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常識くんと愛さん   作者: ニケ
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第九十六話

残りのうどんを食べ終えて四人ともゆったりとくつろいでいる。何をすることもなくテレビを見たり、足を伸ばしてストレッチをしたり。それぞれが自由にしていて、何もないのになぜか楽しい。たくさん煮込んだうどんと炒飯が完食してなくなった。空っぽの鍋とお皿を見ながら神埼は嬉しさがくつくつと込み上げてきて、体が軽くなる。明日は何を食べさせようか。料理をすることが楽しみになってきた。鍋を持ち上げて台所へ行こうとしたら、林に止められる。俺が持っていく。神埼は緒方のそばにいてやれ。大塚もたぶん、もう寝るから。持ち上げようとした鍋をひょいっと横取りされた。穏やかだが意味ありげに笑っている。神埼は急に恥ずかしくなって林を軽く睨んだ。大塚と林は事あるごとに緒方と自分をくっつけたがる。二人なりの気遣いだろうが、兄のような気心の知れた二人からそのようにお膳立てされると逆に居たたまれず、ついぶっきらぼうに振る舞ってしまう。自分が照れていることは二人にとって微笑ましいらしい。はぁと一つ大きなため息をついた。目の前を見れば大塚が自分を見てにっこり笑っている。「俺ら、神埼の部屋で眠らせてもらうんだよな。布団に入ったらすぐ寝るから。もうほんと、すぐ寝る。だから気にするなよ」寝つきはいい方なんだ。大塚のその笑顔が胡散臭い。神埼は目を細めてじっと見据えた。「何を期待してるのか知らないけど、俺もすぐ寝るからね。別に緒方とはいつもじゃれてる訳じゃないんだから!」神埼の反論に、へぇーと含みを持たせた声で大塚は答える。さっきまで泣いていたのに。。神埼は心の中で毒づいた。大塚はみんなを引っ張る大人っぽい格好いいイメージがあったけど、最近は自分のことをよくからかう近所のお兄さんのような。とにかく軽くて飄々とした印象に変わった。真面目で優しいのにどこか軽くてふわりとしている。風のようだ。「林くんは、大塚くんと緒方は似てるって言ってたけど。全然似てない。。。緒方はこんなに面白ろ可笑しくからかわないもん」目の前の大塚を見ながらぼそっと呟く。目を少し見開いて神埼を見たあと、そうか、と言って大塚は笑う。隣でテレビを真剣に見ていた緒方にちらりと視線を向けて、にやりと笑った。「俺はこいつほど真っ直ぐでわかりやすくはないよ。殻を被ってたのかもな。お前らといると、楽だぜ。もう嘘をつかなくていいから」自分を飾らなくていいから。両親の思い描いていた理想の息子像。大塚はそれに自分を当てはめていたと言っていたし、自分を押し殺して振る舞っていたことを嘘をついていたと解釈しているが、その理想も大塚の一部ではないかなと神埼は思っている。自分を意図的に変えたり隠したりするとしても、そんな完璧に理想へと変えられるものなのだろうか。みんなのリーダー的存在で冷静で優しいあの大塚も、そのままの大塚の姿だと神埼は思う。大塚らしいおおらかさや相手を包み込む独特のふわりとした優しい雰囲気は全く変わっていない。理想に当てはめるとか、期待に答えるとか関係なく大塚は大塚だったのだと思う。嘘なんかついていない。いつ何時でも大塚は大塚だった。神埼は胸を少し張って言い放つ。「大塚くんは、ご両親の期待とは別として、元からそういう人間なんだよ。大塚くんはどんな時でも大塚くんなの!そうやって俺をからかってたじゃないか!殻とか被ってないし、嘘もついてないよ」どうだ!という勢いで神埼は大塚に言った。その格好がえっへんと子供が得意気に主張しているようで、大塚はこっそり笑ってしまう。そうかそうかとなだめる他に方法はないだろう。神埼は頑固な所があり、一度言い出したら聞かない。そこは緒方と似ているなと大塚は思う。神埼が自分は嘘をついていないと言ってるのだから、そうなのかもしれない。隠していても飾っていても、自分は自分なのだと少しほっとした。「悪かったよ。あんまり面白いんでな。ほんと、むきになるところなんて。。。笑える!!神埼、お前、今。すっげぇ不細工な顔してるぞ!」凄い顔だなー!と指を差して笑っている。神埼は、指差したなー!!と怒って大塚にちょっかいを出していた。緒方はテレビを見ながらその光景を微笑ましそうに眺めている。少し前まで神埼に近づくと激しく嫉妬していたのに。優しく自分を見ている緒方に大塚は驚く。気をそらしていると、神埼の手が脇を目指してくすぐり攻撃を始めた。集中して応戦しないと負けてしまう。仲が良いですねぇ。のんびりとした緒方の声を背中に受けて、暴れている神埼の攻撃を避ける。この優しい恋人たちのために早く寝るつもりだったのに。夜はもう少し続きそうだ。「緒方!お前の恋人、強ぇよ!!何とかしろ!彼氏だろ!!」神埼の攻撃に堪らず緒方に援軍を頼んだ。しかし緒方は、私はいつでも神埼くんの味方ですから、と澄ましてのんびり眺めている。「神埼くんは熊ですよ。私たちアヒルやウサギが敵うわけないでしょう。熊の攻撃から逃げるしかありませんよ」どういう意味だよ!!大塚に攻撃しながら神埼は緒方の方を向いて威嚇した。アヒルの私は逃げます。。ふっとテレビの方を向きながら穏やかに笑った。

ふう。。昨日夜中に眠れず、書いてみようとしたら第九十五話が生まれました。ありがとうございます。そして、いつも通りにこの第九十六話。生まれました。皆様に会うために生まれてきました。なんかちょっと感動です。。。ありがとうー!!

ではでは皆様、これからも素敵な時間をお過ごしくださいね(*^^*)

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