの実力を見せ付けられて男達も勝ち目がないのは予想する。
となると、俺が男達の仲間とかだったら、まず人質を取ろうとするよ。
あんなのと正面から戦って勝てる分けねーもん。
出来るだけ怪我もしたくないだろうし、人質を取ろうとするのは当然。
「だから、お前の判断は悪くない。むしろ正しい判断だよ? おっさん」
「な!」
「ま、相手が悪すぎるけどな!」
「ぐが!」
「わぁ!」
俺達の背後に回っていて、俺を捕まえようとしたおっさんを殴る。
まぁ、この人がこんな行動をするのは実に正しい判断と言える。
そりゃそうだ。あんな化け物と正面で戦えるかっての。
人質取って、動き封じて殴るのが最善策だよ。
「な、何だあの餓鬼! 大人1人吹っ飛ばしやがった!」
「どうだ、凄いだろ。案外見た目って役に立たないんだぜ?」
「く!」
「なる程、あれは確かに強い、それに頭もキレるようですしね」
「伊達に修羅場は潜ってないぜ。頭が悪くて吸血鬼を倒せるかっての」
「なん!」
「おっと、これは失言。聞かなかったことにしてくれ」
「吸血鬼だと!? あの餓鬼、何を馬鹿な事を!」
「そ、そもそも、餓鬼が吸血鬼の知識があるってのは意外だな」
「知るか! どうせ本で読んだだけだろ!」
それでも、まず最初の冗談で吸血鬼は出て来ないと思うけどね。
最初はもう少し強いのを持ってくるんじゃね?
あえて吸血鬼ってのはどうなんだろうか。
「ち、どっちにしてもこの女が強すぎる! さっさとずらかるぞ!」
「ふん、2度と来るな」
「追えば良いのに」
「尻尾を巻いて逃げる雑魚を追う気にはなれません」
「それで逃がして、赤の他人が襲われたらどうするんですか?」
「それは…冒険者をしていたときにも言われましたが。
やはり、逃げる奴を追うというのは…私にはちょっと」
なる程、こりゃあまり評価されないわけだ。
「と、とにかく探索を再開しましょう。
ここに長く留まるのは危険ですしね」
「そうですね、またああ言うチンピラに襲われても困りますし」
俺達は再び地図に記された場所の探索を開始した。
どうも普通に探した程度では見付からないようだ。
ひとまず、俺達は近くの店に入り、一服することにした。
「うーん…見付かりませんね」
「そうですね」
このお店のコーヒーを注文して、ひとまず会議だ。
しかし、出て来たのがホットコーヒーとは…
俺って熱い飲み物苦手なんだよね、出来れば飲みたくない。
飲むとしても、もう少し冷ましてから飲みたい。
「コーヒーって頼んだのは俺だが、ホットコーヒーとは」
「じゃあ、私と同じでオレンジジュースを頼んだら?」
「俺はオレンジジュースも駄目なんだよ…」
とりあえず冷めるまで待つしか無いかな。
「さて、では次は何処の探索をしましょうか」
「こことか?」
「でも、ここら辺はあまり」
「他と大差なくね?」
こんな風に色々と考えて居たせいなのか
俺を除いた全員がうとうととし始める。
「おいおい、アイルの命がかかってるのに何うとうとしてるんだよ。
ナナさんもしっかりしてくださいって」
「うぅ…しかし、何故か強烈な眠気が…」
「お、お姉ちゃん…な、何だか変なの…凄く…眠くって」
「う…うぅ…こんな筈は…」
「はぁ?」
う、うーん。確かに明らかにおかしい気がするな。
俺なら話に飽きて眠るかもしれないが
真面目なマリスが話の最中に寝るとも思えない。
当然、ナナさんとレベッカもそうだ。
ナナさんとの交流はあまり無いから分からないが
あそこまで真面目な人が真剣な話の最中に眠りそうになるか?
じゃあ…何でこんな事になっているのか。
俺以外の共通点…は……そう、そうだ!
俺は何も飲んでないんだ! コーヒーが冷めるまで何も飲んでない!
でも、3人は出された飲み物を飲んでいた!
更にここは治安が悪い地域の店!
「おい、どうするんだよ1人だけ飲んでねーぞ」
「知るかよ、餓鬼1人が起きてたからって何だってんだよ」
「う…うぅ…ま、まさか……」
「一服盛らせて貰ったぜ、お客さん。
いや、もうあんたらは商品だけどな」
「……まさか、この店って」
「あぁ、表面上は喫茶店だが、その裏じゃ奴隷を扱っててね。
あんたらは上物だぜ、餓鬼2人も筋によっちゃ需要もある。
特にワーウルフってのがポイント高いな」
「こんな餓鬼に欲情する奴の気は知れねぇぜ。
ま、俺はあそこでうとうとしてるワーウルフの姉ちゃんだな」
「こいつは姉ちゃんって歳じゃないぞ? 16程度だったと思う」
「いい歳じゃねーかよ」
「十分、ロリコンの範囲内だぞおっさん。年下に恋すんな」
「ふ、クソ餓鬼が随分と生意気言うな。
そう言う奴は調教して屈するまでの時間が長いから俺は好きだぜ?」
「てか、何だよ…あんたらは客だったのかよ」
「上物が入ったらしいから、それを見ようと思って待ってた。
まぁ、その上物の他に別の上物が入ってくれたのは嬉しいのぅ。
記念だし、お嬢ちゃんはワシが飼ってやるよ」
「そのかって、てのはどっちだ? 金を払う方か?
それとも動物を飼うとかか?」
「後者」
こりゃヤベーぜ、頭のネジが5、6本取れてるな。
「悪いけど、俺はペットじゃないんだ。
そりゃあ、ペットみたいに愛らしいかもしれないがペットじゃないぜ?
あんたらに尻尾を振ることもしない」
「なに、ペットは鳴けば良いのさ。それは出来てるから問題は無い」
「俺が騒いでいるのを、負け犬の遠吠えとかそんな風に思ってんなら
悪いがそれは大きな間違いだよおっさん共。
焦った奴が、冷静に皮肉聞かせたり、買うか飼うかなんて聞かないだろ?
例え犬っぽくても、俺は狼だぜ? クソ親父共!」
「なん!」
「怪我した後に騒ぐなよ?」
「うがぁ!」
俺を飼う等と騒いだおっさんの足を折った。
「な! この餓鬼!」
「間違って殺したらすまないな。
俺って化け物ばかりと戦ってたから
雑魚と戦う時の力加減ってよく分からなくてよ!」
「あぐ!」
さて、2人目撃破。俺はすぐにマリス達が眠っちまってる席に戻る。
そして、マリスに触ろうとした奴を思いっきり蹴飛ばした。
「俺の大事な妹に、そのきたねぇ手で触れようとすんじゃねーよ!
穢れたらどうするんだ気持ち悪い!」
「何だよこの餓鬼!」
「ほら、大事な食器だろ! 割れねぇように受け取れよ!」
「うが!」
「いだ!」
「あっつ!」
俺達の席に出されていた食器を全て連中に投げつける。
当然、食器は全て割れてしまった。
「もったいねぇな、ちゃんと拾っとけよ」
「く、クソ!」
「獰猛な狼相手に、ただのカスが人数揃えても無駄なんだよ。
猟犬でも連れてきな。そうじゃねぇと銃とか意味ねーから」
「がふ!」
俺が座っていたイスを、こちらに向けて銃を構えた店主に投げつけた。
店主はイスに直撃。照準が大きく上に逸れて天井に小さな穴が開く。
「さて、残り2人だな、しかしお姉さんまで奴隷に興味があったのは意外だよ」
「こ、この子供!」
「子供でも、虎は虎って感じ? 獰猛な獣に人間は勝てないんだよ」
「う…ぁ…」
こちらに攻撃をしてきた女の人を投げ飛ばし、残り1人も巻き込み倒す。
やれやれ、10人以上揃っててこのザマか。情けないな。
「ったく、猫舌である自分にここまで感謝したことはねーよ。
ほれ、マリス起きろ-」
「……」
まぁ、起きないよな。この程度で目覚めるなら
あの戦闘中に目を覚ますだろうし。
さて、問題はこの後どうするかだな。
ここにアイルが居る可能性が非常に高いとは言え
3人を放置なんて出来ない。
起きるまで待機としても、3人が起きるよりも早く他の連中が起きるかも?
まぁいいや。とりあえずこいつら全員を縛り上げておけば良いんだから。
「なぁ、ルア。縄って売ってる?」
「はい、どうぞ。10ゴールドです」
「1000円って高くない?」
「こんな物でしょ。はいどうぞ」
「ま、いいや。ありがとな」
ルアから買った縄でとりあえず全員を拘束した。
拘束方法が分からなかったからルアに教えて貰ったから何とか出来た。
よし、これで3人が起きるまで待機だな。
全く、こんな面倒な事になるとは思わなかったぜ。




