ピンクキャット達との生活
…拘束、と言うより、連れ去られてから3日は経過した。
その間に、別に何か拷問を受けただとか
性的な嫌がらせを受けたなどの事は無かった。
目の前で無防備な状態になっても、決して手は出されては居ない。
これらの状況から考えても、彼女達は悪意があるわけではないのは分かる。
子供達にご飯を毎日作ってくれるし、世話もしてくれてる。
一緒に風呂に入る子供達も居るが、まぁ、俺は1人で入ってた。
流石にね、周りは大人の女の人ばかりだ、その大人の女の人と
お風呂だとか、間違いなく俺の臨界点がぶっとぶ。
ピンクキャットの山賊達も、お姉ちゃんだからなのね
と言う感じで、流してくれているから問題は無い。
こう過ごしていくと、本当にこの人達が悪党では無いと分かる。
恐らく山賊として、何か村の物を奪ったりはしていない。
自分達で狩りをしたり、食料を作ったりして食事はまかなってる。
彼女達が山賊というレッテルを貼られているのは、子供を攫っているからだ。
その子供達は虐待を受けていたり、両親が既に死んでいたりする子供達ばかり。
そのどちらでも無い子供は、こいつらの話を真に受けるとすれば帰してるそうだしな。
どうやって判断するかは恐らく、子供がパパだとかママだとか言い泣いたときだろう。
その時に、子供に痣などが無ければ、両親は健在で、なおかつ悪人でも無いと判断し
子供達を危険承知で帰してる…本当、悪党には思えない。
(悪党ではありませんからね)
(ほぅ、あの心も読めたのか…)
(いえ、表情から予想したまでです)
心を読まれたわけでは無く、ただ表情を読まれただけか。
そんなに表情に出ていたとはな…はぁ、ポーカーフェイスってのは難しい。
「あ、セナちゃん、怪我治ったんだね」
「うん、何とか」
「それじゃあ、遊ぼうよ、皆でさ」
「わ、分かったよ」
ひとまず、毎日の様に俺が寝てる部屋に来ている女の子。
リンだったかな、その子に誘われ、仕方なく遊び場に出ることにした。
「えっとね、この柵より向こうは駄目なんだって、危ないみたいでさ」
まぁ、周りは森だからな、道を知らない子供が出たら確実に迷うだろう。
それに、子供が脱走すると、最悪ピンクキャットのアジトがバレてしまう。
そう言う意味でも、子供達をこの柵から出すわけにはいかないのだろう。
多分、1番の要員は森が危ないからなんだろうけど。
「それで…どんな遊びをしてるんだ?」
「えっとね、戦いごっこが主かも」
「何か、殺伐としてるなぁ」
「後、お母さん達がしてる気持ちいい遊びも少しはやってたんだけど
お母さん達にね、それは子供には早いのって言われて禁止されてるの」
わぉ、そう言えばレズだったな、目撃されてんのかよ、結構不用心だな。
いやいや、子供しか居ないから、室内では不用心なのかも知れん。
「リンはその遊び、したの?」
「えっと、してないんだ、お母さん達が駄目だって言うからちゃんと守らないと。
でも、どんな遊びかは知ってるよ、下の部分を舐め舐めするの」
「うん、良いから、解説は良いから…大体分かってるから、とりあえずだよ
その遊びは駄目だ」
「分かってるよ、お母さん達に駄目だって言われたから。
みんな言う事を聞いて、今は戦いごっこが流行ってるの」
「そっちの方は禁止されてないのか?」
「うん、お母さん達もその遊びは大丈夫だって言ってる。
怪我をしちゃうかも知れないけど、大事な事だからって。
お母さん達もたまに一緒に遊んでくれるの、強すぎて誰も勝てないけどね」
まぁ、ピンクキャットは少数だというのにギルドが拘束出来ないほどに
優秀な盗賊達って感じだし、更には大人だ、当たり前だろう。
だが問題は、何故その遊びを公認しているのか…だが、想像は出来た。
恐らく、自分達がいつか捕まるという覚悟をしているのだろう。
その時、子供達は解放されるが、元の家に戻っても
虐待されていた子供は虐待されることになる。
両親が居ない子供は、自分達で働かないといけなくなる。
だが、力があれば、その両方、どっちでも何とかなるからな。
両親の虐待の方は抵抗できれば誰かに気付いて貰えるかも知れない。
両親が居ない子供達の場合は強ければ、少しでも生存率が上がるからだ。
もしもの場合を考え、子供達の未来を少しでも救いたい。
そう考え、自然に出て来た答えがこの子供達を強くすると言う選択。
戦う事で生きてきたピンクキャットのメンバーが行き着く答えとしては
至極真っ当で、当然、この選択になるしか無いと言える。
不器用な母親達、もっと他の可能性を考えれば良いのに
それが出来ない、戦いに身を置いてきた不器用な母親達。
「と言う訳で! セナちゃんもやろうよ、戦いごっこ!」
「良いけど…ハッキリ言うけど、俺は強いぞ」
「ふっふっふ、私だって超強いんだから、勝負だ!」
とは言え、子供相手に本気を出すわけにもいかないしな。
手加減して戦おう、それが良い。
「よし、行くよ!」
「うん、来い!」
「うりゃ!」
最初は普通に殴ってきた、とりあえずその攻撃はさらっと避けて。
「せい!」
「っと!」
よ、避けた瞬間に彼女は俺の腹に向ってもう1発の拳を飛ばしてくる。
注意が最初の拳に向ってる間に、腹を狙うというテクニック!
俺はギリギリで、と言うか、身体が無意識に反応し、その拳を受け止める。
「えへへ、本当だ強いかも!」
「……お、おぅ」
その会話の後、彼女は後方に下がり、間合いを取った。
ジリジリと間合いを維持しながら、ゆっくりと立ち位置を変えていく。
と言うより、あの子が横から近付こうとしているせいで
こっちが距離を取っている、と言うのが正しい。
お互いに踏み込めない…くぅ、何これマジ油断ならねぇ。
あ、相手は子供だというのに…なる程、これだけ強けりゃ
「そこだ!」
「ここ!」
俺とリンは同時にスタートをして、一気に距離を詰める。
最初のリンの攻撃を右で防ぎ、左の攻撃を辛うじて身を逸らし
その瞬間に膝でリンの腹部を打つ。
「あぶ!」
だけど、リンも足を上げ、その一撃を受け止めるが
一応、格闘(特大)の一撃、彼女はバランスを崩し転けた。
「つ、強いね本当!」
彼女は倒れる物の、すぐに体勢を立て直し、再び立ち上がった。
このやり取りや戦いで大体理解できた、この子強い、マジ強い。
俺があまり格闘術が得意じゃないからなのかも知れないけど、相当強いのが分かる。
「私、ここだとお母さん達には負けるけど、他の子には負けてないんだよ」
「リンと戦いごっこしてる子、だれ?」
「知らない…でも、リンちゃんと戦えてるって凄い!」
「私、1番長いの、お母さん達に最初に拾われて5年くらい鍛えて貰ったの
確か、最初は3歳の時でね、お母さんから逃げてたらお母さん達に出会って。
そこから、5年間、一緒に過ごしてね、色々と教えて貰ってたの。
だから、凄く強いんだ、でも、セナちゃんも凄く強いね!
ここに来たばっかりなのに!」
「そ、それは嬉しいな、ありがとう」
くぅ、子供相手にこんなに苦戦するとは…き、鍛えないと駄目なのかな。
やっぱり、格闘術を学んでない俺じゃ、結構不味いのかも知れない。
ここまで戦えてるのは格闘(特大)の恩恵や野生の勘的な
そんな物が主な要員になってる…特殊なスキルがあるか知らないけど
それでも5年間鍛えて貰ってる彼女と、特別強力なスキルがあるけど
鍛えてない俺とでは、かなりの差が…鍛えていかないと、この先不味い気がする。
「それじゃあ、私も本気を出すよ、覚悟してね」
彼女が構えた、右腕を前に突き出し、左腕の拳を右腕の関節辺りに向け
足を前に出した構え…どんな攻撃が来るのか、大体分かる。
「そこ!」
「う、くぅ!」
リンは一瞬の間に俺との間合いを詰め、強力な正拳突きを放った。
その攻撃に辛うじて反応し、その拳を受け止める。
防いだはずなのに、かなり腕が痛い…
「おぉ! 凄いね! 私、これでも格闘(大)だったかな。
そんなのがあるのに、私の一撃を耐えるなんて!」
「そ、そうか、通りで凄く強いと…最初から?」
「うん! 最初は中だったんだけど、鍛えてる間に大になったの」
「そ、そうか…」
格闘(大)スキルその物は俺の方が上でも互角以上に彼女の方が上。
これ、鍛えないと才能の無駄遣いになりそうだな…
「…セナちゃん」
「え?」
俺達の戦いを見ていたピンクキャットの1人が俺に話し掛けてきた。
ニッコリと、嬉しそうに笑っている。
「良い筋ね、リンちゃんとここまで戦えるなんて」
「あ、あはは…でも、多分このままだと負けるかなって…」
「そうでしょうね、あまり鍛えてないでしょ」
「うぇ、ま、まぁその…確かに1度も鍛えてないけど…」
「お母さん達が鍛えてあげるわ、強くならないとね」
「そ、そうかな…強くなくても」
「強くならないと不幸になるだけよ、さ、頑張って強くなりましょう」
「良かったね、セナちゃん! お母さんに気に入って貰えたみたい!」
「き、気に入って貰ったら…どうなるの?」
「毎日遊んでくれるんだよ! お母さん達と毎日遊べるのは凄いんだから!」
「良いなぁ…私もお母さんに毎日遊んで欲しいよ」
「それならリンちゃんと少しは戦えるようにならないと!
リンちゃんと少し戦いごっこで遊べたらお母さん達とも遊べるんだから」
「り、リンちゃん凄く強いし…でも、頑張ろう!」
「無理に強くなろうとしなくても良いのよ? 強いことは大事だけど
それよりも大事なのは楽しむことなの、ご飯とか、そう言う何でも無いことを。
私達と毎日遊べるようになっても、ご飯とかは変らないんだから焦らなくても良いわ」
「でも、お母さん達といつも遊びたいから頑張る!」
「ふふ、無理はしないでね? 怪我をしたらお母さん悲しいから」
「うん!」
…特別扱いするわけでは無いのか、いや、特別扱いはするけど
それはあくまで戦いを教えると言う部分だけであって
その部分以外は特別扱いはしないと、部屋も同等で食事も同等。
基本、上下関係がある組織というのは、上位層は美味しい物や良い部屋で
下層は不味い飯とか、相部屋とか、そんな感じが多いけど。
あくまでピンクキャットは子供達に上下関係を与えず
平等に接している、能力の優劣で扱いを決めていないと言う事か。
一部の才能ある子供には戦いを教えるみたいだけど…それは何でだろう。
分からないけど…もしかしたら、その子の未来に可能性を見ているのかも…?
まぁ何にしても、俺からして見れば願ったり叶ったりだ。
実力を付けないといけないと、そう確信したからな。




