第二十九話
体もだいぶ動くようになった。食欲も増した。これなら大丈夫。明日学校へ行ける。緒方にはとても世話になった。感謝してもし尽くせない。ありがとうと緒方に伝えてもこの頃は拗ねてふて腐れるだけだ。「緒方。ありがとう。元気になったし。明日は学校へ行くよ。お前も行くだろ?」緒方はもじもじしている。もじもじという表現は合っているのだろうか。何か言いたそうだが、言いにくいような。何かあるのだろうか。しばらくして緒方は顔を上げた。「学校へ行ったらまた、一人でいるのですか?」眉と眉の間にシワがある。深いな。。緒方のそんな顔はなんだか笑える。まだ高校一年生。若いのに。そんなことを考えていた自分はいつの間にか笑っていたらしい。緒方から、何、笑ってるんですか!と怒られた。ますます緒方の眉のシワは深くなる。拗ねているみたいだ。「。。ごめん。。つい。。」どうしようか、と神埼は思う。長く休んだ後、急に緒方と一緒にいるようになれば周りから変な目で見られるかもしれない。ずっと、中学生のころから自分は一人だったから。。。いや、その前からか。神埼は悩んだ。緒方のためを考えれば、自分はまた一人でいた方がいいだろう。前よりも不思議とそれが寂しいとは思わない。この一人でいたアパートも目覚めてから2、3日緒方とのんびりしていたら、寂しくなくなった。また寂しくなったら、緒方家に行けばいい。神埼は自然に自分が緒方家へと遊びにいくことを考えていることが不思議だった。不思議だけど心地いい。心地いいから、それでいいではないか。自分のことを押し込めようとすると、あの不思議な空間にいた子供のことを思い出すのだ。あの子に約束した。もう閉じ込めない。無視しない。自分の気持ちをちゃんとぶつける。だから。「緒方。。一緒にいてくれないか?家にも時々、遊びに行きたいし。」考えてみたけれど、一人より二人の方が楽しそうだ。本当ですか!?嘘ではないですよね!?緒方は神埼の肩を掴んで何度も何度も聞いてくる。そのたびにそうだよ。一緒にいるよ。と伝えれば、静かになった。あんなにはしゃいでいたのに、どうしたのだろうか。そっと緒方の顔を覗き込むと、手を目に当てている。。。!!緒方は泣いていた。「よかった。。よかったです。。神埼くん。。もう。。一人ではないのですね。。よかった。。」静かに泣いていた緒方が、次はおいおいと泣き始めた。神埼くん。。よかった。。と呟きながら。「馬鹿だなぁ。緒方。。泣くなよ。」いつの間か神埼も泣いていた。こんな自分のために本気で泣いてくれる人がいるなんて。また心が痛くなってその後に涙が溢れていく。涙が止まらなくなるだろ。神埼は緒方の肩を撫でると溢れる涙を拭った。二人はしばらく泣いていた。




