表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
常識くんと愛さん   作者: ニケ
31/319

第三十一話

久しぶりの学校はとても怖くて、それでも緒方のためにも行こうと決意していた。緒方から一緒に行こうと言われたときは躊躇したが、思いきって行ってよかった。授業がとても面白い。勉強はこんなにも楽しくてすんなり頭に入るものだったのだろうか。わくわくして、何よりもクラスメイトたちの息づかいが楽しい。居眠りをしたり、真剣に聞いていたり。お腹がすいて早弁をしている者もいる。なぜだろう。とても愛しい。「おいこら!林!!お前まだ10時過ぎたぞ!弁当は早すぎるだろ。弁当は。」先生の指摘に教室から穏やかな笑いが起こる。だって。。腹が減ったんだよー。。その答えに今度はどっと大きな笑いが起こった。愛しいな。神埼はほくそ笑む。ここはこんなにも温かな場所だったのか。。改めて思った。風邪をひいて寝込む前、とにかく周りが面倒で冷えていて。あまり関わり合いたくなかった。挨拶をしないだけで、どうして声もかけないのかと批判されているようで。だから、気配を消して息を潜めて勉強だけに集中するようにしていた。緒方と一緒に学校に来ていても、クラスメイトたちはほどよい距離を取ってくれる。気を使うわけでもなく、放っておいているわけでもない。気にしていないようで見守り、何かあれば声をかける。それはそれぞれの温かな想いがひとつの大きな優しさになっているようで。これが緒方のいう愛ってことなのかなと神埼は思う。緒方は何かと神埼に、神埼くんには愛が足りません!いいえ。愛に包まれているのに、心を開いていません。少しは私たちを信頼してください。とよく首をふって嘆いていた。その姿は動物のようで申し訳ないが笑える。「。。林。これ、あげる。」ちょうど緒方から看病のためにのど飴を買ってきてもらっていた。お腹は満足にはならないが、少し気は紛れるかもしれない。後ろの席の林に渡した。「。。おお!。。神埼。!お前優しいな。。みんな笑ってるだけなんだぜ。」林は感動している。腹が減るのは元気な証拠だよなー!いいことだよなー!林はあれからずっとのど飴を嬉しそうに食べていた。なんだかくすぐったい。自分が渡した時、のど飴を大事そうに受け取りありがとうと林は笑っていた。人との触れ合いがこんなに楽しいなんて。神埼は嬉しくて優しくて、少し心が痛かった。もっと早く心を開いていたら。そんな申し訳なさも心の奥でくすぶる。ごめんな。ありがとう。ありがとう。受け入れてくれて。ありがとう。待っていてくれて。ありがとう。信じてくれて。様々な想いが神埼の中を駆け巡る。それでも、最後に残ったのは、ここにいることができる喜びとクラスメイトたちへの感謝だった。太陽がキラキラ輝いて、昼休みになる。昼御飯の時間だ。神埼はまだ本調子ではないので、緒方は神埼に温かいスープを作ってくれた。カップにうつしてゆっくりと飲み込む。当然のように緒方も神埼と一緒に昼御飯を食べている。「熱くないですか?おかゆでもよかったのですが、さすがに飽きたでしょう。」その労りの言葉が嬉しくて、首を縦に振ったのだが。。。次の瞬間、緒方の弁当の方が気になる。緒方自身は肉をこれでもか!と弁当に入れているのだ。焼肉ソースのかかったとてもジューシーな肉だ。。。ほしい。。「緒方。。俺、肉がいいな。。」視線を向けてねだってみた。案の定緒方は澄ましている。駄目ですよ。神埼くんはまだ病み上がりですから。昨日は特別だったんです。しらを切っている。口を尖らせて、そっぽ向く。拗ねたときの表情だ。その横顔が憎たらしい。大方、緒方はおかゆに飽きたのだろう。だから、そんなに肉を多めに持ってきているのだ。「緒方。スープやるから、肉よこせ。」緒方の弁当から肉をすっと取ってやった。緒方は慌てる。「か、神埼くん!?そんな!私のお肉ですよ!?昨日、食べたじゃないですか!!」昨日は食べたが、目の前でそんなに美味しそうに食べられたらほしくなるというものだ。甘いな。緒方。その言葉に知らん顔で肉を食べる。。。美味しい。。「ほら。緒方、スープな。」スープの入ったカップをずいっと緒方の前に置いてやる。「。。神埼くんは、我が儘になりました。。」なんか言ったか?と緒方を軽く睨めば、なんでもありません。。としずしずとした声が返ってくる。家にある肉を独り占めしようとしたからだ。ざまあみろ。肉を食べられて機嫌よく口を動かしている自分を見て、緒方は恨めしそうにスープを飲んだ。そして、ゆっくりと自分の顔を見て、にっこり笑った。「。。。なんで笑ってるんだよ。」意図がわからなくて聞いてみる。「だって、あなたが笑っているから。」その言葉に神埼の動きが止まる。緒方の後ろは窓で、光が眩しい。自分が泣き出しそうになっているのは、きっと光が眩しすぎるからだ。神埼は素知らぬふりをして肉をほうばった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ