第七十五話
教室の扉が開いた。勢いよく何かがやってくる。どんどん神埼に近づいてそのまま抱きつかれた。「神埼くん!お会いしたかった!とてもお待たせしてしまいましたね。寂しくなかったですか?」ぎゅうと強くしがみつかれる。神埼は慌てて緒方を抱き止めた。どうどうとなだめるように肩を撫でる。よほど会いたかったのか、いつもより力強く離れない。林と大塚はのんびりとその光景を見守っている。「大丈夫だよ。林くんと一緒だったし。お前こそこんなに遅くまでお疲れさま。疲れただろ。」よしよしと頭をなるべく優しく撫でた。労るようにゆっくり撫でながら抱きついたままの緒方を受け止める。緒方は神埼の肩に深く頭をつけているので顔が見えない。動かずじっとしている。今日は珍しいほど長い間神埼から離れようとしない。大塚と林は気にしないとしても余りにも離れないので何かあったのか心配になってくる。なんとなくいつもの緒方とは違う気がする。詳しく聞きたいが緒方は普段から悩み事を素直に話してくれないので、神埼は緒方が休めるように気を配ろうと思った。緒方が話したくなったときに話してくれればいい。それまでできるだけ緒方のそばにいて待っていよう。優しく撫で続ける。しばらくして緒方がゆっくりと顔を上げにっこりと笑う。少し元気になったようだ。「神埼くん。とても可愛いですね。。私の心はどんどん温かくなっていきます。ああ、やはり、出会えてよかったです」改めて神埼の顔を見たあとまた抱き締めようとするので神埼は照れてしまう。二人きりの時には構わないし嬉しいのだが、今は大塚と林が見ていてその視線が気になる。反射的に体を後ろに引いた。緒方は不満そうだ。「なぜ離れるのですか?とても寂しいです。私は神埼くんを抱き締めたいのです。さあ!」両手を上げて近づいてくるので神埼は慌てて大塚と林の方を見た。釣られて緒方も二人を見る。大塚は、仲がえ~の~と頷きながら見ていて、林は穏やかな優しい目で見守っている。気恥ずかしい。神埼は緒方から体をさらに遠ざけた。「大丈夫ですよ。神埼くん。あの二人は全然気にしていません。電柱が二本、突っ立っていると思えばいいのです。さあ、この胸に」俺達は背景かよ!と大塚の素早い突っ込みが聞こえてきた。尚更恥ずかしくて近づけない。しかし緒方が何度も笑顔で強制してくるので、仕方なく腕のなかに収まった。恥ずかしいがずっと会いたかったし、今日はいつもよりも長い時間会えなかったので嬉しい。心がどうしても弾んでいる。緒方は上機嫌で、やっと落ち着きましたと呟いていた。体全体を緒方から包み込まれるように抱き締められている。温かくてほっとした。「ありゃ、しばらく動かないな。俺達どうするよ?寂しい独り身だぜ」大塚は笑いながらからかっている。今更だろ。林は静かに笑っていた。帰り道、予定よりも遅くなったので晩御飯を一緒に食べるのは別の日にしようと話し合った。今度、美味しい焼きそば食べれる店に連れていくよ。大塚は笑っている。帰り道が楽しくてとても温かい。緒方と二人で帰るのもいいが、こうやって四人で帰るのもいい。神埼は嬉しくて心がとても優しく温かくなるのを感じた。誰かと繋がっている。次第に少しずつ広がっていく。初めは緒方と繋がり、次に木村と繋がった。大塚、林と不思議で見えない輪は広がっていく。温かくて嬉しくて自然に広がっていく。昔の自分は友達を作らなければと常に焦っていた気がする。うまくやらなきゃ、話さなきゃ、そればかり考え誰かといるととても疲れていた。でも今は別に話さなくてもこんなに自然に友達か増えた。数なんて多くなくていい。俺は緒方も大塚くんも林くんも木村さんも、みんな大切にしたい。夜空を見上げながら神埼は息をそっと吐いた。優しい温かな時間がゆっくりと過ぎていく。寒くありませんか?昼間はとても温かくなりましたが、夜は冷えますからね。さっきまで大塚と話していた緒方が神埼の手をそっと握る。手の温もりも表情も優しくて神埼は目を細める。「ありがとう。緒方。すごく温かい」そういうと神埼は緒方の手を強く握った。ずっとこうやって繋がっていたい。心で繋がっていたい。緒方の手が、大塚や林の存在が嬉しい。ありがとう。神埼は心のなかで呟いた。
皆様、こんにちは(*^^*)いかがお過ごしでしょうか?
ぽかぽか日差しになってきましたね!私は散歩と買い物以外はあまり外に出ません(笑)家が大好きなのです~。春はなんとなくわくわくしますね。皆様は何の季節がお好きですか?
ではでは素敵な時間をお過ごしくださいね(*^^*)




