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常識くんと愛さん   作者: ニケ
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第二十ニ話

神埼が寝ている。その寝顔は幼い子供のようだ。幼稚園児の安らかな寝顔。体は高校生でも、心はまだこんなにも幼い。なぜだろう。そんな気がした。先程、熱があるのにすばやく起きてきた神埼を見て、びっくりした。あのいつものピリピリした雰囲気を感じて、風邪をひいてこんなに目が虚ろなのにこの切羽詰まった雰囲気はなんだろうと心配になった。とにかく安心させたくて、大丈夫だと伝えたくて。彼の必死さを見た気がした。神埼の抱えているものが溶けてゆけばいい。自分はその正体がわからなくてもいい。とにかく、神埼をゆっくり休ませてやりたかった。離れるのが嫌なのか、自分の服の袖をぎゅっと握って、静かに目を閉じていく。うつらうつらと頭が揺れる。大丈夫。大丈夫。自分はずっとそばにいるから、安心してふとんに戻ってゆっくり休んでください。そう、呟いた。その言葉にまた目を開けて、じーっと神埼は自分の目を見つめる。しばらくして素直に頷くと、手を離しふとんへと戻っていった。神埼の後ろ姿は幼い。頼りなくて、小さくて、どこか儚い。あまり一人にはしたくない。手早くタオルと氷水の入った洗面器を持って神埼のところへと行った。とても眠そうだ。唇がかすかに動いている。冷たく冷やしたタオルを額に置いて、神埼の顔をのぞきこむ。よかった。穏やかな顔をしている。それでも、まだ足りないような気がして。神埼の頬を撫でた。神埼が眠りたいだけ眠らせてあげよう。朝も昼も夕方も関係ない。神埼が眠りたいだけ。我慢することも、遠慮することもないように。彼にはきっちりと休むということをわからせなければ。神埼の寝顔は可愛い。自然と顔がほころぶ。神埼が穏やかなら、自分はすごく嬉しい。よく父が、母の機嫌がいいと母さんが幸せなら、父さんも幸せだ~!と叫んでいた。今ならその気持ちがわかるような気がする。神埼が笑っていると、自分の心の奥の深い部分から、優しい、温かいものがくつくつと湧いてくる。それは体全体に広がって心地よい。その温かさを感じながら緒方はこの温かさが神埼にも伝わればいいなと思った。こんなに温かいんです。優しくて、穏やかで。これが父が言う幸せかもしれません。神埼くん、あなたはどう思いますか?眠っている神埼に話しかけてみる。静かな穏やかな寝息がする。愛しい。緒方は目を閉じた。神埼はそのあと一週間ほど眠り続けた。時々お腹がすいたのか、目を覚ましてそばにいる緒方の方を見上げる。穏やかに笑って、ちょっとねだるように見つめて。緒方の手元にあったおかゆと緒方の目を交互に見る。「わかりました。ご飯が食べたいのですね。」その言葉に嬉しそうに笑い、口を大きく開けた。食べさせてほしいのだろう。緒方は苦笑する。「どうぞ。熱いですから、気をつけてください。」ふうふうと冷ましてから口に入れる。今度は満足そうに笑う。数回口に入れると、静かに目を閉じた。お腹がいっぱいになったのだろう。寝息が聞こえてきた。そして、眠りに入る。その間緒方は熱を計り、額のタオルを交換していく。徐々に、ゆっくりと熱は下がっていった。神埼が意識を回復したのは、夕方。穏やかに笑っている緒方の姿が見えて、甲斐甲斐しくタオルを絞っている。神埼はまだ知らないが、倒れてから一週間とちょっと経っていた。

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