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常識くんと愛さん   作者: ニケ
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第六十四話

まどろむような意識からふと目が覚めた。何度かまばたきをしてみる。指先を動かすと、思いの外軽い。今度は肩を動かしてみる。ずんとした重さのあとに簡単に動いた。目線の先には天井があって、いつもの天井とは違う。寝室で寝なかったことを思い出してゆっくり体を起こした。隣を見ると神埼が寝ている。とても安心しているのか、あどけない顔をしていた。起きているときの神埼はいつもどこか大人っぽくて年齢よりも落ち着いて見える。緒方と二人きりの時は感情を素直に表現するが、誰か他の人がいればクールな落ち着いた神埼になっている。緒方はそのどちらも好きだが、誰かといる神埼は感情を押さえ遠慮しているように見えて疲れないだろうかと心配にもなる。でも、もし神埼が誰にでも素直に感情を表現するようになれば、それはそれで自分は拗ねるのだろうなと思い、思わず苦笑した。他のことはあんまり気にならないのに神埼のこととなると途端にいろんな感情が湧き出してきて、心が激しく乱れ、長く続くので緒方は参ってしまう。これも神埼が自分を魅了している証拠なんだなと思い、やはり神埼には敵わないのだと実感した。今も神埼の寝顔を見ているだけなのに、こんなにも心がざわついている。心の奥が温かく優しいものかと思っていたら、胸が締め付けられるような切なさもやってきて、緒方はどうしていいかわからなくなってしまった。乱れに乱れている心を感じながらそっと神埼の頬に触れると、温かくて小さな温もりが指先からかすかに伝わってくる。「。。可愛いですね。。。」思わず顔を近づけておでこに唇をつけようとしたとき、神埼の後ろの方で音がした。見てみれば大塚が顎を手で支えながら呆れたようにこちらを見ている。「。。。いつから起きていたのですか?。。起きたのなら声をかけてくれてもいいものを。。。」もう少しで神埼に触れることができたのに。不満を込めながらわざと軽く睨んだ。大塚はその視線をなんなくかわしている。「。。そんな間がなかったんだよ。。お前。。あまりにも自然に動いたから。。」判断遅れるわ!大塚は小声で訴えてくる。つーか、お前らが恋人同士だって忘れてた俺のミスだけど。何やら一人でぶつくさと言っている。「朝御飯、食べますよね?ご飯がいいですか?それとも、パン?」神埼から離れるのは惜しい気もするが、大塚が目覚めたのなら仕方がない。朝御飯を作るべく台所へと立ち上がった。大塚が緒方をぼんやりと見ている。大塚には別に何を見られてもいい。そんなに語り合ったこともないが、彼のそばは昔から居心地がよかった。兄たちとはまた違った安心感と心地よさがあって、それは大塚が自分の気持ちを大切にしようとしてくれる心遣いにもあると緒方は思う。なんだかんだ言っても考えを強要することはないし、相手の考えを否定することはない。真っ直ぐに向き合ってくれて、最後まで聞いてくれる。それがどんな考えでも。「。。。俺、なんでもいいけど。お邪魔してるわけだし。。つーか、俺が作った方がよくね?」いいんかな。いいんかな。と大塚は呟いている。恋人の寝顔ってある意味凶器だよなと言いながらそっと神埼を覗きこんでいた。そういうやつなのだ、大塚は。どんな状態だろうが大抵のことは気にしない。彼が気にするのは心だけだ。「。。あんまり神埼くんの寝顔を見ないでくださいね。正直、気分が悪いです。」冷蔵庫を開けて野菜を確認する。白菜をお味噌汁用に残していた。買い物をしていたときに神埼が食べたいと言っていたなめこも取り出す。鍋に水を入れてお湯を沸かしていると、げ!!っという大塚の声が聞こえてくる。「やっぱり!!だから、俺がご飯作った方がいいって!!」神埼から距離をおくように上半身を後ろに引きながら緒方の方を見る。もう見ないから!!お前、神埼が絡むと怖いんだよ!!両手で神埼の顔を隠して見ていないことをアピールしていた。その行動に緒方は納得する。少し気が収まったようだ。大塚の慌てようにふと緒方は思い出した。「。。木村さんにも言われたのですが、私は嫉妬深いと思いますか?」念のため聞いてみる。自分では嫉妬している自覚はないのだが、神埼のことを思いながら話すといつも相手は自分の何かに怯えている。どうも様子がおかしいのだ。木村からは遠くで見つめられ目が合うと吹き出して笑われている。「。。。。。」しばらく大塚からじっと見つめられ、ため息をつかれた。ぐるりと向きを変え大塚の背中が見える。何だろう。わからない。「ああ、もう何でもいいわ。お前ら、ずっとイチャイチャしてろ。」その方が幸せだわ。周りにとっても。そういって大塚はごろりと横になる。寝るからご飯よろしくな~。のんびり声を出しながら手だけ上げてこちらに振ってきた。はいはいと答えながら緒方はお味噌汁を作る。今日はベーコンでえのきを巻いてみるか。やがてご飯が炊けた音が聞こえて、窓の外が明るくなってきた。朝は近い。

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