表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
常識くんと愛さん   作者: ニケ
33/319

第三十三話

しばらく緒方の様子がおかしかった。でも、今日は落ち着いている。昨日までは妙にそわそわしていて、自分といることが苦しそうに見えた。だから自分のこの想いがついにばれたのかと冷や冷やした。もう長い間、緒方のことが好きだ。緒方と一緒にいることが多くなって、寂しい思いが満たされてゆく。だから、緒方のことは友情であの時の想いは、自分が寂しかったから、緒方に憧れていたからだと思ったのに。どうしても、緒方が気になる。一緒にいると安心するけど、それと同じくらいにドキドキする。言いたくはないが、きっとときめいている。緒方はいつも神埼の気持ちを尊重した。何に対しても自分の考えは言うが、神埼のことをすべて受け入れてくれる。自分が間違っているときは、優しく辛抱強く話してくれる。時々緒方の仕草や自分を見る目が優しくて、どこか男を意識させて。神埼は困ってしまう時がある。自分だって、男だ。女みたいだと言われたことも自分で思ったこともない。こんなのはおかしいし、許されないことだ。この想いは勘違いだ。。。勘違いであってほしい。隣で弁当のハンバーグを頬張る緒方をそっと盗み見る。なぜだろう。こんな普通の顔なのに。イケメンではないし、顔は緩んでるし。さっきだって、体育でボールを顔面にぶつけた。全然凛々しくないのに。。。かっこいい。。神埼は自分の気持ちにどう対処すればいいのか、途方にくれていた。緒方が男らしくなったことを敏感に察知したのは、神埼だけではない。元々面倒見がいい上に真面目で優しい。緒方は秘かに一部の女子に人気がある。神埼は女子たちが緒方に惹かれる理由が痛いほどわかる。安心するし、我が儘も聞いてくれるし。運動も勉強もできて優しい。神埼が緒方を好きなのはそれだけではないが、緒方は魅力的だ。どうしよう。。。こんなにそばにいられるのは短い間だけで、きっと今だけだろう。それもいつ終わるかわからないほどの不安定な時間。今日かもしれないし、明日かもしれない。今はとても温かくて楽しいが、それがすぐに消えてしまうのだ。怖い。神埼は一人震えた。一人になりたくはないが、このまま終わるかもしれない恐怖に震え続けるのはもっと辛い。神埼は決意した。緒方断ちをしよう。緒方に悟られないように静かに。少しずつ。そうすれば、緒方にもこの想いを気づかれることはない。自分もこれ以上かき乱されることもない。若いときの過ちだったんだ。帰宅時間が近づいてきた。帰り支度をしながら、夕日をぼんやりと見つめる。こんなに赤くて美しかったんだな。ずっと緒方と帰っていた。とても温かい優しい景色だ。神埼はこの夕日を自分は一生忘れないだろうなと思った。緒方が好きで、その好きな人と一緒に帰ったこと。その時の二人を包み込んでくれた夕日。それは赤くて、綺麗で。神埼は夕日をいつまでも眺めていた。誰かが走ってくる音がする。その足音で目が覚めた。ゆっくりと体を起こしてみる。いつの間に自分は寝ていたのだろう。誰かがそっと近づいてきて、そばに寄り添う。「。。お待たせしてしまいましたね。。帰りましょうか。神埼くん。」そっと、頭を撫でられた。緒方はよく神埼の頭を撫でる。でも今日は少し様子が違う。その手が今度は頬を撫でてゆく。どうしたのだろう。緒方は黙っている。何も言わず、ただ自分を見つめている。その目は真剣で、真っ直ぐで、熱い。。熱い?どうして?緒方の雰囲気に気圧されて神埼は緒方の目をぼんやりと見つめるしかなかった。熱い。目をそらせない。ふっと、風が吹き抜けた気がする。その風は優しくて温かくて。気がつくと緒方の睫毛がすぐそばにあって。心が踊るような、血が燃えるような。そんな初めての感覚。緒方の存在を強く感じる。神埼は自然と目を閉じた。神埼の頬に涙がこぼれていく。それは緒方しか知らないことだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ