第七十二話
教室の窓から淡い光が射し込んでいる。机を脇へと寄せて模造紙を広げた。神埼は頼まれたわっかを折り紙で作っていく。好きな色を選んで黒は隅へと置きながら色とりどりのわっかを作っていた。何でもいいと言われると迷うが、直感に従って選ぶと楽しい。どんどんわっかが増えていく。隣では広げた模造紙に林がなにやら下書きをしていた。大きな模造紙で5枚横長に繋げてある。林はスケッチブックを持っていてそのなかの絵を描いているようだ。神埼はわっかを作りながらふとそのスケッチブックを見てみると、はっとするほど美しい。絵なのにイキイキとしていて神埼の見たことがない風景がそこに存在していた。「すごい。。!綺麗だ!!」思わず感嘆の声を上げてしまって、とっさに自分の口を手で抑える。林がとても集中していたので静かにしていようと思ったのに。林はのんびりと神埼を見て笑っている。「ごめん!!真剣に作業してたのに。」せっかく林が一生懸命何かをしているのだ。静かなのに迫力があって、とても集中しているのが伝わってきたからそっと見守りたかった。失敗してしまった。下を向いた神埼を優しく林は見ている。「別に、気にしなくてもいいんだぜ。好きで描いてるしな。」見るか?とスケッチブックを神埼の前に持ってきた。神埼は目がキラキラしていたらしい。そんな大層なもんじゃないけれど。林は苦笑している。神埼はすぐさまスケッチブックを受け取りページを開いた。そこには静かな水辺や堂々と繁る木々など美しいのびのびとした自然の姿が広がっていた。さらにページをめくると可愛らしい苔や雑草の花がのんびりと存在している。すごい!!すごい!!とページをめくるたび神埼は叫んでいて林はついに声を上げて笑ってしまった。「気に入ったのならやるよ。好きなだけ持っていけ。どうせ誰も見ない絵だからな。好きな奴のそばにいたいだろうし。」林は座りながら背伸びをしている。絵を描くと体が固まるよなーと呟いている。「え?誰にも見せないの?勿体ないよ!俺、これ見てすごく幸せな気持ちになったし、心がわくわくした。大切にしなきゃ!緒方にも見せていい?」スケッチブックを抱き締めながら神埼は林に訴える。必死に何度も言うので林は参ってしまったらしい。わかった、わかったとまた苦笑している。「大切にするってどうやるんだ?コンクールに出すのか?まあ、見せたきゃ見せろよ。そこは神埼にまかせるから」お前ら、神埼に付いていけ。スケッチブックに顔を寄せてそっと話しかけながら笑っている。冗談だと思っているようだ。神埼はムッとした。「林くんはお前たちの生みの親だけど。大切にしようとしないから俺に付いてくるんだぞ。俺は真剣に考えるからな!」神埼も負けじとスケッチブックに話しかける。林はいよいよ大きな声を上げて笑った。わかったよ、神埼。俺が悪かった。だから、そう膨れっ面をするな。笑える!お腹を抱えてしまった。神埼はまだ疑いの目で見ていてそれが林の笑いを誘う。いつまでも笑い続けていた。「すごいな~!どうやったらこんなに美しく描けるんだよ。俺、美術、2だよ。先生からある意味、芸術的だってさりげなく気を遣わされたんだからな。」昔の神埼はいつも一人だったので先生もとても気を遣ったのだろう。必死に自分を傷つけまいとしていた美術の先生を思い出して吹き出した。大変だっただろうなとぼんやりと思う。罪作りな奴だな。林はのんびりと笑っている。「息をしてるのと同じだよ。親の介護してて、散歩に連れてって。目の前を見たら大きな世界が広がっているだろ。気づいたら描いてた。」親も絵を描くこと好きだしな。絵具は適当に買ってくるし。見ているうちに何となくだ。林は懐かしむように笑っている。「こんなに綺麗な世界に住んでて、たくさんの命が生きてるんだ。描かずにはいられないだろ。」神埼はもう一度スケッチブックを開いて一枚ずつ絵を見つめた。その一枚一枚に、美しい世界の実際にある風景が記録されているような気がした。それは雄大な山や空だったり、小さな鳥や木の実だったり。実際にここにあるものがイキイキと記録され綴られている。このスケッチブックがとんでもなく大切なもののように思えて、神埼は再びスケッチブックを抱き締めた。少し睨んで林を見る。「やっぱりこのスケッチブックは俺がちゃんと大切にする。林くんはめんどくさがって、やらなそうだし。」その言葉に林はまた苦笑した。痛いところを衝かれたようで、胸を抑えている。わかった。ちゃんと神埼に任せるから。そう怖い顔をするなよ。俺が悪かったから。両手を上げて降参のポーズを取った。そんなんじゃ足りないよ!口を尖らせて神埼は拗ねている。「あの緒方が敵わないわけだな。神埼。。最強だわ。」ぼそっと聞こえないように言ったのに神埼の耳には届いてしまったらしい。軽く睨んでいた目がさらに鋭くなる。触らぬ神に祟りなし。鋭く睨んでくる神埼は凄みすら感じさせてこっそり林は笑ってしまった。ちゃんと反省してます。真剣な目で見ながら頭をしっかり下げると神埼はうんうんと頷いて、またスケッチブックを開いた。気が済んだらしい。にこにこしながらページをめくる姿に、緒方が骨抜きにされるわけだなぁと林は神埼をぼんやりと見つめた。
皆様、こんにちは(*^^*)いかがお過ごしでしょうか?
この間お墓参りに行きましたら地面にオオイヌノフグリが咲いていました。とっても可愛いお花で、ああ、春がやって来てるなぁとほくほくして帰りました。可愛いですねぇ。。
春になると味噌ラーメンが食べたくなる。。ニケでごさいます。皆様に素敵な春が訪れますように。。素敵な時間をお過ごしくださいね(*^^*)




