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常識くんと愛さん   作者: ニケ
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第八十四話

演説の内容を考え、先輩たちに電話で杉本が伝えている。これで納得してくれると助かるが直接会いもせず、なんとかしてもらおうとする先輩たちに腹が立った。やはり、手を抜こうか。何度も頭に過ったがその度に神埼のあの美しい目が自分を見つめている。ドキリとして緒方は閉じていた目を開けた。「はぁ。。まだダメだって。想いが伝わってこないんだと。何もしない癖に指摘だけは的確なんだよなぁ。まいるよ」先輩たちの指示や指摘が的外れならばまだ怒りの矛先を向けられるが、驚くほど正確なので緒方を始め、演説を考えていた四人は黙ってしまう。投げ出しているとは言え、一番悔しくて演説を考えないことへ怒っているのは、辞めると決めた本人たちのようだ。想いが強すぎて、それを形にしたいが、できない自分に腹を立てている。その怒りを緒方や杉本たちにぶつけている。中途半端な不安定な2年の先輩たちに緒方も全ての怒りを向けられなかった。「。。中途半端とは。。こんなにも迷惑がかかるものなのでしょうか。。これならば、お互いの主張を激しくぶつけ合っていた前の先輩方の方がいいです」形にならなくてもいい、中途半端になってよくわからない演説になってもいい。自分たちの想いが上手く伝わらないことがわかっていても、その現実に立ち向かってほしかった。「せっかくこんなに熱く素晴らしい想いがあるのに、その重さに負けてしまうなんて。伝わらないから、上手くできないからと、止めてしまったらそこで終わりではないですか」素晴らしい想いも、先輩たちの心も。存在しているのに、無いもののと同じだ。それこそ誰にも伝わらない。先輩たちのもどかしさが伝わってきて、だからこそ投げ出してほしくなかった。辞めればそれで終わりだ。どんな素晴らしい想いがあっても、結果、何も残らない。今は杉本や宮田や、緒方、大塚が形にしようと葛藤しているが、また同じことがやって来た時。先輩たちは逃げるのではないかなと緒方は思っている。誰かにその想いを託して、表現してもらって評価し、また指摘する。直接自分で自分の想いを伝えようとしなくなる。それは受け身にはならないのだろうか。3年の先輩たちが生徒会を立ち上げたのはその受け身が嫌で、与えられるのではなく、自分たちで自分たちの想いを実現する。今まで避けていた困難を自分たちの手で越えていきたい。その想いだった気がして、緒方はその見えない想いに自分は惹かれたのだと思った。「上手くいくことが全てではありません。全生徒から支持をもらえることは目標ですし、そうなってくれれば嬉しい。でも、それより。自分たちで葛藤することから逃げていては、生徒会を立ち上げた意味がなくなる。挑戦したいと思った意味がなくなります」先輩たちの想いが仇になる。現に緒方や大塚、二人を待っている神埼や林を巻き込んでいる。緒方は目を細めた。神埼に会いたい。会ってこんなことが起こっていると伝えたい。神埼なら、なんと言うだろうか。この状態でも先輩たちの想いを汲み取って、想いが伝わるような演説を考えろと言うだろうか。「。。それよりも、2年の先輩方が怒られそうですね。。。自分の想いを無視して、逃げるのかと」神埼は自分よりも遥かに頑固で強い。美しく脆いが、自分の心からは決して逃げない。大切なもの、想いに一途なまでに真っ直ぐだ。純粋、というのだろう。神埼が先輩たちに怒り狂っている姿を想像して緒方は思わず笑ってしまった。「。。緒方が笑っている。。不気味だなぁ。。」緒方とは中学一年の頃からの付き合いだが、こんな緒方は初めてだった。緒方は中途半端に物事を終えるのを嫌う。何か結果を出すか、時間切れでも出来ることはすべてやりきるし、一度決めたら妥協は一切しない。周りには優しいが自分にびっくりするほどシビアで厳しい。冷徹なまでに自分を追い込む。そばで見ていた大塚や林はそれを知っていた。集中している緒方は隙がなく冷酷で、とても話しかけられる雰囲気ではない。そんな緒方が突然柔らかく笑った。不気味過ぎる。冷徹で感情を排除したかのような集中した姿を、緒方は大塚や林以外の人には見せなかった。「緒方、さっきの先輩たちの指摘。組み込んでまた考えようぜ。演説の骨組みは大方できてきたんだし。あとは、まとめの部分。先輩たちの想いをもっと取り入れられる」大塚はなんとなく緒方の感覚がわかる。緒方が見えていない部分が自分にはわかるらしい。緒方と何かをする機会が多かったからなのか、自分と緒方は似たタイプなのか。言葉にしなくてもふっとわかるときがある。林も感覚は違うが根が似ているのか、そばにいて落ち着くし口に出さなくてもサポートし合える。なので大塚も緒方と同様二人には気を遣わず、自分の感覚のまま没頭できる。「そうですね。。。この流れから先輩たちの想いを伝えるのには無理があります。まとめへと繋げるためにも、骨組みはそのままに。表面だけ変えましょう」お互いの意見を言い合い、どんどん演説がシンプルにわかりやすくなっていく。その光景を杉本や宮田は黙って見ていた。「3年の先輩たちが、緒方と大塚は絶対生徒会に呼べって言ってたけど。。。その意味がようやくわかったよ。。すげぇ。。」ぽつりと杉本が言った。宮田はそうだなぁとのんびり見ている。「あいつらが嫉妬するわけだよな。二人には意見を求めなかったし。3年の先輩が頼りにしてんの、悔しかったんだろ。こうなるの、わかってたんだよな、きっと」噂には聞いていたし、凄い一年がいると騒がれていたが、高校に入ってそれほどでもないと2年のなかで言われていた気がする。その時、自分の仲間たちは不思議な安堵感のなかで嬉しそうに笑っていた。「あほだな。。その時から決まってたんだ。自分たちが抜かれるって。悔しかったら、悔しさから逃げないで立ち向かわないと。逃げ回っても、最後には持っていかれる」その時、自分は何をしていたのだろうか。ふと思い出して笑った。「お前は、そんなに凄い一年がいるなら、仲間になって一緒に頑張ろうって言ってたよな。だから、俺、お前に誘われた時、生徒会に入ろうって思ったんだぜ」宮田は杉本の肩をポンといつものように軽く叩いた。杉本は屈託なく笑う。「そうだった。俺は一緒にやりたいって思ったんだ。俺は何もできないし鈍臭いけど、先輩やこの学校や地域が大好きだから。いっぱい教えてもらおうって張り切ってた」宮田と笑い合った後、演説を考えている二人を見る。二人にしかわからない討論をしている。二人は確かに凄い。それは2年の仲間たちも十分わかっている。だからこそ。「このまま演説が完成して全生徒に披露されたら。あの一年コンビ叩かれるな。杉本。俺とお前の出番だぞ」お茶らけていた宮田の目がふっと静かになる。緒方と大塚は凄いが無防備すぎる。その凄さが、努力が、相手の劣等感を刺激し、嫉妬や妬みはより激しくなるだろう。頑張れば頑張るほど、二人は目立つ。何の取り柄もない自分が前に立つことで、その膨れ上がる劣等感を静められる。杉本は宮田の視線に大きく頷いた。「これでいきましょう。想いを込めてわかりやすく。先輩たちを見送る送辞も含めて」緒方の声か聞こえてきた。精一杯力を尽くす後輩を頼もしく思う。大切にしたい。守りたい。知らずに笑っていたのだろう。宮田が、にやけるなー!と突進してきた。忙しくなるぞ、笑いながら杉本は宮田の頭を軽く叩いた。

皆様、こんにちは(*^^*)いかがお過ごしでしょうか?

私はアクエリアスが好きです。なぜなら。。。安くて美味しいから~!命の水ですな。命の水。ありがたや~。

ではでは、皆様これからも素敵な時間をお過ごしくださいね(*^^*)

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