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常識くんと愛さん   作者: ニケ
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第六十九話

神埼はそっと目を覚ました。目の前を見ると灰色の雲がもくもくと動いている。体を起こして周りを見渡すとあの灰色の空間だった。昔はこの空間、夢であることはすでにわかっている、にはあの長いトンネルがあってそれを囲むように大きな空間が広がっていたが、地平線が見えないほどではなかったはずだ。「前も見渡してみたけど、あの時は境目が見えた。今は見えないから広くなったのかな。。。」前回は確か長いトンネルに寄り添ってそのまま目を閉じながら寝てしまったら、夢が覚めて現実にいた。今回はどうだろうか。「あいつ。ナマズの口、どこいったんだろ?」いつも対峙する長くて大きなトンネルを神埼はナマズの口と名付けていた。あんなに大きな長いトンネルだ。すぐ見つかると思ったのだが、すべて見渡してみても見つからなかった。動くのも体が重くて上半身を起こすのがやっとだ。神埼は一つ息を吐く。灰色のなにもない広い空間。果てしなく続いている。ここは相変わらずなにもないのか。神埼は寂しくなってまた一つ息を吐いた。現実では緒方や大塚や木村、クラスメイトたちと触れあって楽しくやっている。前に比べたらとても優しくて穏やかな日々だ。なのに、ここはまだなにもなくてこんなにも寂しいのか。「この空間にも、あの優しい穏やかなものが流れ込んできたらいいのに。とっても温かくて安心できるんだよ。」そっと灰色の地面を撫でてみた。ざらざらしていて冷たい。ふと、違和感を感じて撫でるのをやめてみる。急に自分の胸の辺りが温かくなってきた。手を当てて確かめてみると、より強く熱くなってくる。なんだろう。なにかがやってくる。神埼は自分の胸の辺りを見つめてみた。「わ!なんだこれ!?」神埼の胸の辺りがから小さな光が放射されている。始めは小さく淡い光だったが、意識してみるとどんどん光が強くなっていく。眩しくてキラキラしていて、熱い。次第に体が軽くなってきた。「わわわ!なにこれ!?」ふわふわと体全体が浮いているような軽やかな気分になってくる。その強い光から次々と満開に咲いた大きな花が生まれて神埼の周りに散らばった。神埼は花の種類を知らないからこの花たちの名前はわからない。どんどん色とりどりの花たちが神埼から生まれて辺りに溢れてきた。「すごいな。。。何て言う花だろう。一つ一つ違う。。。」花が次々と生まれてくる胸の辺りを手で押さえながら、近くに散らばった一つの花を手に取ってみる。大きくてふわふわしていて華やかだ。また別の花は小さい白い花が集まって大きな花となっている。どんどん溢れてくる花たちに圧倒されつつも楽しんでいた神埼はおもむろに立ち上がった。「すごく綺麗だ。緒方にも見せてやりたいなぁ。。」散らばった花たちを一つ一つ拾っていく。その間にも神埼の胸から花は生まれてくる。すべてを集めるには切りがなかったが神埼は気にしない。花たちから甘く優しい匂いが溢れてきた。花たちを抱き締めてみる。一つ一つがとても愛しい。抱き締めて、また拾い集めてしげしげと見つめて。そうこうしていると、神埼の頭上の空から一筋の淡い光が射してきた。その光はどんどん大きくなっていく。思わず空を見上げる。雲の隙間から光が射していて美しい。幻想的な風景で夢なのにとてもリアルだった。神埼は目を細めて見ている。「緒方。。。携帯があればなぁ。。。」神埼は集めた花を両手に抱いてその光を見ていた。ぱちっと目が覚める。次の瞬間、甘い優しい匂いが神埼の鼻をくすぐった。目の前を見るといつもの天井だ。横を見ると緒方はいない。この甘く優しい匂いはなんだろうと神埼は首を振って探してみる。あ!っと思い出した。「そうだった。昨日、緒方からホワイトデーのプレゼントをもらったんだった。このアロマだな。」それはローズでとても優しくて柔らかい甘い匂いだ。これを緒方2号にそっとかけていたから神埼にも移ったのだろう。もう一度嗅いでみると優しい匂いがより強く感じられた。「ふふ、夢と同じ匂い。これがあの花たちの匂いの正体だったんだ。」さっきまで両手に抱いていたたくさんの花たちを思い出す。よく覚えていないがとても優しく愛しかった。ありがとう。緒方。。すごく幸せな夢だった。ふとんの中で大きな伸びをすると神埼は起き上がる。台所に行けば緒方が何か作っているだろう。昨日のジャムも一日寝かしておいたので、楽しみだ。「今日はパンケーキを焼いてやるか。」緒方は甘いものが好きだが、生クリームだけは苦手のようだ。なのでパンケーキに苺ジャムをのせて、生クリームの代わりにアイスクリームをのせてやろう。神埼は台所へと向かった。

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