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探索最終日

とは言え、その後に別に何か大きな問題が起こることは無いまま9日目。

そろそろ帰宅しないと不味い状態と言えるだろうな。

こう言う場合は、大体最終日とか最終日直前に何かしらの問題が起こるはず。


特に主人公一行が探索とかして、そのまま無事に済むはずが無いのだ。

いやほら、1度目以降は特にね。イベントと言うか

ストーリーで探索だったら、絶対に最後の最後か初日で問題が起こる。


それ以降の探索では別に大きな問題は起こらないというのが流れだが

ストーリー的なイベントでの新しい探索とか絶対にイベントあるし。


そう、一度大きなイベントがね。超強いモンスターとかと遭遇して

全滅の危機に瀕したときに救助が来て、英雄クラスと仲良くなるのだ。

それから稽古を付けてもらって、実力を上げていくのがセオリーと言える。


「…でも」


何も起きない。何かちょっと強そうなモンスターが出て来ても敵じゃねーし。


(もうね、私の中のストーリーはぐちゃぐちゃです、完全崩壊です)

(なんで?)

(いや、私のイメージだとこの段階だと、まだ主人公一行って

 ランクCとかなんですよ。その状態でBクラスに当って全滅の危機に瀕する

 と言うのが私の想定なんですけど……何で最序盤でBランク相当倒してるンです!?

 何でもう既にSSランク倒してるんです!? 訳が分からない!)

(ふはは、女神も恐れる程のスーパープレイなのだな!)

(く、セイナさんの成長性とか、仲間の成長性があまりにも高過ぎる…

 これはあれですよ! 最序盤で負けイベントを無理矢理突破する的な!

 ゲームだったら勝ったはずなのに負けた扱いになる奴ですよそれ!)

(ゲームが元とは言え、これはリアルだからな。

 ましてやアクションゲームであれば十分あり得る!)

(その成長に私が手を貸しているとは言え、戦闘に慣れるのが早すぎる…

 何で1ヶ月格闘訓練をして貰っただけでそこまで伸びるのですか?)

(俺、記憶力は良いからさ)

(知ってます)


なる程なる程、ちょっと不運がこじれすぎてルアの中にあるストーリーは完全崩壊か。

くくく、いやぁ、何か異世界転生物って感じで良いなぁ!

女神の想定を越えるというのは実に素晴らしいのだ!


(異世界転生のくせにボロボロですけどね)

(それは言うな。そこまで強烈なチートをくれてないお前が悪い。

 と言うかもっと凄いチートスキルくれれば良かったのに。

 見ただけで相手を即死させるスキルとか超便利!)

(私、主人公一強はあまり好きじゃ無いんです)

(アクションだと主人公一強が普通じゃん。周りは雑魚で

 その気になれば世界を崩壊させるレベルの化け物来ても

 主人公ソロ出撃で無傷撃破とかザラじゃん。

 でもなんか周りも評価されてるオチ。何もしてないのに)

(それは仕方ないんですよ、プレイヤースキルに差があるのだから)

(でも、映画でも主人公単体で悪の組織崩壊させたりするし

 主人公最強はどの時代でも求められているのですよ。

 だから俺にも主人公最強のスキルをください)

(格闘(特大)で十分でしょ?)

(それだけだと、もう足らないんだよなぁ)


てか、正直このパーティーはSランクの中では比較的弱いのでは?

だって、特大持ちが俺しか居ないし…マリスとかすぐに特大になりそうだけど。

正直、もうすでに特大になってても違和感ないけど。


(とにかく私のストーリーを返してください。エロイベント無いですし)

(確かにエロイベントは魅力的だが、それは客観的に見るからであって

 エロい目に遭ってる方は散々なんだから絶対に嫌だね)

(何処かで負けてくださいよ)

(嫌だね、てか既に1回負けてるし。まぁ、気分の良い敗北だったがな!)

(く、あの人の性格を結構根はいい人にしてしまったのは失敗でしたね。

 まぁ、私が決めた訳では無いんですけど)


もし酷い性格だったらどうなっていただろうと嫌な想像をしてみる。


「……」

「ん?」


俺が心の中でルアとトークをしていると、何かに気が付いたレベッカが

俺達に足を止めるように手で合図をした。

その合図を見た俺達はその場に停止、レベッカは忍び足で何かに近付く。

レベッカの手元にあったのは大きな足跡だった。

動物の足跡では無い。言うなればドラゴンとかそう言うRPGのモンスターが残しそうな

そんな馬鹿みたいに大きな足跡だった。


「この足跡は確か…リルドラ」

「メリー、知ってるの?」

「一応…危険なモンスターらしいから足跡は把握しておこうかなって。

 足跡を把握していれば、自分から危険な方へ行くことが無くなるからね」


リルドラ、確か前にアリスさんが言っていたっけ。

複数の犠牲を出した物の辛うじて撃破した翼の無いドラゴン。

デカい図体で強固な鱗、なのに動きが速い面倒な奴。

腹を狙えば良いらしいが、中々に怠そうだな。


「この足跡は複数ある…危険かな」

「ここの何処かにリルドラの巣でもあるのか?

 単体でも中々に苦労したらしいが、この数はヤバいだろ」


足跡の数から5匹は確定と言った所かな。

ヤバいな、流石に5匹同時とか正気の沙汰じゃ無いぞ。


「ここは足跡から離れる方を優先するべきかな」

「そうね、流石にこの数は無理があるわ」

「う、うん…危ないのは困るからね…」

「いえ、掃討するべきだと私は思います」

「あ? 妖精何言ってるんだよ」

「チップです」

「ほぅ、名前を教えてくれたか。ありがたいね。でも質問の答えはまだだな。

 どう言うことなんだ? 掃討するべきだってのは」

「ここから先を開拓するとなれば、この道は間違いなく街道になる。

 そんな街道の近くにリルドラの巣があるなんて危険すぎる」

「知らないね、先の事は。俺達だけでリルドラとやらの巣を襲うのは俺達が危険すぎる。

 大事なのは未来の事じゃ無くて今なんだよ、俺達は俺達の命が大事なの」

「そんな考えで冒険者が務まると?」

「知らないね、だが少なくとも今は務まってる。

 命を張る場所は考えてるんだ。今は張る場面じゃ無い。

 そもそも俺達は既にSランクになってしまっているんだ。

 俺達がやられるというのはギルドにも大きな損失となる。

 負けた場合を考えれば、ここは引くのが的確だろう」

「いえ、すぐにでも撃破に走らねば数が増えます。すぐに排除するべきです」


この妖精…まさかこの場でめっちゃわがままを言ってくるとは思わなかった。

確かにこいつが言っていることにも一理はあるんだ。

このまま放置では数が増えるだろう。しかし、この場で戦うのは危険すぎる。

既に村からはかなり離れているんだ、このままここで戦えば救助の可能性は0だ。

俺達は捕まって助からないなんてオチはいやだからな。


「お前の言うことは確かに一理ある。だが、それよりも俺は自分達の命が大事だ。

 負けた場合、この情報を伝えることも出来ないしな」

「安心してください、私が伝えます。それが私の役目ですから」

「そうかい、じゃあ文句を言うな。捕まるという危険性が無い奴が

 捕まる危険性がある奴らの行動にどうこう言う権利は無い。

 同じ土俵じゃ無いくせに、外野からほざくな。

 安全地帯に居る奴が喚くな、何しないのにどうこう言うな」

「援護はしますよ」

「負けたらお前も一緒に捕まるというなら何か言っても良いけどな。

 ま、お前が何を言おうと判断は決ってる。このパーティーのリーダーは俺だ。

 俺は安全策をとる。全員の命背負ってるんだ、気安く博打を打てるかよ」

「この臆病者」

「何とでも言いな、臆病者でもチキンでも何と言おうと別に文句は言わねぇよ。

 それはお前が感じた事なんだろうし、俺がどうのこうの言えることじゃないし

 そもそもお前にどんな風に思われようとも俺には関係ない」

「……」


ひとまず安全策を取るべきだ。

今回はここまでにして一旦撤退をするとしようかな。


「よし、一旦戻るぞ」

「分かったけど…お姉ちゃん、い、良いの?」

「何が?」

「あの…チップちゃんと喧嘩しちゃって」

「意見交換だろあれは、喧嘩じゃねーよ」

「そ、そうなのかな?」

「そうだよ」


ひとまず俺達はチップの帰還魔法で戻ることにした。

かなり渋っていたが、しつこく言ったら大人しく折れてくれた。

そして、チップをアリスさんに返した後、俺達の家でちょっとした話が。


「くぅ、何よあの妖精! セイナさんにあんな風に偉そうに!」

「お、落ち着きなさいよメリー!」

「あれが落ち着いていられる!? あいつセイナさんをチキン呼ばわりよ!

 何処がチキンよ! 正しい判断じゃないのあれ! 全くふざけてるわ!」

「別に貶されたとは思って無いからそう怒るなよ。

 後、あいつは臆病者と言っただけでチキンとは言ってない。そっちは俺の例え」

「う゛! セイナさんは思ってないかもしれませんけど、私はあいつの態度

 セイナさんを貶しているという風に捉えたんですよ!」


あ、間違えた所はスルーした、いや別に深く追及はしないけどな。


「うん、確かに私もあのチップちゃんの態度はどうかと思う…」

「くぅ! もうあんな妖精とか無しで探索しましょうよ!」

「いや、あいつはあいつでほら、ギルドに協力してる立場として言ってただけだし

 先の事を考えた場合の事を言っただけでもあるんだ。

 そう怒るなって、マリスにも言ったけどあれはただの意見交換だっての。

 お互いの意見がぶつかって、熱くなった結果ああなっただけなんだよ」

「でも…あぁもう! 何でセイナさんは表情1つ変えてないのか不思議ですよ!」

「そりゃなぁ、別にあんな風に言われたところで怒る部分は無いしな。

 臆病な方が色々と安全なんだから、案外褒め言葉だったりするんじゃね?」

「お姉ちゃんを臆病とは言わないよ…臆病なのは私で」

「ははは! マリスよ! 自分を貶すのも無駄な行動だぜ?

 一緒に戦おうとしてくれてるんだ、お前は臆病じゃねーよ。

 何、敵を前にして仲間を放って逃げるわけじゃ無いんだから大丈夫だ。

 恐くてもその場に踏みとどまれる。それだけでお前は十分勇敢だよ」

「…ありがとう」


でもまぁ、今回の件でチップがどうなるのか…ちょっと不安ではあるな。

大丈夫なのか? これから探索をしようとなると多分あいつが来るだろう。

なのに孤立とかしちまったら…うーん、何とかフォローして行くか。

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