リルドラ達の動き
チップとレンの電話網はしばらく続いた。
事態が動いたのはあの事件から数日後だった。
負傷を負った生存した冒険者達はまだ動けないが
どうやら、すぐにでも第2討伐隊を編成して向わせるらしい。
今度は20体を想定した大部隊。結構な規模の掃討クエストになるそうだ。
今回の掃討クエストには俺達の参加も要請されている。
1番適切な位置にいて、何だかんだ実力のあるSランク冒険者だからな。
前回は、俺達が出るまでも無い規模だと想定していたから参加は無かったらしいが
流石に15を越えるリルドラ相手だから参加して貰わないとキツいと判断したそう。
いやぁ、頼られているのは良いけど危ない目には遭いたくないね。
「負傷が軽かった偵察冒険者に事態を見て貰っては居るけど不安ね」
「そうですね」
第2討伐隊がやってくるまでそれなりに時間があるからな。
その間、何が起こるかも分からないから対策として偵察。
何も起こらないことを願うばかりだ。
「第2討伐隊が編成されるまでの時間は分からないし
しばらくの間は待機でお願い。何かあったら連絡するから」
「分かりました」
ひとまず、しばらくの間は待機という形に再度なった。
その間、俺達は別のクエストを受けることは許されなかった。
そりゃそうだ、今回の掃討クエストは優先度が高いからな。
これだけの数、放置をすると言うのは危険である為
ギルドは確実に仕留めたいという状態だろう。
確かに短い期間で脅威になることは無いだろうが
数が増えてしまうとあまりにも厄介すぎるからな。
先の事を考えれば、確実に仕留めるべきだと思う。
だから優先順位は非常に高い。
その為、別の依頼で俺達が負傷とかされたら困るから依頼はしばらく無し。
暇な時間が続くが、危ない目に遭うよりはマシだろうよ。
「…はぁ、この状態だと家に居ても気が抜けないなぁ~」
「……お姉ちゃん、ボーッとしてるせいで涎出てるよ、眠いの?」
「あ、あぶあぶ、サンキュー」
「…気が抜けないとか言ってるのに、凄く腑抜けてるじゃん」
「いやほら、やっぱり常に緊張ってしんどいから」
あー、暇な時間は良いぞ。でも…やることがないから怠いぞ。
何もやることがない暇な時間って何かしんどいよなぁ。
マリスと交流するのもありだけど、今、マリスはかなり緊張してる。
こんな状態でじゃれ合う事は出来ないからな、マリスに怒られてしまう。
そもそも、全員が今俺達の家で待機なんだしそうそう何か出来ない。
ベットも増やして、全員寝泊まり出来る環境を整えたは良いが
リビングが狭く感じてしまうぜ。
「暇だし、作戦会議とかしない?」
「作戦って言ってもねぇ、リルドラがどんな状態でいるか分からないのよ?
かなり沢山居るらしいから、セオリーの戦い方をしても意味は無さそうだし」
「うーん…」
リルドラは危険度B~Aクラスのモンスターだ。
俺達に会う前には既にAランクだったメリー達にはまぁまぁなじみ深いだろう。
「なぁメリー、お前達はAランクだったわけだし、リルドラと馴染み深いのか?」
「え? あ、はい。何度かクエストで…」
「じゃあ、今回の俺達への指揮はそっちに任せたいんだけど」
「え!? いえ、私達なんか!」
「いやだって、俺達はリルドラの話を聞いたことはあるが戦ったこと無いからな。
だから今回の指揮はメリーに頼みたいんだけども」
「いえ、私は皆の指揮はちょっと…」
「じゃあ、基本的な指示は俺が出すけど、指示の優先度はメリーにしよう。
俺の指示とメリーの指示が同時に出た場合、メリーの指示を優先する感じで」
「じ、自信が…」
「大丈夫だって、今まで私達に指示を出してくれてたのはあなたなんだから」
「ん、大丈夫」
「うぅ……ちょっと不安なんだけど…」
「大事な仲間が信頼してくれてるなら問題ねーよ。
本当に駄目な奴は誰からもサポート無いから」
「うぅ……大丈夫かしら」
普段は強気でも、意外とこう言う場面だと弱気になるんだな。
ま、俺の事を尊敬しているとか言ってたしその影響かな。
でも大丈夫だろう。仲間のサポートもあるんだし問題は無い。
「さて、そんじゃまぁ指揮系統の話はこれまでで
次はリルドラの特性とか、そう言うのを聞こう。
アリスさんから多少概要は聞いているけど細かい事は知らないし」
「そうですね、じゃあ私達が知ってる情報をお話しします」
メリー達はリルドラの特性について話を開始した。
「まずリルドラはその強固な鱗が脅威となります。
異常な程の硬度であり、そう易々と貫くことは出来ません。
しかし、腹部や可動部分等にはその強固な鱗は張れていません。
生半可な装備ではリルドラの鱗を貫くことは出来ませんが
そこを狙えばどんな装備でも貫通は可能です」
そこは聞いていたけど、関節部分も弱いと言う事か。
立ち回るとすれば上手く腹部に入る必要があると。
で、恐らくだけどリルドラは2足歩行の翼の無いトカゲだと予想する。
腹部に鱗が無い、可動部が弱いという所を考えれば
この見た目が無難であると言う予想だ。
2足歩行で腹を前に出すようなドラゴンが居るとして
そんなドラゴンが腹部の鱗が柔らかいなんて弱点さらけ出してる状態だ。
だが、2足歩行で体勢が前になっているドラゴンであれば多少は納得出来る。
腹部への攻撃は足下に入らないと届くことが無い訳だからな。
動きが速い大型のトカゲの足下に入るというのは中々に苦労するだろう。
腹部が弱点と言う事はつまり、腹部に攻撃が当りにくい体勢で生きていると言うこと。
それなら、前屈みで2足歩行で動くドラゴンというのが無難だろうよ。
「足下に入らないと遠距離装備はダメージを与える事が難しいのよ。
鱗と鱗のつなぎ目を狙えばダメージは与えられるかも知れないけどキツいし」
「接近装備なら鱗をぶち抜いて攻撃出来そうだな。俺達の装備であれば」
そう、俺達の装備はメリー達が言うには地下探索で手に入るレベルらしい。
そんな上質な装備だとすれば、鱗を貫くことも可能だと予想できる。
そんな装備だし、大群が居るかもと言う場面で戦いを挑んでも良かったかも知れないが
動きが速い化け物が20体も居ると考えれば、相当厳しかったと言えるだろう。
「私達が知ってるのはこれ位、あ、魔法も効果がある」
「防御できないと。じゃあ、後はアリスさん達からも話を聞いてみるとしようか」
「そうですね」
とは言え、アリスさんに話を聞いても大きな情報は出て来なかった。
いや、1つだけ出て来た。リルドラは力の強い相手を狙う傾向にあると。
それなら、俺が優先的に狙われるだけだしマイナス効果では無い。
前衛が狙われるのは当然だし、必要なことなんだからな。
その後は、ちょっと資料を集めたりして時間を過ごし
第2討伐隊が編成されるまでの時間、待機することになった。
そして数日後、第2討伐隊が編成されて出発したという情報がギルドに届く。
だが、その報告からしばらく時間が経過して、新しい報告がギルドからでは無く
偵察に出ていた負傷していない斥候から届いた。
その報告というのが、この村の近くにリルドラの群れが接近しているという話だった。
「……はぁ、こんな事になろうとは」
「現存戦力で迎撃するしか無いと。討伐隊が到着するまでどれ位?」
「あと2日はかかると言ってたわ」
「リルドラが村に到着すると思われる時間は?」
「あと1日」
「……もう1日待ってくれないかな、リルドラの群れ」
「無理でしょうね」
「……仕方ない、動ける冒険者は村人の避難を優先して!
でも、セイナちゃん達は…迎撃態勢を整えて」
「分かってますよ」
俺達は装備を整え、リルドラが来るであろう地点へ移動、迎撃の準備を始めた。
ひとまず役にはたたないであろうトラップをアリスさんの指示に従い設置。
残り時間は1日だが、最大のトラップは俺達だからな。
ある程度トラップを設置した後に、俺達は休む事になった。
万全の態勢で迎撃しないと俺達でも流石に不味いからな。
「討伐隊による刺激が悪い方向へ向ったと言う事よね」
「逃げてくれる可能性もあったはずなのにこっちに来るとは」
「仕留めきれなかったのが問題だったんでしょう。半端に5体仕留めてしまったことも。
大隊で挑んで来た獲物を迎撃したから勢いに乗って潰そうという魂胆かも」
「モンスターのくせに賢いですね」
「モンスターは意外と狡猾だからね。…はぁ、ごめんなさい。
何かあれば、足手まといになっても戦いに参加する。
何だか……この場所は嫌な思い出が多いわ」
「そうなんですか?」
「……無茶、しないでね…ご両親みたいに」
そうか、俺達の両親は村を守る為に死んだんだっけ。
今とかなり近い状態で戦って、そして命を落とした。
その子供である俺達2人が同じ様な状態に居ると言う訳か。
「だけど、俺達にはレベッカ達も居ます。勝てますよ」
「…そうね、Sランクですもの、大丈夫よね。
何かあったら、絶対に援護をするから」
「はい」
そのまま時間は経ち、日が沈み、何時か知らないが、まぁ深夜だろう。
リルドラの群れが姿を見せる。
ひゅー、デカいね。ま、リバーススキュラと比べれば小さいがな。
数は多いし、油断はしないでおこう。
「討伐隊の先遣隊が先駆けで移動を始めたらしいわ。到着まで1時間、粘って!」
「1時間は短いようで長い…けどやるしかないか!」
「うぅ、15体よりも多いよ…」
「30は居るんじゃね? 話と違うけど…何とかするしか無いだろう」
「魔力は温存して立ち回る」
「それで良い」
いやぁ、何だか群れと戦うパターンが多いね、運が悪いがやるしかないか。




