早起きしすぎた朝
…マタタビ騒動の後、とりあえず俺は目を覚ました。
時間は早朝の4時か、もう少し眠っても良いだろうがと思う。
こんな時間に眠っても、あまり意味ないんじゃ無いかな?
いや個人的には2度寝は大好きだ、凄く大好きだ。
こう、幸せな気分になる。2度も眠れるというのは実に素晴らしい。
だが、それはこっちに来る前の話でしか無い。
こっちに来てからは憂鬱だった朝が、凄く喜ばしく感じているからな。
「……ふぅ」
ひとまず起きることにした、俺は抱きついてきたマリスとクロをどかして布団からでる。
しかしあれだよな、凄くハーレム! 幼女ハーレムとは素晴らしいでは無いか!
…あのまま眠っていてもよかったかも知れないが、理性が保てなくなるとヤバいから
大人しく起きてイリアさんの屋敷を徘徊することにした。
はぁ、しかしこの姿になってからと言う物幼女にモテる。
非常にモテる。クロも最近妙に積極的な気がする、可愛ければ良いのか?
そもそも、クロのあれはモテていると言っても良いのか?
でも、あいつとのやり取りは地味に楽しかったりするのだ。
そして、何かラキにも目を付けられているわけだからな。
幼女にモテる! だが、俺の本命はマリスだけなのだ!
ふ、超絶可愛いドジッ子属性持ちのお姉ちゃんっ子で世話焼き妹。
ははは! 幼女に求められている属性をここまで手にしている
わがまま幼女であるマリスに敵う存在など居ないのだ!
「ふんふふーん、へへへ」
いやぁ、マリスの事を考えると、余計に精神的な暴走が。
だが落ち着くのだ、鼻歌をしながらイリアさんの屋敷を徘徊とかヤバい。
ひとまず精神的動揺を押さえつけ、俺は扉を開いた。
「ん?」
ドアを開けてしばらく歩いていると、非常に美味しそうな匂いがしてくる。
朝の寝起きというのは妙に腹が空くからな。
その状態でこの匂いを嗅いでしまえば、辿るしか無い!
この匂いの出所は何処かな? と言ってもほぼ確定だろうけど。
料理の匂いが出てくる場所とか厨房しかあり得ないだろJK。
あっと、ここかな。しかし今更だが豪華な厨房だ、流石イリア邸。
「……チラリと」
ゆっくりとドアを開け、匂いの出所を見てみた。
そこには何人かのメイドさんが料理をしている姿があった。
こんな早朝だというのに、これだけの数が起きて料理をしているとは。
確認できた範囲だけで10人。なる程、凄い人数だ。
だが、これだけの人数で作業が出来る厨房…流石の広さだな。
「もうお目覚めなのですか、セイナ殿」
「うひゃ! な、ナナさん!? よく俺の場所が」
「私はイリア様より、あなた方の警護を承っておりますからね。
しかし申し訳ありませぬ、少し眠っておりました」
「いや、謝る事じゃ…寝るのは自然な事ですし。
でも、昨日の散策の時は来ていなかった気が」
「気付いておりませんでしたか? ならばよかったです」
あぁ、付いてきていたのか…そうだよね、イリアさんも出てる状態で
警護が1人も付いていないとは思えないしね。
「イリア様に見付かってしまうと怒られてしまいますからね。
私はシオさんと共に身を潜めて警護を行なっておりました」
あぁ、なる程イリアさんの指示だったんだ…見守ってたのは独断か。
通りで警備が付いていないと思ったよ。俺達が警備という意味合いはあったんだろうが
やっぱり普段の日常生活での警備は好ましくは思って無いのかも知れない。
危険なはずの国の外だって護衛なしで出歩くような人だからな。
「屋敷内では、基本は皆様の警備を行なって欲しいと指示をいただいております。
イリア様にはシオさんが居ますからね」
やっぱりイリアさんの警備はシオさんが行なっているのか。
あの人もかなり強いみたいだしな、戦ってる所は見てないけど。
ナナさんが戦ってる所は見せて貰ったから強いのは間違いない。
まぁ、イリアさんの警備を行なってる人が弱いわけないか。
「して? 何故この場に? あまりにもお早い起床なので驚きました」
「いやその…何だか早くに目を覚ましてしまって
暇だったんでイリアさんの館をちょっと回ってみようかなと」
「なる程、しかし入られては困る部屋もあります。
回るにしても声はおかけしていただきたい」
「す、すみません…でも、見られたら困る部屋って」
「イリア様の仕事部屋ですかね、イリア様は自身の仕事部屋に入られるのを嫌っています。
イリア様曰く、自分の確固たる空間に他人が入るのは抵抗があるらしいです。
メイドもその室内には基本的には入れて貰えません」
「はぁ、なる程…」
「セイナちゃんなら入っちゃっても良いわよ?」
「い、イリア様!?」
「え!? 何でこんな早朝に!」
「いやぁ、私は今から寝ようかと思ってね」
「え? 何かしてたんですか?」
「色々とね、マタタビの対策とか考えてたら中々眠れなくてね。
匂いで酔っ払うから、鼻栓とかあれば良いかなとは思うんだけど
マタタビの匂いだけを遮断する何て出来ないし、とか色々考えて」
あのマタタビ騒動の対策、ずっと考えていたのか。
1度火が付いたら中々消えないタイプの人だな。
「なる程…イリアさんは1度火が付くと中々止まらないタイプなんですね」
「そうよ、満足するまで徹底的にしようと思うわ。
とは言え、流石に今日は案も出ないし、ちょっと食事して寝ようかと思ってね。
そしたら話し声が聞えてきたって訳、しかしセイナちゃん早いわね」
「普段はもう少し寝てるんですけど、眠った時間が早すぎたのが原因ですかね」
「眠ったと言うより、眠らされたって感じだけどね。
アイルを責めないでね? よかれと思ってやった感じでしょうし」
「分かってますよ」
お陰で何とかあの状態を打破できたわけだしな。
まさか3人一緒にベットに運ばれているとは思わなかったが。
「しかし、なんで俺達3人でベットに?」
「3人とも子供だし、大丈夫かなってね。引き剥がすの出来そうに無かったから」
眠った後も引っ付かれていたのか…なんて精神力!
そして幼女2人に取り合われるとは、男冥利に尽きるでは無いか!
ヒャッハー! とか思ってたら多分電撃が飛んで来るから堪えねば。
(良い勘してますね)
(うん、だから電撃は勘弁してください)
(良いでしょう、許します)
許された! 変な事を考えるとルアに筒抜けというのは実に恐ろしい…
「好かれてるわね、セイナちゃん」
「喜ばしい限りです」
「さてさて、話は戻るけど、私の仕事部屋見たければ見て良いわよ?」
「えっと…理由は何でですか? メイドさんも入れない部屋に俺を入れても良いって」
「いやぁ、将来的には跡取りになってくれるかも知れないわけだから」
「……えっと、何度か言ってますけどなりませんよ? 跡取り」
「養子になってくれても良いのよ?」
「な、なりませんよ」
これでも俺はいつかこの世界から去る身、跡取りにはなれないのだ。
でもどうなんだろうな? 去るのだろうか? とか考えてみるが
正直、先の事過ぎて考えるのも馬鹿らしい気がする。
「絶対に最高の条件だと思うんだけどね。
仕方ないわ、国が安定したら再び呼ぼうかしら。
大きくなったら雇って、将来私の後を継ぐように教育したりして」
「えっと、どうしてそんなにも俺達にこだわるんですか?
俺達以外にも優秀な人は沢山居そうですけど…」
「私ね、自分の目にどうしようも無い位に自信があるの。
でも、自分の目よりも自信があるのは、直感。
私の堪があなた達は将来性が最高だと感じている。
同時に、あなた達の先が不幸な事になるとも感じているの」
「え? どうしてですか?」
「そうね、あなた達が強すぎるから」
どう言うことだ? 強ければ良いことでは無いのか?
何で強すぎるのに不幸な事になると考えてるんだ?
「どうもモンスターの動きは怪しい、そしてセイナちゃんは変なのに目を付けられている。
あなたはかなり魅力的な存在だというのがこの点から明らかなのよね。
そう、あなたはちょっと魅力的すぎる。力あるモンスターが惹かれるほどに。
魅力的なのは良い事だけど、魅力的すぎるのはあまりにも危険。
ましてや人型のモンスターに好かれやすいとか最悪過ぎるわ。
そしてあなた達は冒険者…このまま続けていればどうなるか分からない」
とてもじゃないが、信じられない内容ではある。
しかしだ、イリアさんが言っている。それだけで説得力は十分だった。
「だから、あなた達を私の元に留めたい。あなた達が悲惨な目に遭わないように」
「俺達の為ですか?」
「いいえ、私の為ね。あなた達と一緒に居ると落ち着くのよ。
1人じゃ無いって感じられる。お金で手に入れたわけじゃ無い。
殆ど対等な関係、つまり家族に近い関係だと思ってるから。
上下関係では無く、雇い主と雇われ側って言う関係でも無い。
あー、でもまだ報酬を払ってないからそう言う関係なのかしら?
でも、そんな風に感じない間柄って思えるからね」
「あ」
そう言えば、報酬とかあったっけ。完全に忘れていた!
そうだよな、ギルドの依頼でイリアさんに付いてきたんだった!
完全に忘れていた! 報酬を貰っていないというか
そもそも報酬が発生していると言う事すら忘れていた!
てか、依頼だと言う事すら忘れていた!
「あら、あなたも忘れてたの?」
「か、完全に…」
「今までの協力から考えて、既に1000万ゴールドとか生じてもおかしくないレベルよね」
「いえ、そんなに」
「ふむふむ、国を3回救って、私の悩みを解決してくれて
国からも認めて貰っておいて、1000万ゴールドの価値が無いというの?
いやいや、むしろもっと出てもおかしくないレベルだからね?
国の英雄さんよ? モンスター襲撃、人型モンスター撃退、リバーススキュラ迎撃。
この3つ、普通に国が滅びる規模よ? それを解決してて
1000万の価値が無いとかあり得ないでしょ、どう考えても」
あー、そう言えばそうだったな。短い滞在だったはずなのに
アイルが誘拐されたせいで人型モンスター撃退と
リバーススキュラ迎撃のイベントまで発生していたんだった。
ちょっとフライング過ぎだと思う。
(普通はこれ、第7章とか、物語の後半辺りに来るイベントですよね)
(あなたが言いますか女神様)
(私が原因とでも? いえいえ、完全にあなたの不幸体質ですよ。
主人公の中でも最高レベルの不幸体質なんじゃ無いんですか?
確かに主人公は修羅場を潜る事が多いですが、あなたは異常です。
私の予定だと、アンデッド襲撃の後に村に戻って
その後、ちょっとした探索クエストが入って
そこでセイナさんだけ捕まってチョメチョメされた後に
仲間が救出、その後、死んだ目をしたセイナさんを見て
仲間の戦闘力上昇などの修行イベント。
その後、仲間ピンチでセイナさん復活から国に戻って
人型モンスター撃破イベント。
で、リバーススキュラ迎撃で敗北してあわやの所で
ライバルキャラ参戦辛うじて撃破、第2形態で追い込まれて
仲間覚醒イベントの後、国に戻って日常パート
とか、そんな風に想定してたんですが)
(凄く具体的! 想定というか完全にストーリー作ってますやん!
と言うか! 俺がチョメチョメされた後って何!? 死んだ目をした俺って何!?
何される予定だったの!? アイルが捕まってくれてマジでよかったよ!)
(いや、所詮想定ですし。現に想定外してますし。
何でこの段階でリバーススキュラを倒してるんですか?
何段跳びですか? そもそも格闘(特大)で倒せるレベルじゃ無いですよ?
何で勝ってるんですか? あの装備内容で勝てるとかおかしいんですけど?
バランス壊すなチーターめ!)
(おかしい! バランスを壊してるのはお前の方だルア!)
まだ中盤程度の段階で、俺は終盤のモンスターを相手にしていたのかよ…
そりゃ苦戦するよ、なんで勝てたの? ポイントショック強すぎるの?
(本来はクロさんとか位無い筈なんですよ?)
(え? クロは想定してないの?)
(はい、完全に想定外なのですよ、仲間の友人ポジは考えてましたが)
……クロ? そうか、クロか。あいつが原因なのか。
(…ふーむ、私はあんなキャラは考えて無いんですよね。
とは言っても、そもそも殆どは手放し状態ですし
基本的な世界観を作った後は手放しですからね。
想定してたストーリーはありましたが
その通りになるとは最初から思ってませんが
メリーさんの存在は偶然に一致って感じですかね)
うーん、分からないな…どうなんだろう?
ルアは何処まで流れを想定している?
はぁ、ルアに心は読まれても、ルアの心は読めないからな。
謎は謎のまま……って、事かな。




