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常識くんと愛さん   作者: ニケ
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第五話

ばたばたと人の足音が騒がしい。今日の食堂はいつもより混んでいる。朝のカウンセリングも終わり、やっとゆっくりできたのも束の間、神埼の仕事部屋に緒方がやってきた。なんだかもじもじしている。緒方のもじもじは、今に始まったことではないが、これは緒方が神埼に何かお願い事がある印だ。「。。何かしてほしいことがあるんだろ?何だよ。」神埼は、緒方の自分へのお願い事が嬉しい。いつも自分は彼に貰いっぱなしなのだ。自分も彼に何かを返したい。「。。!?神埼くん!?なぜ私があなたにしてほしいことがあるとわかったのですか!?。。やはり、神埼くんは臨床心理士なのですね。。。侮れません。」緒方は動揺した。普段、何にでも無関心のようなふりをして、神埼は大切な一番気づいてほしいことにすぐ気づく。そして、それを大切にしてくれる。緒方はそんな神埼の優しさが大好きだ。一方、神埼は、いや、バレバレだし。。。と心のなかで呟いた。緒方は切れ者だが、こんなところで鈍感だ。人の目を気にしないという凄まじい鈍感さも兼ね備えていることを、神埼は嫌というほど実感している。「実はですね。。。コロッケを作ってほしいのです。。あなたのコロッケが食べたいです。」えへへ!というような顔で神埼の方を見た。緒方のもじもじは続いている。食堂で昼御飯を食べていると、緒方は神埼をにっこり愛おしそうに眺めている。いつもの事だ。気にはしない。気にはしないが、昨日久しぶりに一人で寝たので、なんだか気恥ずかしい。やはり、自分は緒方に弱い。緒方がいれば自分はそれで満足してしまう。「今日はこれからオペがありますので、遅くなります。22時を過ぎると思いますので、先に寝ててください。」緒方は、名残惜しそうに神埼の頭を撫でると、自分の病棟に戻るために席を立ち歩いていった。その後ろ姿を見送る。もう彼は、一人の医者に戻っていた。彼の後ろ姿を何度見ることになるんだろう。嬉しいような切ないような、彼が今も昔も人気者で人に好かれることは重々承知している。警戒心が強い自分があっさりとなついたのだ。普通の人達に彼の魅力が伝わらない訳がない。昔から、今でも自分は彼に憧れている。あんな風に優しく、人を、自分を信頼して、人の役に立って。人のなかで笑って暮らせる。あんな風になりたかった。わかっている。自分と緒方は違う。緒方の人への愛し方があるように、自分にも自分の愛し方があるはずだ。「やっぱり、緒方には敵わないのかな。」勝ち負けなんて考えているうちは、相手に到底敵わない。頭ではわかっていても、心は納得していない。愛は競争じゃない。比べることでもない。勝ち負けなんて存在しない。愛は愛だ。そのままを受け入れる。緒方が神埼を受け入れたように。「頭ではわかっていても、心はなかなか納得してくれないんだよな。」そんな自分は、子供なのだ。自分勝手な、自分が思い描く愛の形がほしくて駄々をこねている。わかっている。これは、満たされなかったものを満たしてくれと言っているだだのエゴだ。周りに押し付けている勝手な要求だ。わかっている。わかってはいるが、緒方への対抗意識は収まらない。どこかで緒方より大きくなりたいと思ってしまう。「また、打ちのめされるかも。。」神埼は、大きな深呼吸をした。夕方からも一つカウンセリングが入っていた。

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