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常識くんと愛さん   作者: ニケ
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第三十七話

教室が慌ただしい。全体的にそわそわしている。何かあったのだろうかと緒方は首を傾げた。1月下旬だ。イベントも思いつかないし、これといった学校行事もなかったはずだ。緒方は自分が何か見落としていないか、よく考えてみたけれど、悲しいかな。何もない。「林くん、今日は何かあるのですか?皆さん、いつもと様子が違うようですが。。」比較的前列の林は、弁当を食べている。朝御飯を食べ損ねたらしい。今のうちに食べておかないと授業が始まってしまうのだ。前列なので、先生に見つかってしまう。「緒方。。お前、この時期は、バレンタインの準備期間と言ってな。長年温めておいた思いを胸に好きなやつの好みを聞く、という非常にデリケートな時期なんだぜ。ここで、好みを聞かれなかった者は、ほぼ確実といっていいほど、。。もらえない!!!」持っていた箸を縦に激しく机に叩きつけ、目を見開いて緒方を見る。ここが恋愛の正念場なんだ!とアピールしている。そんなものなのかなぁと緒方はぼんやりと思った。今日のみんながそわそわしている理由を言うと、また林は何事もなかったかのように弁当を食べている。神埼もチョコレートがほしいだろうか。それよりも今この時期に神埼の好みを聞かないと、自分の思いを疑われるだろうか。神埼はいつもどこかで遠慮する。温かいものや、自分が愛されているという感覚が育っていない。受け取ろうとしないし、いざ目の前にくると居心地が悪そうにしている。長い目で緒方は神埼に愛を感じられるようになって、愛を受け取れるようになればいいなと思っている。そのために今回のバレンタインのチョコレートが役に立つなら。緒方は林に感謝の飴玉を送り、席を立った。今日は神埼と一緒に学校へ来て、日直だからと神埼は職員室に行っている。もうそろそろ戻ってくる頃だろう。廊下に出て神埼を待った。光が暖かい。やがて向こう側から大きな荷物とともにやってくる。窓の外を見て、眩しいのか目を細めている。可愛い。「神埼くん。持ちますよ。」そんな緒方の声に視線をこちらに向けて柔らかく笑った。午前中の授業が終わり、昼休みになる。林によると、昼休みにそれとなく話題に上げ、放課後に好みを聞くのがベストらしい。まだバレンタイン本番には時間があるから、それとなく、がポイントだ。緒方は神埼に視線を向ける。至って普通でバレンタインを気にしたそぶりはない。昨日の夜一緒に作って入れた弁当を食べている。「神埼くん。甘いものは好きですか?」これはオーソドックスな質問だろう。お見合いで、ご趣味は?と聞くような自然な質問だ。我ながら素晴らしい。「甘いもの?緒方、お前、甘いもの食べたいの?今日、帰りに買っていくか?」きょとんとしたあと、考えるようにうーんと唸っている。美味しいケーキ屋さんって近くにあったかなぁ。調べないと。話が別の方向に進んでしまっている。そうではない。「あ、いえ。その。神埼くんは、甘いものはよく食べるのかなぁと思いまして。」戻してみた。これならどうだ。神埼自身のことを聞いているのだと伝わるだろう。「。。?俺?。。お前。。食べたいなら食べたいと堂々と言えばいいだろ?全く。。何が食べたいんだ?言ってみろ。」あきれたようにため息をついて、次に緒方をにっこり笑いながら問いかける。。。まさか。。これは。。前にもこんな場面があったような気がする。「。。神埼くん。わざとですか?」まさかとは思うが、自分の考えていることはすべてばれているのだろうか。じとーっとした目で神埼を見て反応を伺った。その姿に耐えられなくなったらしい。神埼が大声で笑っている。「。。あはは!!だって、お前、わかりやす過ぎ!!朝、教室に入ってから変だったから。なんかあったなって思って。」ものすごい真面目な顔してたぞ。と言ってまだお腹を抱えて笑っている。そんなに真面目だっただろうか。馴れないことはするもんじゃない。「いいじゃないですか。もうばれたのなら、いいです。で、どうなんですか?好きですか、チョコレートは。」ばれてしまったら、楽だ。さっさと聞いてしまおう。好みを知ることは早いに越したことはない。準備がゆっくりとできる。その分手間をかけられるというものだ。「別に何でもいいよ。俺も作るし。緒方は?」どんなのが好きなんだよ。からかうような、様子を楽しむようなそんな目だ。神埼は時々、緒方をこんな目で見る。「私は、チョコレートケーキがいいですね。チョコもケーキも食べられますから。」きっぱり言った緒方に、欲張りだな!神埼はまた大きく笑った。放課後、一緒に帰りながら神埼は緒方を見上げてきた。なんでしょうか?と聞くと、お前って背が高いよな。手を伸ばし神埼は緒方の頭を優しく撫でた。バレンタインの準備期間であることを林に教えてもらった、と伝えるとちゃんと感謝のお供え物をするんだぞ、俺も明日渡すから。神埼は嬉しそうに笑った。

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