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大事な道具

パーティーで相談した結果、俺に200万ゴールド

各メンバーに20万ゴールドの金が渡ることになった。

俺の所持額がおかしいのは、購買スキルによる物が大きい。

購買スキルというか、正確にはルアの能力なんだけどね。


その後はひとまず解散した後、後日、俺の家に集まることになった。

家は広いし、今はイリアさんも村人の説得のために開けてるからな。


「じゃあ、ひとまずこれで装備やスキルを整えるか」

「それが良いと思います」


と言う訳で、俺はいつも通りルアを呼び出してみた。


「らっしゃいらっしゃい! 良い物揃ってるよ!」

「……ノリノリだな」

「お黙りください、はい何を買いますか?」


お黙りくださいって…たまに素が出てるのが危なっかしいぜ。


「お勧めってある?」

「そうですね、これとかどうですか?」


そう言ってルアが掲示したのは1つ200万ゴールドもする鞄だった。


「…鞄に200万って」

「何でも入る鞄ですよ、普通に買えば1000万はくだらない超凄い鞄です」


あれ? 1000万もする鞄って何処かで聞いたような気がするな。


「ま、まさかその鞄って…イリアさんが持ってる鞄じゃ!?」

「その通り、何でも入る凄い鞄です。魔法の鞄」

「え!? 1000万って聞かされてたのに200万!?」

「私から買うことで特別価格なのです。

 これから色々な場所に行くであろう皆さんにお勧めしますよ。

 確かに私が居れば食べ物などはサバイバルしている間でも問題無く揃います。


 しかし、その場で手に入った材料などを保管する事は出来ない。

 ですがこの鞄があれば、いざと言う時の保険としても大活躍。

 もしもマスターが攫われた場合の食事も問題無い。

 

 手に入れた材料も保管できるから、探索クエストもドンドン先に進める。

 手持ちが一杯になったからとわざわざ戻る必要もありません。

 探索クエストは素材も大きなポイントになりますからね」

「こ、これは…欲しいけど…他のスキルや武器とどっちを優先すべきだ…

 どうする? この鞄…」

「えっと…私は欲しいなと…」

「色々入るのは便利だと思う。もしもの場合は動けなくなった仲間を入れたり」

「入るの!?」

「小さな子なら入ると思いますよ」

「セイナをぶち込めるね」

「ぶち込まないで!」


中がどうなっているか分からないからちょっと恐いしな。

てかそもそも入るのか? 入るだけの大きさなのか?

さっぱり分からない、と言うか鞄に人を突っ込むとかヤバいだろ。


マスコミにバレないようにアタッシュケースに成人女性を入れて

家に運んでいたという芸能人の逸話は聞いたことあるけど

鞄だぜ? アタッシュケースは口が大きいから良いけど鞄だぜ?


「…ま、まぁ確かに沢山の物を所持できるのは嬉しいし…買っておくか」

「毎度あり、はいどうぞ」


俺の手元に例の鞄が出て来た…これが魔法の鞄か。

見た目は普通の鞄だな、イリアさんの鞄もそうだけど。


「ではその鞄の所持はマスター以外の方が持つ事をお勧めします」

「そうだな…誰が持つ? 後衛が無難だと思うけど」

「後衛で1番助かりそうな人物…レベッカね」

「え? 私? どうして?」

「はん、あなたは昔から逃げ足が速いからね、隠れるのも上手いし

 あなたみたいな臆病者が持ってた方が良いって言う事よ!

 私は感情的になるから一緒に捕まりやすい気がするし」

「あら、辛辣に告げてるけど狩りでは絶対に必須な能力ね。

 そう言えば、あなたはレベッカに狩りで勝った事が無かったわね」

「うっさい! 臆病者の方が生き残りやすいんだから

 あなたみたいなへたれが丁度良いって事よ!

 認めたわけでも褒めたわけでも無いから勘違いしないでよ!」

「…ふふ、ありがとう」

「な、何よ! 貶されて喜ぶとか変態! この変態!」

「変態じゃ無いって!」


仲が良いな、この2人。しかしメリーはレベッカを嫌ってる風だが

レベッカの事を色々知ってたり、こう言うのがツンデレなんだろうな。

二面性方向のツンデレ。


「あの3人、仲が良いね」

「そうだな」

「羨ましいなぁ」

「小さい私達は小さい私達で仲良くすれば良いの。

 それに、羨ましいのはきっと私の方。

 私はこの村の出身じゃ無いから、1人だけ違う」

「出身地は関係ないだろ、何処から来たにせよ

 一緒に戦う運命共同体である事は間違いないんだ。

 大事な戦友だ、他にも繋がってる部分は沢山ある」

「…セイナ、意外と良い事言うね」

「惚れても良いぜ」

「……でも、変な事言うよね」

「ははは! シリアスなままって得意じゃないからな!」


こう言うシリアスな台詞を言ってみたいとは思うけど

そのままで終わるのは何か俺っぽく無いしね。

ある程度ふざけてる方が俺って感じがする。


「じゃあ、私が預かっておくね」

「そうしなさい、何があってもあなたはこの鞄を守りなさいよ?

 大事な物を沢山入れるんだからね。

 場合によっては、私達の命にだって関わるほどの大事な物よ」

「うん、分かってるよ」


レベッカはメリーの提案を受けてくれた。

嬉しそうに少しだけ微笑み、小さく頷く。


「持ち主が決ったようですね。では、お買い物はどうしますか?」

「ひとまずはこれで」

「了解ですマスター」


ルアが蝶の姿に変化し、再び俺の服の中に入ってきた。


(なぁ、そろそろ周知されてるんだから何も服の中に入らなくても)

(いえ、牽制するにはここが丁度良いので)

(さ、さいですか)


服の中に戻るのは俺を牽制するためか…マジで恐いぜルア。


「よしっと、じゃあえっと。皆、家族との再会は楽しめたか?」

「はい、久し振りで皆喜んでくれました」

「そうか、じゃあ依頼受けるか。暇だとそれはそれで大変だし」

「そうね、何だか身体を動かしてないと落ち着かないし」

「じゃあ、ギルドに行くか」

「うん!」


俺達はすぐにギルドに戻る事にした。


「アリスさん、今…って、何ですかこの書類の量」

「き、昨日ね…あなた達が帰った後に大量の書類が…過去最高よこれ。

 全部、あなた達に対する依頼…多すぎて笑えないわ」

「そ、そうなんですか」

「えぇ、他にもお怒りの書類とか、私達への処分とか」

「どう言うことですか!?」

「あ、いやほら、あなた達の事を考えて報告しなかったのがバレてて…

 でもそこは、イリアさんが動いてくれたお陰か緩和されてね。

 私達へのお咎めは無しなんだけど、始末書が…」

「す、すみません俺達の為にしてくれたのに」

「いや、私の考えが甘かったわ…私の予想だとね

 国で大した問題は起こらないと考えてたんだけど

 まさかこれ程の事をして帰ってくるとは…」

「その報告も全部来たの?」

「そうよ、昨日のうちに書類には目を通したわ。後は始末書が…」


これはすごく大変そうだな…大丈夫かな。

俺達も手伝って…いや、手伝えるような内容は無いか。


「で、あなた達が来たって事は依頼よね」

「そうですけど、忙しいようなら」

「いやいや、あなた達に出す依頼は昨日のうちに決めてたから。

 はい、探索クエスト」

「探索クエストですか?」

「うん、もういつの間にかSランクになってるからね。

 いや普通に考えておかしいけど。ちょっと前まで最低ランクだった子達が

 国に出向いてる先輩引き連れて帰ってきたときにはSランクとかおかしいけど。

 しかも数ヶ月で…前代未聞というか聞いたこと無いわよ。

 私とかも一応、元SSランクだけど、ここまで来るの苦労したんだから。

 何年もかかったわよ…」

「私達もAランクに上がるまで何年もかかりました」

「あなた達の成長性も凄いと思うけどね、普通はAランクになるのに10年は掛るし。

 そもそも、Aランクまで行く事自体、相当難易度が高いんだけどね。

 でも、セイナちゃん達の成長と比べると見劣りするわよね…数ヶ月でSだし」

「運が悪かっただけですよ」

「実際その通りだから何も言えないわよね…あはは」


そう、実際に運は悪かった。運が良ければあそこまで連続で騒動には巻き込まれないのだ。

成長性が早い主人公というのは、大体運が悪いからすぐにランクが上がる。

何か何でも無い依頼で悪の組織と敵対したりするからね。


「街に行った数ヶ月でモンスターの襲撃、人型モンスターとの遭遇

 リバーススキュラの襲撃…いや本当に運が悪いわ。

 生き残れたのは実力があったからと運が良かったからでしょうけどね」

「その通りです」

「元々あなた達って不幸体質だとは思ってたけどここまでとは思わなかったわ。

 探索クエストも油断しないでね? そんなに難しい場所じゃ無いとは言え

 あなた達の運だと、最悪厄介なのに遭遇するから」

「き、気を付けます」

「じゃあ、これ道具ね」


アリスさんが俺達に小さな妖精の様な存在を渡してくれた。

何これ、小さいし翼が生えてるんだけど? 機械なの?


「どうぞ、よろしくお願いします」

「喋れるんだ!」

「妖精に近いのかしらね、道具扱いだけど」

「援護もします」

「道具なのかな? 妖精さんじゃ無いの?

 お姉ちゃんと一緒に居る蝶々さんみたいな」

「あ、出て来た」


話を聞いていたのか、ルアがさらっと出て来て俺の頭の上に止まった。


「近い存在かしらね。蝶々型の妖精とか聞いたこと無いけど」


実際は妖精とは全然違う、そんな可愛らしい存在じゃ無くて

もっと恐ろしい存在なのだ。だって、諸悪の根源だし

可愛げは無いし、容赦ないし。性格も悪いってのに力がえげつないのだから妖精とは


「むっぐ!」

「どうしたの?」

「な、何でも…」

(ルア! 頭は駄目だろ! 馬鹿になったらどうしてくれる!)

(元々馬鹿なのでご安心を、むしろ頭が良くなるかも知れないのでもう1発)

(待って! 悪かった! 悪口言ったのは悪かった! でも事実じゃん!)

(ほい)

「んぐうぅ!」

「だ、大丈夫?」

「だ、大丈夫…」


容赦ない…周りが居る場面では止めて欲しい。居ない場合でもいやだけど

せめて、せめて周りに誰も位無い状態で…いや、やっぱどっちもいやだ。


「それなら安心だけど…無理しないでね?」

「大丈夫です…」

「私と似た存在では無いと思います、その蝶々」

「あ、話が戻った」

「似てると思うけどやっぱり違うんだね」

「はい」

「そうかしらね、後この子なんだけど、転移も出来るらしいのよ。

 すぐに村に戻ることが出来るらしいわ、便利よね」

「貴重な例です。あなた達は運が良いのです」

「ま、ここがこっち側の探索をする際に拠点となるだろうと予想して

 ギルドが彼女をここに支給してくれたという可能性は十分あるけどね」


確かここより先はまだ未開の地なんだっけ、メインでは探索していないけど

一応探索が必要な方向ではあるのか。


「と言う訳で、彼女と一緒にお願いするわね、気を付けて」

「はい、分かりました」

「しかし、小さな子供が3人も居るパーティーは初めて見ました。

 良く生き残れましたね、その3人。力が無い子供はすぐに攫われるのに」

「それはだな、俺達が力ある子供だからだ」

「そうは見えません」

「だろうね、でもほら、こう見えて俺は格闘(特大)だし

 マリスはそんな俺の妹で、弓術(大)とかだし

 クロは滅茶苦茶凄い魔法使いのお弟子さんだし」

「魔法使いがパーティーに居るのは珍しい、貴重なのに」

「そう、私は超貴重、もっと大事に扱え」

「俺も魔法使えるから」

「下位しか使えないじゃ無いか」

「大丈夫、特殊な魔法も少し使えるから」

「見た目に反して凄いと言う事は分かりました」


完全に生き物だな、この妖精…しかも見た目以上に大人びてやがる。

こう言う妖精ってちょっとお調子者だったり、馬鹿だったりするのに珍しい。

まぁいいや、一応役には立つんだろうし期待しよっと。

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