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反動

……しんどい、体中が怠い。


「あー…怠い…力入らねぇ…」


クエストの報告をした後、家で待機している間に1時間が経過した。

どうもその時間が過ぎると、体中から力が一気に抜けるような感覚に陥った後

ベットから1歩も動きたくなくなるほどに気力が削がれた。

眠いんだけど、眠るのも何だか面倒に感じる…


(まぁ、これがリミットブレイクのデメリット、反動ですね)

(あー…?)

(いやぁ、購入時に説明するつもりが忘れてましたよ、まぁこうなります。

 リミットブレイクを使用し、1時間が経過すると体中から力と気力が抜けます。

 この状態でも動くことは出来ますが、動きにキレは無いでしょうね。

 まぁ、この状態は5時間程度で回復しますが、結構な反動でしょう?)

「そうだな…あー…畜生、怠い」


うぅ…これは確かにあまり使えない…1日に1度だけってのも分かる。

こんなの本当にしんどい、身体が重い…はぅ…怠い、何もしたくない。


「お姉ちゃん、だ、大丈夫?」

「んぁ…あぁ…んー…あー…どうかな…」

「お姉ちゃん、本当にどうしちゃったの? 普段よりもやる気が無い感じが」

「うっしゃい…はぅ…面倒だぁ、会話するのも怠い…」

「えっと、ご飯を作ろうか?」

「いや…ご飯も良い、何もしたくない」

「ほ、本当、どうしちゃったの? 普段はもう少し」

「うぁぅ…説明するのも怠い…ルア~」

「はいはい、分かりましたよ」


あ、ルアが出て来てくれた…面倒見が良いなぁ…


「あ! あの時の! ど、どうもこんにちは、あ、姉がいつもお世話になっています!」

「おやおや、礼儀正しいですね、マスターとは大違いです」

「……はぁうぁ」

「おほん、えっとですね、今、マスターは私から新しいスキルである

 リミットブレイクという物を購入しました」

「そうなんだ…」

「先のワイルドハント戦で異常な攻撃力でワイルドハントを狩りましたが

 あの時、マスターはリミットブレイクを使用したのです」

「そう言えば大声で叫んでたような…

 あ、あれがお姉ちゃんが買ったって言う強化スキルだったんだ」

「えぇ、リミットブレイクは宣言することで発動できるスキルです。

 まぁ、能力を向上するスキルと言う事ですよ、しかしその効果は1時間。

 反動としてはこのように全身から気力と力が抜け、無気力状態になります。

 動こうと思えば動けますがね、命の危機に瀕してる場合などでは動けますが

 動きのキレが格段と下がります、1日に1度しか使えないという

 デメリットもあるため、多用できるスキルではありませんが

 1時間という長期間能力を向上できるのはかなり大きいでしょう」


実際…1時間は…嬉しいけど…はぅぅ。


「そのデメリットでお姉ちゃんは」

「はい、限り無く無気力となっています、何もしたくない状態ですね。

 会話も食事もお風呂も散歩も家事も戦いも何もかもやる気が生じていません。

 この状態が5時間続きます、なのでお姉さんがあなたの事を嫌ってる

 と言う訳ではないのでご安心を」

「よ、よかった…何も出来なかったからお姉ちゃんに嫌われたのかと」

「そんな理由で嫌う訳もありませんでしょう? 自信を持ってください

 ただまぁ、食事は取らせた方が良いかと、多少強引にでも

 口の中に流し込む形で、無理矢理強引に強制的に容赦なく手加減無く」

「え? い、嫌がってるお姉ちゃんに無理矢理はちょっと…」

「食べさせないと栄養失調で死にます」

「えぇ!? い、急いで作ってくる!」


マリスが凄まじい速度で寝室から飛び出していった。


「まぁ、嘘なんですけどね」

「お前…よ、よくもマリスを…」

「ああ言う純粋な子はからかいたくなる物ですよ。

 まぁ、からかってるのはあの子だけで無く同時にあなたもですが」

「…え?」

「あの子は私の冗談を真に受けました、それはつまりそう言う事です」

「……止めてきてくれる?」

「嫌です、と言うか、その指示で動くのなら私はあんな事は言ってませんよ?」

「うぅ…」

「嫌ならあなたが直接言えば良いのです」

「ち、畜生…身体が怠いというのに…」


うぅ、重い、身体が重い…ベットから起き上がるのが億劫だ。

と言うか、何で俺は生きているのだろう。

もういっその事このまま死んでしまえば良いのに。

あぁ、しんどい…体中が怠い、動きたくない、超疲れて動きたくない。

足が痛いと言うか、足に何か重りが付いてる気分だ。

いや、足なのか? 全身じゃ無いのか? もう全部重たい。

と言うか、なんで俺はこんな事をしているのだろう。

借金返済とか良いからもう一生眠っていたい。

いや、眠るのも何だか怠い…あぁ、やりたくない何もしたくない。


「はふぅ…うぅ…」


と言うか、何もしないってどう言うことなのだろう。

呼吸を止めれば良いのか? でも、それは呼吸を止めると言うことをしているのでは?

じゃあ何、呼吸をそのまますれば良いの? でもそれって結局呼吸してるし。

眠る時ってどうなの? 眠ることをしてるのか? てか寝るときのまぶたを閉じるのって

あれ眼球休めてるの? まぶたの裏を見てるだけじゃ無いの?

そもそも寝るって何? 脳を休ませるって何? てか寝てても夢見るんだし

結局脳って起きてるんだよね? 呼吸してるし心臓を動かしてるんだし

寝返りもうつし、結局休んでないじゃん、バリバリ働いてるじゃん。

と言うか、身体ってどうすれば休まるの? 何してても動きっぱなしじゃん。

意味分からない、何もしないってどう言うことなの?

何もしないとか出来ないんじゃない? いや待て、何もしないと言う事を

しようとしている地点で何かしようとしているのでは無いのか?

どことなく雑念を捨て心を無にするという行為も

結局無の境地を追い求めてるわけだし雑念捨てきれてないよね。

いや待て、それは関係ないはずだ、今は何が何をしない事なのかを考えねば。

いやまって、何がって地点で何かしてるのでは?

そう、何もしないのって無理だよね? 無理だよね?

いや待て、死ねば何もしてないになるのでは?

でも、それをする地点で何かしてるから何もしていないにならないか。


「いや、そんな訳の分からない妄想をダラダラと垂れ流さないでください

 怠いというなら頭を働かせるな」

「えー…なぁルア、何もしないって何だと思う?」

「何もしないと言うのは、意図的に何もしないと言うことです。

 無意識に動いているのは何もしていないでは無く当たり前です。

 つまり、心臓が動くのも呼吸をするのも何かをして居るではなく

 何かを身体が勝手にしているだけなので、あなたが何かをしてる訳ではありません。

 逆に当たり前を止める行為は何かをしているという扱いになるでしょう。

 何もしていないと言うのは当たり前をただ当たり前として放置することです」

「いやでも、結局身体がそうしてるなら、自分がしてるのと同じで」

「いえ、何もしてません、あなたがそれを止めようとしても

 それはあなたの意思で止まることが無いと言う事は

 実質、自分であって自分で無い第三者がしているのに等しいのです。

 つまりあなたは何もしていない」

「じゃあ、何が何もしないなんだよ」

「ベットで意思を持たずグータラしてたらどうです?」

「グータラすると言うことをしてるじゃん」

「意思を持って無い地点で何かをすることは出来ませんよ?

 受入れれば良い、当たり前を無意味に無価値に何もしないで

 行動しないで、意思を持たずに、ただ淡々と同じ日々を何もしないで過ごせば良い。

 当たり前の様な毎日を、どうしようも無い毎日を、つまらない毎日を

 生きてる実感も、死んでるような感覚も無く、ゾンビのように人形のように

 周りに操られたまま、ただただ淡々と過ごせば良い、言われた事だけをして

 当たり前の様に当然の様に何も考えないでどうでも良いと思い過ごせば良いのですよ

 そうすれば、あなたは何もしていない、ただ第三者に操られるだけの傀儡になれます。

 実を言うと、何かをする方が難しくて面倒です、何もしてないのが1番楽です。

 周囲に操られて意思を持たないままに過ごすのが1番楽です。

 意思だけを殺された、哲学的ゾンビになることが最も楽です」

「長いことをダラダラ言ってるのはそっちじゃん…」

「ま、無気力なのが能力の反動とは言え言い過ぎましたね。

 まぁ実際、それが1番楽ですよ、意思を持たないゾンビ

 哲学的ゾンビが恐らく最も楽な存在でしょう。

 ま、そうなると生きてる必要性すらありませんがね。

 意思が無い人間に生きる価値はあるのか? いや違う、生きる意味はあるのか。

 とは言え、そんな人は居ないでしょう。

 何だかんだで全員、生きる行為に何処か喜びを抱く物です。

 そうしないとやってられませんからね、どうでも良い世界で生きるのは」


うわ、超面倒な事を言ってる、理解できないと言うか、理解しようとするのが面倒。

もうなんか色々と面倒くさい。


「とまぁ、面倒なほどに長いお説教みたいになりましたが、時間切れですね」

「…え?」

「お姉ちゃん! 作って来たよ! 私のお料理!」

「え? あ、本当に作って、いや、別に」

「食べて!」

「む、むぐぐぐ!」

「ほ、ほら! ちゃんと食べないと死んじゃうよ!」

「む、ぐぐ! むぐぐぅうう!」

「お姉ちゃんに位無くなって欲しくないんだから!」

「むぐぐぐぅうぅうぅ!」


……あぁ、何か薄れていく意識の中、少なくともマリスが居る限り

俺はきっと…何もしないなんて事は出来ないだろうなと思った。

こんな可愛い妹が居る幸せ者な俺が何もしないなんて出来ない。

きっと、どんな時でも…俺はマリスを守る為に頑張るんだろうなと思った。

……何かの為に頑張る…って言うのも…やっぱり、つまらない世界の中じゃ重要だろ?

その対象が可愛い妹なら、俺の一生は退屈しない、格好いいままで居られる…かな。

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