第二十三話
祖父に呼び出された。大方、神埼のことだろう。祖父は何か自分の気に入らないことや気がかりなことがあれば、すぐ誰かにぶつけたがる。勇気はのんびりと目の前の大きな家を見つめた。緒方家の本家。立派な門があり威厳がある。それは、伝統と医者という社会的地位の大きさだろう。今も昔も医者は大衆から崇められる。勇気としては、患者が医者を信頼してくれるから医者は存在できるわけで。そこまで家の門構えを大きくして、己の凄さを主張しなくてもいいのに、と家の大きさを見る度に思っていた。本当に素晴らしいものは、みんなわかっている。感謝しているのなら、心に伝わる。自分はその感謝の気持ちと愛がとてもありがたい。毎日のように感謝の手紙やお礼として様々な品物が届く。ありがたい。祖父は家の奥にいる。長い廊下を歩いていく。無駄に長い。人を呼び出したのだ。玄関に居ればいいものを。勇気は自分の正直な気持ちに思わず苦笑した。自分はとことん、祖父が苦手らしい。「よく来たな。座りなさい。」祖父が座っている。威圧感がすごい。力で圧して、力で人を怯ませる。相変わらずだ。「ご無沙汰しております。」正座をし、深々と頭を下げた。祖父のことは尊敬している。考えが合わないだけで。会うことも話すことも苦ではない。「今日、お前を呼び出したのは、一番下の愛のことだ。付き合っている今の友人のことを調べさせてもらった。」祖父は、自分たち兄弟に友人ができるとその人物が祖父のお目にかなっているか徹底的に調べる。今回は神埼の出生のことだろう。成績は文句なしに結果を出している。「神埼という少年と付き合うのは止めさせなさい。彼は出生が悪い。あの両親から生まれたのだ。しかも不倫の子だろう。ろくな人生を歩まん。愛に悪影響を及ぼす前に、別れさせなさい。」決して自分の手を汚そうとしない。もし、祖父自ら行動を起こすならば、勇気はそれに対応しなければならないが。「。。。。」勇気は、しばらく考えるように俯いた。。。。ふりをした。自分は跡取りだ。祖父は自分に弱い。「。。。お祖父様。私は同意できません。神埼くんは素晴らしい少年です。私は彼にはこれからも弟の愛のそばにいてほしいと思っています。」真っ直ぐ正面から祖父を見つめた。案の定、祖父は顔をしかめている。ここで、跡取りである自分でなかったら、癇癪を起こし、静かな威圧感に物を言わせ何がなんでも祖父の思い通りにさせたはずだ。「もし、神埼という少年が愛を傷つけ、愛が間違った道を歩んだとしたら、どう責任を取るつもりだ。お前にその責任を果たせるのか。」緒方を傷つけるのは、あなたでしょう。とさらりと思ったが、表面には出さない。「その時は、私が愛も、この緒方家も守ります。大切なものを大切だと認めて、何があっても堂々と守り抜く。勇気。それが私の名前ですから。」ふんわりと勇気は笑った。緒方家の本家を出たあとは肩が凝る。緒方に肩をもんでもらおう。神埼が熱を出したといって、緒方は血相を変えて出ていったらしい。いいことだ。勇気はのんびりと家路を歩いた。




