イリアさんの仕事部屋
ルアの話も謎は多いが、ひとまず俺はイリアさんの部屋に案内して貰った。
これから眠るという割に、イリアさんはかなり元気そうだ。
正直、ここまで元気なら眠らなくても良さそうなところだが
案外、深夜テンションって感じであと少ししたら眠たくなるのかもしれないな。
「はい、ここが私の仕事部屋」
イリアさんの仕事部屋、そこへ繋がる扉はとても質素に見えた。
他の部屋と比べると普通の木の扉だ。
大きさだって非常に小さい。他の扉は2枚のドア板があって
その真ん中が開くような作りになっているが
この扉だけはドア板が1枚だけという状態だ。
「どうぞどうぞ、あ、ナナはちょっと待機ね」
「承知いたしました」
やはりメイド達に部屋の中を見られるのは嫌っているようだ。
何故か俺だけは許可を貰って中には入れるというね。
そして、部屋の中には大量の資料が置いてあった。
「これは…足の踏み場…無いんですけど?」
大量の資料は棚に置いてある物もあるが、それだけでは大量とは言えない。
床にも散らばっていた、足の踏み場が無い程に。
正確には散らばっていると言うよりは床の至る所に置かれているという感じかな。
「えぇ、私は何の問題も無いのよ。全部位置把握してるから。
ここにはとある貴族との取引内容が保管してあるわ。
ここには王国、ここにはスラム街、ここには一般家庭の方との」
イリアさんが言った通り、その全てに資料があった。
これだけの数があるのに全て把握しているのか、流石は大商人。
記憶力が無いと商売なんて出来ないのかも知れない。
「でも、これだけではメイドさんを入れない理由は…あまり」
「下手に片付けられると場所が分からなくなるからね。
あ、これは私が色々と考えた商品ね。
で、ここには武器関連の資料があるわ」
はへぇ、マジで色々あるな…沢山ありすぎてイリアさん意外はさっぱりだろこれ。
「で、あなたが入室するのを許可した理由は、あなたなら荒らさないかなって。
それと、もしかしたらこれ全部把握できるかも知れないからね」
「へ?」
いやまぁ、確かに本気を出せば全部を把握することは出来るだろう。
普段の性格や行動からは正直想像出来ないとはよく言われているが
俺は記憶力には自信がある。覚えるのは結構得意ではある。
だが、わざわざ覚えるのは面倒くさいから覚えようとはしないが。
「一応、出来そうではありますが…正直言います。面倒くさいです」
「ハッキリ言うわね、まぁそう言うのも好きよ私。
跡取りになるとなれば、これを覚えて貰うけど」
「いや、なるとは一言も言ってません」
「それもそうね、でもほら興味深そうな資料も割とあるのよ?
例えばこれ、ワーウルフの資料とか」
「なんでそんな物が?」
「ワーウルフも商売相手になるしね、そうそうワーウルフってさ
女性が生まれる可能性が結構高いらしいわね。
出産の割合が9対1だったかしら、殆ど女の子しか生まれないの」
(なんで?)
(ファンタジー的な存在ですし、そもそもエロゲーが元なんで
女性率が高い方が良いでしょ? 男の獣人って何か好きませんし)
(男の獣人でも格好いいキャラは格好いいと思うがね)
しかし、男の獣キャラよりも女の子の獣キャラの方が良いのは俺も同じである。
「で、その影響で純血のワーウルフって大分少ないらしいのよね
確か国に居るワーウルフの殆どが人との混血らしいしね」
「へぇ、そうなんですね」
(因みにあなたの村でもそうですね、純血のワーウルフはレアです)
(え? あんな人里離れてる場所なのに人来るの?)
(はい、来ますよ)
(しかしだ…そこまで女性率が高いのであれば、男はハーレムなのでは!?)
(ワーウルフは浮気はしません。一夫多妻制は無く、ただ1人の妻に寄り添います)
(む? 何で!? 絶対ハーレムじゃん! 男の夢じゃん!)
(私としてはそっちの方が良いからです)
マジか、意外と純愛派なんだな。
エロゲーの世界なんて作っちゃう変態痴女だと思っ
(天罰!)
「にゃがぅ!?」
「どうしたの?」
「い、いへ、にゃ、にゃんでもにゃいでふ」
「いや、絶対何かあったでしょ? そんな口調じゃ無かったでしょ? 何か我慢してる?」
「いえ! 全然!」
「涙…出てるんだけど?」
「あはは! 汗ですとも!」
「そ、そう」
(ルア! 人前でするな!)
(私を痴女等と言ったので当然の罰です!)
(エロゲーの世界を作ってるくせに何を言って)
(もう1発、今度は強力なの欲しいですか?)
(いえ! 滅相もございません!)
恐い…流石ルア、恐ろしい…
「で、えっと…確か純血ワーウルフの一部はワービーストと言う
凄く早くなるスキルを取得できるって聞いた気がするのよね。
意外とあなた使えたりしない? そう言うの聞きたかったのよね」
「それを聞きたくて部屋に?」
「いえ、部屋は将来のことを考えて、少しは覚えて貰うかなって」
「いやあの…養子にはなりませんけど…」
「まぁまぁ、希望を抱くのは良いかなって」
確かに別に構わないけど…ポジティブな人だな。
「で、ついでにワーウルフの資料見付けたから聞いてみようかなって」
「はぁ…そうですね、確かに使えますよワービースト」
「そうなの?」
「はい、凄く早くなるスキルですね、他スキルも使い放題になる」
「へぇ、面白いわね。発動条件は?」
「えっと、よく分かりません。1度しか使ってないんで」
「なる程ね、それは確かに分からないわ」
うん、実は知ってるけど1度しか使ってないのに教えるのは違和感あるしな。
ましてやイリアさんだ、すぐに違和感に気付きそうだし警戒しよう。
警戒しようとするまいと、あまり関係ない気がするけどな。
「でもまぁ、凄いスキルなのは間違いないわね。
安定して使える様になればかなり強力な切り札になりそう」
まぁ、安定して使える様なスキルでは無いんだよなぁ。
精神的か肉体的な極限状態で更に全身に激痛を走らせ
少しの時間経過の後に爆発的に身体能力が上昇する。
追い込まれていないと使えないというのに
発動までの時間稼ぎが必須という、まさに諸刃の剣って感じで非常に扱いにくい。
確かに発動できれば圧倒的な実力になるが
発動条件があまりにも厳しすぎる…安定して使える様になるには
かなり方法を模索していかないと駄目だ。
「じゃあ、次ね。えっと確か…あったあった、これ地下探索の資料」
「え? 地下探索? 何でですか?」
「ほら、あなた達もSランクの冒険者でしょ?
この短期間で凄まじい成長性。ギルドもあなた達の事は一目置いてるはず。
だから、地下探索の依頼が来る可能性があるから資料を渡したの。
可能性は低いけど、不意に来たりしたら困るでしょ? だからね」
確かにそうだな、俺達が冒険者を初めてほんの数ヶ月で既にSランクだからな。
メリー達は俺達よりも大分先輩だったというのにAランクだったことから考えて
俺達の成長性は破竹の勢いと言える。
しかし、実力はまだまだ何だよな、俺は最初の特大から変動無い。
Sランクからは特大はほぼ当たり前の状態だろうし成長を目指さねばならない。
「はい、ちょっと目を通してみて」
「あ、はい」
俺はイリアさんから差し出された地下探索の資料を受け取った。
そこには色々な事が書いてあった、地下のモンスターの危険性などだ。
地下のモンスターは生半可な実力では勝算が無い程に強いらしい。
吸血鬼ほどの力があるモンスターがうじゃうじゃ居るとか。
「……はへぇ」
「だから、地下探索が出来るのはSランク相当程度ね。
何せ、出てくるモンスターがSランク相当の実力ばかりだし。
吸血鬼とかも結構出てくるらしいし、危険度えげつないわ」
「た、確かに…」
ラキ相当の実力がある化け物がめっちゃ出てくるとか嫌すぎる。
「それとこれね、と言ってもこれは明日の予定だけど」
「あ、はい」
次にイリアさんが差し出してくれた資料…と言うか、メモ帳か。
そこには明日、俺達の故郷の村に戻ると書いてあった。
「明日戻るんですか!?」
「そうよ、そこで報酬を渡してまた国へ戻るときにもう一度雇うわ!」
「わ、分かりました」
「護衛、頼んだわよ?」
「はい、任せてください」
唐突に明日戻ると言われて驚いたが…まぁ、良いかな。
そしてメモ帳の下の方に小さく書いてある文字。
マタタビに関しての相談を村の人達として見ると書いてあった。
やっぱり気にしてくれてるんだな。




