目覚めたら
…結局、意識を保てずに眠ってしまった。
そして目を覚ました場所…拘束されての監禁ならば
当然、普通は牢獄とかの中で、今まで掴まった子供達と一緒に
監禁されているという状況が至極真っ当な状況と言えよう。
しかしながら、俺が目覚めたのはふわふわとやわらかいベットの上だった。
「…ん?」
状況はあまり理解できていないけど、監禁されている
と言う訳ではないのはすぐに分かった。
「…あ」
熊から受けた怪我も治療されていて、包帯で保護されていた。
状況はさっぱり分からないが、意識を失う前の会話を思い出す。
あの会話から考えて、想定できるのは…ピンクキャット
あいつらはレズと言われてはいるが、子供は対象では無いかも知れない。
「あら、おはよう、起きたのね」
「…こ、これはどう言う…山賊って聞いたのに」
「あぁ、私達の事を知ってるのね、あ、この刺繍でバレちゃったのかしら。
それなりに有名だしね、ピンクキャット。
子供を攫っているのだし、子供が知ってても不思議は無いか。
あなたが教えられているであろうイメージと、実際は違うのよ、すぐに分かると」
「お母さんお母さん、この子が新しい子?」
「えぇ、そうよ、名前は…聞いてないけど、どんなお名前?」
「え? 何でそんな事を話さないと…」
「教えてよ」
「…せ、セイナ…セイナ・ドライ」
「セナちゃんね! よろしく!」
セナって…セイナだけど、イを短縮する必要はあるのか?
セナって…まぁいいや、子供は大体そんな感じだ。
だがしかし、異常なのは攫われているであろう子供が何故こんなにも元気そうで
山賊の1人をお母さんと呼んでいるのかという点だ。
(ピンクキャットはそこまで危険性の高い山賊では無いのですよ)
(む、ルア、何処にいるんだよ)
(あなたの服の中です)
(何でそんな所に…普段は飛び回ってるのに)
(流石に私が蝶の状態とは言え、あなたの周りにいては
明らかに不自然でしょ? 普段は私の存在を周知している
村にいるので飛び回ってますが、村から出れば隠れます)
確かに蝶が周りを飛んでいるというのは不自然だしな。
(さて、今はあなたの山頂に居るのですよ)
(俺の山頂って何だよ)
(服の中の山頂なんて1箇所でしょ?)
(…わざわざ何処にいるか解説するな)
(まぁしかし、私蝶なので蜜を吸おうかと)
(馬鹿止めろ!)
(冗談です、からかいたかっただけですよ
実際は谷間にいます、まぁ、谷間なんて出来てませんがね)
(こんな身体で谷間があったら不自然だろうが)
(いえしかし、ちょっとした谷間なら出来ているのですよ。
これは将来巨乳になりますね、私が保証しましょう)
(お前がこの身体を作ったんだろ?)
(いえ、あなたを女にして、耳と尻尾を付けただけなので
この姿は言わば、あなたがもし女の子に生まれていれば
こんな容姿だったという感じなのですよ。
その姿を幼い状態にし、耳と尻尾を付けたのがあなたの今の身体です)
(何!? 俺がもし女に生まれていれば、こんな超絶美女だったと!?)
(そうなりますね、どうです? 女に生まれたかったと思いましたか?)
(……いや、案外そうでも無い、やっぱり見る方が良いし)
(ですか、まぁとりあえず話を戻しましょう。
ピンクキャットは基本レズですが、子供には手を出しません。
なので、このまま待機しておけば問題は無いのですよ)
(そ、そうか)
でも、それはそれで問題がある、相手がどうしようも無いクズなら
仕留めるときに躊躇い等感じないが、そこまで悪くない奴らだと
どうしても躊躇ってしまう。
純粋な悪は居ない場合が多いが、やはり純粋悪の方がやりやすいのは確かだ。
正義の執行において、純粋な悪を執行するのは容易でも
純粋では無い悪であれば、執行に躊躇う、それが正義の味方だろう。
「それにしても、あなたも散々ね、あのベアーに襲われるなんて」
「あの熊?」
「そう、結構危険なのよあいつ、1人じゃ勝ち目は無かったでしょう。
でも、運は良かったわ、私達が偶然通りかかって。
正確には尾行してたんだけどね」
「び、尾行って…」
「あなたはギルドの依頼を受けたんでしょう?」
「え!?」
「何の討伐かは知らないけど、子供が2人で遠出の理由はそれ位しか無い。
両親に無理矢理? それとも、両親が…」
「…両親が居ないから」
「…やっぱりね」
ギルドの人間だと言うのはバレていたと言う事か。
だが、自分達がターゲットだと言う事は想定していないと。
恐らく、先にあの村に着いていた2人が自分達を狙っていて
俺達はこの周辺に出るという、モンスターを退治しに来たと
そう考えていると言う事だろう。
「でも、安心して…もう寂しい思いはさせないから
私達があなた達をお母さんみたいにお世話してあげる」
「…ここにいる子供達は、全員?」
「えぇ、両親から虐待されたり、無理矢理労働させられたり
両親が死んでいたり…そう言う子達を集めてるの」
「どうやって? 情報を集めて?」
「大体が想定、予想ね、身なりを考えてね」
「それで両親が虐待とかをしてなかったら…どうするんだ?」
「返すわ」
それはかなり危険な気もするけど、攫う度に眠らせているのか。
「…じゃあ、何でそんな事を」
「知らなくて良い事よ、それよりもはい、料理よ」
…コーンスープか、暖かそうな物を。
とりあえずいただこうかな、悪意は無さそうだし。
「ん…あち!」
「あら、まだ熱かったかしら、もしかして猫舌?」
「そ、そう…かも」
うへぇ、あまり自覚は無かったけど結構な猫舌なんだな。
しかし、犬なのに猫舌というのもまた妙な感じだな。
「もう少し冷ますわね」
「ど、どうも」
うーん、調子狂うな…攫われたであろう子供達も
辛い思いをしているわけでも無さそうだし。
無理矢理引き剥がすというのも、それはそれで問題があるかも知れん。
彼女達は子供達を保護しているだけだ。
手段は褒められた物ではないが、行動自体は悪いことでは無い。
そんなピンクキャットと子供達を引き剥がすというのは
子供達に再び辛い思いをさせてしまうのと同じじゃ無いのか?
それを俺は強行できるのか? いや、出来ない…
俺には出来ないだろう…さて、どうするか。
何も考えないで崩壊させるなんて出来る訳がない。
「ねぇ、セナちゃん」
「ん?」
「遊ぼ?」
「駄目よ、リンちゃん、セナちゃんは怪我をしてるんだから」
「あ、そうか、だから包帯を巻いてるんだ、ごめんね、怪我が治ったら遊ぼうね」
「う、うん」
こ、子供相手に遊ぶって…何か難しいな。
「はい、それじゃあ、しっかり眠ってね、怪我が治ったら遊んでね」
「遊ぶって…んー」
とりあえず、今日1日はそのまま眠ることにした。
恐らく現状維持でも俺は助かるだろう。
そして、ピンクキャットも壊滅することになるだろう。
時間の問題だ、マリス、ケミー、レベッカがいつかこの場を発見するはずだ。
1番可能性が高い手段が、マリスを囮にして捕獲しに来たピンクキャットを捕獲。
そのまま場所を吐かせて一気に壊滅に追い込むと言う感じだろう。
恐らく時間はあまり掛らない、マリスが焦って事を急がす可能性もあるしな。
「…うーん」
色々と考えて、何とか事態を丸く収める方法を探そう。
中々に苦労しそうだ…丸く収める方法。
マリス達を納得させピンクキャットを解体し、子供達も幸福にする。
両方やらないといけ無いってのは姉の辛いところだな。
覚悟は良いか、俺は出来てる…ふふ、良いね!
(まぁ、漫画の名言を言いたいのは分かるのですが
心の中で言わないでください、後何より、今はそんな状態じゃありません)
まぁ、考えるしか無いかな…はぁ、苦労するな、これは。




