第二十四話
灰色の不思議な空間が広がっている。ポツポツと明るく、どこか暗い。寂しいような、懐かしいような。自分はずっとここにいた気がする。神埼はこの不思議な空間をしげしげと見つめた。どこから来たんだろう。いつ来たんだろう。懐かしくて、苦しくて、寂しくて。悲しい。不思議な痛みと空間。吐く息も、動かしいてる足の感覚もない。自分が存在していることが不思議だ。そんな空間。神埼はふわふわとした感覚のままその空間を歩いた。どれくらい歩いただろうか。目の前にぼんやりと光が照らされている。まるで淡いスポットライトが当たっているかのように。その明かりは淡くて、弱い。どこか頼りなくて、儚い。目をそらしたら消えてしまいそうだ。そのスポットライトの中心に何かいる、人?。。いや、子供だ。子供が膝を抱えてうずくまっている。こんなところに一人だなんて。放っておけなくて、神埼はその子供に近づいた。人の気配に気づいたのだろう。うずくまっていた子供がゆっくりと顔をあげた。虚ろな目をしてどこか遠くを見ている。焦点が定まらない視線を無理矢理合わせて神埼を見る。「お兄ちゃん、どこから来たの?また僕を否定しに?」にっこり笑う。諦めたような冷めた目だ。子供の周りを漂う空気が暗い。無気力で何もかも諦めたような。「そんなこと。。!するわけがないだろ!」思わず駆け寄り、その虚ろな目を見た。なぜだろう。胸の辺りがものすごく苦しい。何か強烈な胸やけがする。吐きたくても吐き出せない何か。ずっと奥に押し止めていたもの。それがせりあがってくる。息が苦しい。「じゃあ、お兄ちゃんも僕を置いていくんだね。しょうがないよ。僕は価値がないダメな奴だから。」またにっこりと笑う。無理に笑っているという感じではない。むしろ、無理に笑ってくれたほうがましだ。この子には感情がない。「そんなこともしない!そんな悲しいことを言うのは止めてくれ!!」悲しい。苦しい。寂しい。胸の辺りが、痛い。あまりにも辛くて。気持ちが悪い。子供は激しく嘔吐する神埼を虚ろな目で見上げている。胸にあるものをある程度吐き出して、ようやく嘔吐は収まった。神埼は子供に向き合う。隣に座り、その虚ろな目をしっかり見た。隣にいてくれるの?という子供の問いにゆっくりと大きく頷いた。「両親は?」「。。。僕がダメな子だから構ってくれないんだ。。。僕、いつも周りを失望させちゃうし。」体の小ささよりも、大人びている。「僕ね、一生懸命がんばったんだ。こんな自分でもいろんなこと出来るようになれば、振り向いてくれるって。」話を聞いてもらうことが嬉しいのだろう。少し目に光が宿った。しかし話ながら、今度は顔を下に向けて俯いている。「出来るようになって、僕がいい子になれば、構ってくれて抱き締めてもらえると思ったの。」なぜだろう。胸が締め付けられる。「でもね、ダメだった。やっぱり僕はダメな子なの。どんなにがんばっても、いらない子なの。」神埼を見て笑う。「だからね、僕は諦めることにしたの。僕に構うとね、みんな嫌な思いをするの。だから僕は一人でいるの。」神埼は黙って子供を見つめた。この子は自分と同じだ。同じ悲しい思いを持っている。神埼は柔らかくその子供を撫でた。なぜだろう。とても、とても愛しい。神埼は子供の手を強く握った。




