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悪意無き鋭利な言葉

「……これは、とんでもない」

「そんな驚かないでよ、私達サキュバスは

 相手の同意が無いと、手は出せないのよ?

 そうしないと、私達全体が路頭に迷うからね」


モンスターでありながら人間の社会に紛れ込んで生活してるわけだし

無理矢理襲ったりすると、サキュバス全体への風評被害に及び

全体の居場所が無くなってしまう可能性があるからな。

しかしだ、当然ながらその言葉では納得出来ないのだ。


「でも、さっき俺を無理矢理部屋に連れ込もうとしたのは」

「興奮しちゃって…小さい女の子なんて超久し振りに見たから…」

「ロリコンだ! このサキュバスを排除しろ!」

「待って待って! 誤解! 誤解よ誤解!

 お、お話しをしようとしただけなの!」

「そんなの信じられるかよ」

「信じて、お願い♡」


む、胸の谷間を強調して! く、あのきわどすぎる下着!

そして、あの巨大な胸が織りなす、恐ろしくギリギリのアングル!


「ぐ!」


だ、だが甘いな、少し前の修行が足りていなかった俺ならば

この攻撃でノックアウトだったかも知れない、だが、今の俺は違う!


「女相手にそんな色仕掛けが通用するか」

「ま、まぁそうよね、女の子相手にこれは無理があったわ…

 口調が男の子っぽかったから、もしかしたら見た目女の子でも

 本当はショタ系男の娘だと思ったけど…」

「おいこら! だから色仕掛けをしたのかよ!」

「私、ショタちゃんを食べちゃうのも夢なの♡、酒場には来ないからね」

「その夢は永遠にしまっておけ」


ふっふっふ、今の俺にはマリスがいるのだ!

そう! 今の俺はマリスラブのロリコンボーイ!

結構あれな響きだけど、やっぱりマリス可愛い!

俺はマリス一筋になるのだ! 愛しの我が妹!

ふふふ、ロリでケモミミの健気な妹キャラなど! 萌えるしか無いのだ!

この最強コンボの前では! 生半可な属性では太刀打ちできない!

巨乳お姉さんだろうと! サキュバスだろうと!

そんな半端な属性ではどう足掻いてもマリスは超えられない!


「お姉ちゃん、2階に面白そうな本が…あれ? 何これ」

「また可愛い女の子が来たわね~」

「マリスに手を出すなぁ! マリスに手を出したらあれだからな!

 ぶっ殺すからな!」

「何この子恐い!」

「お、お姉ちゃん、どうしたの?」

「いや、何でも無いんだ、気にしないでくれ、あ、本だっけ?

 後で行くから、先に待っててくれ」

「あ、うん、分かった…? で、でもお姉ちゃん」

「何だよ」

「あの人誰? あの下着の人…恥ずかしくないのかな? 人前で下着なんて…

 へ、変態って奴?」

「そう、変態」

「いやまって! へ、変態じゃ無いわよ! これは種族的な!」

「お姉ちゃんが変態って言うことは、へ、変態さんなんだね…」

「そうだ、だから近付くなよ?」

「うん」

「……」


あ、あのサキュバスが魂でも抜けたよな表情になった。


「……服、着てきます」

「あ、はい」


さ、サキュバスの心をあの短期間でへし折るとは、流石はマリスだ。

悪意の無い純粋な言葉というのは、穢れた人間の心を抉るんだなぁ。

これ、もしも俺がマリスに似たような事を言われたら抉れるのでは?


(お姉ちゃん、気持ち悪いよ、近付かないで)


い、イメージだけだというのに…こ、この破壊力…

し、心臓に大きな矢を突き刺され、グリグリと抉られるような、そんな強烈なぁ……

こ、こんな事を言われたら、俺はしばらく立ち直れないことだろう…

下手したら、一生心が折れるかも知れない…ちゃ、ちゃんと節度は守ろう…


「また凄い人が…あれ? セイナさん、どうしたんですか? 顔色が」

「な、何でも無い…ひ、ひとまずマリスに会いに行ってきます」

「あ、どうぞ…さっきのサキュバスはどうしますか?」

「後で適当に…一応、部屋にでも出しといて…」

「あ、はい」


く、ただ想像しただけなのに、何という強力なダメージだ。

ひ、ひとまずマリスが待つ2階へ移動して

どんな本を見せたいのかを聞こう。

下手な事を言わないよう、慎重に言葉を選ぶんだ。


「あ、お姉ちゃん」

「あぁ、うん、その、俺に見せたい本って?」

「あ、うん、この本なの」


さーて、どんな可愛らしい絵本なのだろうか。

とか、一瞬思ってたけど、今考えてみると

マリスだからなぁ、真面目なあの子が最初に探す本は


「これ、ネクロマンサーって項目なの」


うん、モンスターの事が書いてある参考書だった。

ネクロマンサーという単語が出て来たから気になったのだろう。

俺は確かネクロマンサーの事はルアから少し聞いた気がするがな。


「私、こう言う難しい字って読めなくて…だから、お姉ちゃんに読んで貰おうかなって」

「あぁ、分かったよ、じゃあ読むぞ。

 ネクロマンサー。死者を操ることが出来る。

 禁術に手を染めた魔女、元人間ではあるが、モンスターとなったと言われてる。

 現在のネクロマンサーはその初代の血統ではとの声もあるが、詳細は不明」

「ありがとう、やっぱりお姉ちゃんは頭良いなぁ」

「ふふ、姉をもっと褒め称えるがいい」

「お姉ちゃん最高! やっぱりお姉ちゃん天才!」

「はっはっは! よしよし、流石は我が妹だ!」


…なんて、コントをしている場合じゃ無かった。

一応、色々とネクロマンサーについて調べねばならないというのに。

十中八九ネクロマンサーの仕業だからな、あのアンデッド達は。


「よし、じゃあ色々と項目を読んでみるか」

「うん」


ネクロマンサーは死者を無条件で操ることが可能であると言われている。

しかし、操る状態は色々とあると言う事が分かっている。

死者は無条件に操り、知性の無いアンデッドとして蘇生できる。

このアンデッドは昼夜問わず動くことが可能であり、ネクロマンサーに操られ続けている。

その為、主であるネクロマンサーが絶命した場合、アンデッドは普段通りの

野蛮で無差別な攻撃を開始してしまうため、無闇にネクロマンサーは排除できない。

しかし、昼間にネクロマンサーを撃破した場合、アンデッドは日の光に焼かれ

再び土へと還る、その為、ネクロマンサーの撃破は昼間に行なう事が好ましい。

次は瀕死の生物をアンデッドへと変化させる方法である。

この時、アンデッドと化した生き物はネクロマンサーが死んでいたとしても

昼間に焼かれる事が無い、半アンデッド状態となる。

知識も残っており、ネクロマンサーに対して絶対的な忠誠を植え付けられる。

その為、この手段でアンデッドと化した者は非常に驚異的と言えよう。

アンデッド特有の単調な動きでは無く、複雑に生前と同じ様に素早く動ける為

発見次第最優先で撃破が望ましい、しかし、強敵である為油断は禁物である。

更に魔力量が低い生き物を直接操ることも出来るとされている。

とは言え、その場合でも半アンデッド状態になると言えるだろう。

瀕死に死体生き物を操れると言うのも、瀕死にすれば魔力が少なくなるから

と言うのがあると思われる。

次に吸血鬼などの出生既にアンデッドである場合のモンスターについて。

このモンスターをネクロマンサーは操作することが出来ないとされている。

その為、吸血鬼などの既にアンデッドとして生まれた者とは

ネクロマンサーは交渉などを行ない、手駒にしていると考えられる。


(細かく書かれすぎじゃ無いですかねぇ?)

(図鑑あるあるです、ゲームとかだと詳しい情報載ってたりしますし)

(ほぼ全部じゃん)

(いえ、ネクロマンサーに関する情報として、この情報の他に

 より重要な情報はありますよ)

(え? 何それ?)

(ネクロマンサーのアンデッド生産範囲の広さです。

 国1つ全部の範囲で操れる程に超広範囲で操れるんですよ。

 死者を無条件に操ることが出来るので驚異的です。

 住民を1箇所に集めても、その中の1人、老人等が

 そのタイミングで病死したとした場合、瞬時に操り大量殺戮が出来ます)


何それ恐い、防衛しようにも最悪内側から壊されるのか。

そんなのを相手にしないと駄目って…考えるだけでゾッとするなぁ。

意外と近いかも、と言うか、戦う事がほぼ確定してるこの場面だしなぁ。

主人公扱いって、実は結構…いや、かなりしんどいのでは?

主人公はチヤホヤされているイメージが大きいが

実は相当な激務なのでは?


(ま、攻略法を色々と考えてみてください、ま、考えたところで

 子供の考えを受入れてくれる大人がいるとは思えませんがね)

(そ、それもそうか…)


じ、実績とか無いもんな…なら、考えて何か方法を閃いた後

それをどうやって伝えるかも考えないと駄目なのか…こりゃ辛い。

王都到着まで結構時間があっても考えるのは苦労しそうだ。

到着後、どれだけで襲撃が来るかも分からないし…こりゃ大変だ。

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