表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
常識くんと愛さん   作者: ニケ
90/319

第九十話

卒業式が終わり春休みがやってきた。春の陽気に誘われてか、神埼はいつも以上にゆったりと眠り目が覚めたのはお昼過ぎだった。ぼんやりと目を開ければ緒方が自分を見ている。穏やかで柔らかい眼差しに胸がドクンと高鳴った。恥ずかしくておはようと遠慮しがちに言えば、嬉しそうに頭を撫でる。そのまま寄り添ってきて抱き締められた。「緒方?」いつもは先に起きていて居間にいることが多い。朝御飯を作って自分が起きてくるのを待っている。朝から面白いテレビがあるのか画面の世界に夢中だった。でも今日は自分にぴったりとくっついて離れない。どうしたのかなぁと思い返してみると、この頃緒方との時間がめっきり減っていたなと神埼は思った。寂しかったのだろうか。抱き締めたまま子供のように動かない。まるで母親をやっと独り占めできたかのように頭をぐりぐり左右に振って神埼の胸に押しつけてくる。演説が完成して戻ってきた時と同じ、これは緒方が自分に甘えたいというサインなのだなと、心がふわっと柔らかく温かくなった気がした。緒方が甘えて頼りにしてくれるのは嬉しい。素直に感情をぶつけてくれることも。そっと優しく緒方を包み込んだ。「お疲れさま。緒方。よく頑張ったな。俺、ちゃんとそばにいるから。ずっとこうしていような」緒方はまだ満足していないようで、返事をする代わりに頭をぐりぐり押しつける。駄々っ子のような、拗ねたような仕草に思わず笑ってしまった。大人っぽくて落ち着いている緒方。ドジな所もあるけれど、基本的には冷静で穏やかに周囲を見守る緒方。普段からかけ離れた今の姿に愛しさが込み上げてくる。我慢していたのだろうか。なるべく優しく頭を撫でた。しばらく動かずに受け止めていると突然、緒方の携帯が鳴る。ジャズの伸びやかなメロディで携帯の主を呼んでいた。緒方は一度ちらりと携帯の方を見たがまた同じ体制に戻る。出る気はないらしい。その拗ねた目線に神埼は苦笑する。出ないのか?と声をかけてみた。「。。。やっと二人きりになれたのです。今日は神埼くんとのんびり過ごすと決めていました。邪魔なんて許しません」ムッと顔をしかめて携帯を睨む。ほどなくして携帯の音楽が止まった。緒方は上機嫌になって神埼にしがみつく。ほら、空気を読んでくれましたよ。さすがは、私の携帯です。嬉しそうに笑って腕に力を込めた。神埼は苦笑するしかない。確かになんだかんだと離れていたので仕方がないなと思う。その時、居間からアパートのインターポンが鳴り響いた。ぎょっとして緒方は顔を上げる。「ま、まさか。。そんな。。先程の電話は誰からなのですか!?私と神埼くんの時間を邪魔する気なのではないでしょうね!!」体制はそのままに、手を伸ばして携帯をすばやく取る。画面を開いて見ている緒方の表情が驚きから落胆へと変化していく。その様子が可笑しくて神埼はこっそり笑った。画面を閉めるとゆっくりと神埼から離れる。名残惜しそうに神埼の頭を撫でた。「大塚くんと林くんがアパートの前にいるそうです。林くんの勉強会を兼ねてゆっくりとしようと。林くんがお母様から遊んできなさいと追い出されたそうですね。お母様は嬉しいのでしょう。二人を追い返すことはできません」はあと大きな息を吐いて残念そうにしょぼくれている。神埼は笑いながら緒方の頭を優しく撫でた。「良いことじゃないか。林くんにホームページのことも報告したかったし。お母さんも嬉しかったんだろうな。食材もあるから、みんなでご飯食べよう」勉強教えないといけないだろ?一緒にやるんだから。神埼は大塚と林が自分のアパートに来てくれたことがとても嬉しかった。緒方とゆっくり過ごすのもいいが、心が温かくなるような二人と過ごすことも嬉しい。笑っている神埼を見ている緒方も少しずつ笑顔になっていった。一つ息を吐いて立ち上がる。「人の恋路を邪魔するとは。。さすが大塚くんと林くんです。お二人には私なんてお見通しなんでしょうね」アパートの扉が開く音がして、二人の足音が聞こえてきた。お邪魔しま~す。のんびりとしたこの声は大塚だろう。あなたたちは。。!!スリッパがありますので、とりあえずお好きな足をどうぞ。と答えている。「。。なんだ?このスリッパは?カエルだろ?ウサギだろ?これ?ワニか?あ!怪獣って!!」バラエティーに富んだスリッパたちのお出迎えに大塚の驚いた声が聞こえる。これは冬用です。暑かったらこちらの春、夏用がありますから、好きなものを選んでくださいね。ちなみに私は可愛いアヒルのスリッパ、神埼くんは熊のスリッパです。誇らしげな緒方の声が聞こえてきた。神埼も玄関へと行ってみる。「いらっしゃい!さあ、上がって」神埼、俺、どれがいいと思う?ここはキャラっぽいの履いた方がいいのか?大塚はカエルとウサギとで迷っているらしい。林は奥にあった亀のスリッパを選んですでに履いている。「これしかないだろう。。。お前はウサギがいいんじゃないか。ピンク色で案外顔に似合うぞ」亀のスリッパがあったのですか!?緒方は驚いている。俺、ウサギかよ。。複雑な顔で大塚は呟き、ぴったりじゃないかと林は澄まして答えている。賑やかな温かい時間だ。神埼は嬉しくて、どこかくすぐったかった。

今日は出てきましたから、載せますね(*^^*)お好きな時に読まれてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ