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常識くんと愛さん   作者: ニケ
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第四十六話

緒方がそわそわしている。何か隠し事をしているのがよくわかる。緒方は根が正直なので何かあるといつもと違う動きをする。それが動物のようなので、知らないふりをした方がいいと思うのだが、気になった。一旦、気になると雪崩を起こしたかのように雪だるま式に気になり出す。神埼は緒方にはっきりとその理由を聞こうか迷っていた。緒方の隠し具合が必死なのだ。よく林と話をしたり、お洒落な女子のグループへと話しかけたりしている。この間大塚と三人で帰ったときには、大塚に肩を叩かれてあたふたしていた。見ていて面白いが、つっこむべきか、悩む。それとなく聞いてみようか。悩んではいるのものの、深刻ではなさそうなので聞くタイミングが掴めない。しかし、放っておくには気になり過ぎる。どっちつかずの自分の気持ちにもやもやしてきた。神埼は、教室で話し込む緒方を置いて廊下に出た。長い廊下を歩きながら、一人になるのは随分久しぶりだなと思う。この頃は、緒方か、クラスメイトか、他の誰かといつも一緒だった。あんなに拒絶していたのに、早いものだ。それは緒方やクラスメイトたちの持つ温かさからだろうと思う。自分もあんな風に温かくあればいい。温かいのはとってもいいし、こんなに素敵なことだから。人のなかにしばらくいたことで、ゆっくりと自分のことを見つめ直せている気がする。神埼は昔の一人だった自分を思い出した。心を閉ざした冷たい自分も、あの環境では最善だったのだろうと今なら思える。傷つけられてばかりいる環境で、温かくなれば傷はより深く大きくなっていく。心を閉ざした冷たさが、自分を守ってくれたのだ。閉ざしていた自分が嫌いだったが、今では感謝している。あれでよかった。他にもっといい方法があったかもしれないけど。自分は精一杯、あの環境のなかで生きていた。心を開いて温かくなったり、心を閉ざして冷たくなったり。そこには自分への愛がある。だから、ありのままでいいんだ。無理をするな。神埼が緒方やクラスメイトたちから教わったことだ。本人たちは自分たちがそんなことを神埼に直接言ってはいないけれど。行動やしぐさや、一緒にいることで神埼はそう解釈した。自分を信頼して身を委ねてみたら?そんな問いかけも時々もらう。不意に風が神埼の頬を撫でていく。頭ではわからないから、心で教わろう。一緒にいることで知らぬ間に変わっていくこともある。わからないことだらけだけど、だから、自由なんだよな。頬を撫でる心地よい風を、神埼は大きく吸い込んだ。教室に戻ってみると、緒方がきょろきょろと首を激しく振っている。落ち着きがなくそわそわしていて、さっきよりも弱冠パワーアップしていた。。。面白いな。。。面白いから、そっとしておこう。神埼は遠くから緒方を見つめていた。そんな神埼に気づいたのか、緒方が猛烈な勢いでやってくる。いつものさっとした雰囲気ではなく、どどどど!という感じだ。緒方の後ろから炎が激しく燃えていた。「神埼くん!自然は好きですか!?」自然。。。なぜ。。自然。。。「実はですね、素敵なレストランがあるのですよ。体に優しい調味料や新鮮な野菜を使った料理が大変人気なんだそうです。行ってみませんか?」今度の土曜日に。緒方は力説する。一生懸命そのレストランをアピールする緒方に、神埼はなんだか自分はとんでもなく幸せで、意味もなく笑ってしまった。そんな神埼を緒方はきょとんと見つめる。「行くよ。緒方、お前と一緒ならどこでも。」素直にありのまま言ってみる。本当は思ったことを言いたかった。自分の言葉でずっと伝えたかった。神埼は胸の奥の柔らかい部分に、あの優しい風が吹き抜けた気がした。目の前の緒方の動きが止まった。あんなに激しく動いていたのに。不思議に思って顔を覗きこんでみると真っ赤になって手までも色が変わっている。怒ってもいないのにあの猿になっていて動かない。やっぱり緒方は面白いなぁと神埼は改めて思った。

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