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常識くんと愛さん   作者: ニケ
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第五十六話

教室で緒方から抱きつかれた時はどうしようかと思った。さらにその腕の力が強くて、心の鼓動が激しくなり心地よいと思い始めたからさらに焦る。どうしてくれるんだ。抱き締めてくる腕を引き剥がそうとしても、びくともしないから。神埼は大人しく身を委ねるしかない。さらにそれが心を踊らせるから参ってしまう。諦めたように緒方の肩に自分の頭を収めた。放課後になって、昼のことを思い出しながら神埼は隣で一緒に帰っている緒方の頭を叩く。ぴょんぴょんと飛びながら頭を叩いてくる神埼を緒方はのんびりと眺めている。痛いですよ~と時々笑う。神埼くんはツンデレですね。勝ち誇ったように言った。なぜか嬉しそうだ。ちょっと悔しい。「そんなこと言うなら、今日のチョコレートケーキ、おあずけにするぞ!」わかりきった強がりを言ってみた。軽く流して自分をからかうだろうと思ったのに、明らかに慌てふためき謝ってくる。鈍いやつ。そんなところも好きだなぁとしみじみ思いながら、緒方を眺める。慌てる姿が面白いから放っておいた。「神埼くん!ツンデレというのはですね!とても誉め言葉なのですよ!可愛いとか、愛しいとか、そういう言葉もたくさん入っているのですよ!!たくさんの方を魅了しているという意味もあるのです!!」隣で何度も力説している。その姿があんまり必死で、神埼は笑ってしまった。そんなにチョコレートケーキが食べたかったのだろうか。「わかったから。帰ったら一緒に作ろうな。」緒方は甘いものが好きだ。ミルクチョコレートを少し多めに買っておいた。緒方用に作ったチョコレートの材料が余っていたので、それもデコレーションに加えよう。神埼は頭であれこれと考えてみる。「神埼くんはチョコレート好きなのですか?私ばかり貰っていて、悔しいです。」悔しい?その意味がよくわからなくて緒方の方を見やる。想像に反して緒方は穏やかな表情をしていた。その目がとても優しくて心がドキドキしてくる。「私は、あなたからいつも貰ってばかりですから。」緒方が手を伸ばしてくる。触れてくるのがわかるのに神埼は動けない。動きたくないのかもしれない。頬に添えられた手の温もりにそっと目を閉じた。目を閉じると温もりがより一層広がる気がする。不思議と心が落ち着く。「神埼くん、ありがとうございます。いつも、私に与えてくれて。ありがとう。」神埼の唇に温かいものが触れた。どうしてだろう。それだけで何かが心に溢れてきて心地よい。緒方の存在を強く感じるのは何故だろう。不思議だ。緒方の唇が離れてから神埼は目をぱちりと開けた。真剣に見つめてくる緒方に大きく笑いかける。バーカ。緒方のバーカ。両手で緒方の頬をつねる。縦に横に適当に引っ張った。緒方の真剣な表情が崩れていく。その様が面白くて、神埼はさらに頬をつねる。「神埼くん。。。なぜに。。。」呟きながら頬をさする緒方に神埼は声を立てて笑った。チョコレートケーキ食べたい。だから、そんな真面目に言うな。緒方の背の高さに届くようにジャンプを繰り返してみる。笑っていないと泣きそうだ。しばらく緒方は神埼を見ていたが、のんびりと歩き出した。スポンジケーキがふんわりするかどうかが大切ですからね。神埼に手をさしのべる。手を繋いで帰りましょう。穏やかに笑っている。「ふんわりかー。頑張ろうな。」その手を取って歩く。緒方と手を繋いで帰る。そのことがこんなにも嬉しい。緒方、ありがとな。繋いだ手を大きく振りながら家への道を歩いた。

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