第八十七話
卒業式の祝賀会は宮田の家で行われた。宮田は代々地元の地主で、たくさんの土地や建物を所有している。緒方の本家である緒方家とも昔から交流があり、跡目を継いだ祖父同士は同級生だ。緒方は本家には興味がないので、あの宮田家の跡取りが生徒会の先輩であるこの宮田だということを今、初めて知った。俺って跡取りって感じじゃないんだよな~。宮田はのんびりと笑っている。「そうビビんなって!リラックス、リラックス」宮田はいつものおどけたノリで緒方たちを案内した。杉本は何度か宮田の家に遊びに来ているらしく、立派な家にびっくりしている緒方や神埼たちを優しく見つめている。俺だって最初はめちゃビビったし。しょうがないだろ。笑いながら宮田の肩を叩いた。緒方はキョロキョロと辺りを見回す。見慣れない壺や大きくて豪華なお皿が飾ってある。緒方の本家のように長い廊下があり、窓の外にはとてもシンプルで手入れの行き届いた日本庭園が広がっていた。池には当然の如く、鯉が泳いでいるらしく水面が揺らぐ。本家に似ているなと緒方は思った。「ここでバーベキューしようぜ。肉とか野菜とか。食べたいもの持ってきたか?」宮田が連れてきてくれたのは、離れのこじんまりとした部屋だった。外にバーベキューのセットがあって、部屋の中にはテレビもベットもある。和風の畳の部屋と洋風の部屋それぞれあり、見てきた部屋よりも少し古くとても落ち着く。緒方はふっと力を抜いた。宮田は材料はあるから、気にしなくていいと言ってくれたが、それでは悪い気がして各自食材を持ってくると伝えていた。そうか、と宮田は笑っている。「ほーんと、お前らってきっちりしてるよな。まあ、お前たちが心地いいようにしてくれればいいんだけど」大きな広い庭に林はずっと見とれている。神埼と宮田がそれに気づいて声をかけていた。三人で見に行くようだ。行ってくるね。神埼の柔らかく優しい笑顔が眩しい。心臓が嬉しさとときめきでドキドキしている。「あいつらが戻ってくる前に焼いておくか。何持ってきたんだ?火の通りにくいものから焼くかな」杉本はがさごそと持ってきた食材を取り出している。緒方も先程スーパーで買ってきた肉と野菜を取り出した。神埼の好きな豚バラとジューシーな鶏のモモ肉、キャベツや玉ねぎも取り出す。杉本は食材を食べやすいように切りながら緒方と大塚を見つめた。「ひとつ、言っておくけど」急に杉本の纏う空気が変わった。とても真剣な目で二人を見据える。不思議な迫力があり、緒方と大塚は動きを止めた。「わかってると思うが、お前ら二人、2年から目をつけられてるよな。まあ、元が優等生だからあいつらも派手なことはしないと思うけど。でも、もし、何かあったら。必ず俺か宮田に言えよ。俺たちの知らないところで何かあったら、承知しないからな」杉本の目は真っ直ぐでじっと二人を見つめている。誤魔化しのきかない目だな。。緒方はふと神埼のことを思い出した。大塚も驚いているようで、目をぱちぱちさせている。真剣に自分や大塚のことを考えている強い眼差しだ。あまりの真剣さに反応が遅れる。「あ、ありがとうございます。必ずその時はお伝えします。その、あの」しどろもどろになった緒方の後に、俺も。。と控え目な大塚の声も聞こえる。びっくりした。こんな真剣に自分たちを考える先輩に会ったことがなかった。いつも力を尽くすと目の敵にされていた。今回も我慢をするか、要所できっちり絞めるか。どちらにせよ、神経を研ぎ澄ませ警戒しようと思っていた。人の機嫌を伺うことはとても疲れる。自分や大塚だけならそんなに過敏にならないが、今は神埼がいる。自分が傷つけば神埼は黙ってはいない。そして神埼自身も傷つく。それだけは絶対に避けたかった。「本当だな!ちゃんとここで承諾しないと、バーベキュー焼かないからな。火もつけないし」杉本は切った肉を持ち上げて二人にほーらほーらと見せびらかしている。先程の真剣な雰囲気とのギャップが大きくて緒方は思わず笑った。大塚も身構えていたが、様子を伺うことを止めたようだ。「お前らは、自分たちでケリ着けますって顔してるからなぁ。心配なんだよ。俺も宮田もいるから、頼ってほしい。よろしくな」これでもそばにいることを忘れないでくれよ。屈託なく笑っている。杉本の目には温かな光が溢れていて、自分たち後輩を慈しむ優しさが溢れていた。緒方や大塚はこんな先輩は初めてなのでどうしていいか戸惑う。でも、どこかくすぐったい。心の奥にあった痛みが少し疼いてふわりと柔らかくなった気がした。「さて、焼くぞ。このまま何もなかったら、宮田がまたブーブー言うからな」的確に素早く焼いていく。その手際の良さに緒方はまた驚いた。杉本先輩、料理されるのですか?と聞いてみたら、俺の両親、すっげー料理オンチだからと笑っている。「スゲーんだぜ。この間、肉の脂身を取るって言って、生の肉を冷水にぶちこんだんだからな。シワシワで水っぽくて美味しくないし。。焼き肉のタレを飲み物として氷で割ってんだぜ!あり得ねぇって!」恐ろしいんだよ!!緒方はなるほどなぁとしみじみ納得した。大塚は安心したように笑っている。大塚も中学生の頃から上級生によく絡まれていた。緒方の知らないところでもたくさん嫌がらせを受けたのだろう。口に出さないが、今回も先輩である杉本と宮田を警戒していた。二人をまだ完全に信用していないようだが、少しずつわだかまりが解けてゆけばいい。「俺も焼きますよ。トング貸してください」柔らかく笑った大塚に、任せた!と杉本は嬉しそうにトングを手渡した。
皆様、おはようございます(*^^*)いかがお過ごしでしょうか?
春ですねぇ。。体が重くて眠くて。。昨日は20時頃に寝ちゃいました。そして、寝坊するという。。この。。春ですねぇ。。
皆様も心地よい睡眠をお楽しみくださいね(*^^*)ではでは~。




