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常識くんと愛さん   作者: ニケ
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第二十一話

かちゃかちゃと音がする。人の気配がする。両親が帰ってきたのだろうか。こうしてはいられない。起きなくては。また引っ張り出されて怒鳴られる。神埼は眠くて重いまぶたを無理矢理こじ開けた。体を起こして立ち上がろうとする。体は重いが、起きられないわけではない。それよりもこれから起こる両親との絡みが面倒だ。目が冴えてきた。布団から這い上がって、音のする台所へと向かう。妙な緊張に耐えながら顔を上げた。しかし、そこに両親はいない。「?」ぼんやりと台所に立つ人物を見やる。「。。!?まだ熱が下がっていません。寝ていてください。」そこには緒方がいた。自分はぼーっとしていたのだろうか。緒方が慌てたように近づいてきて、額に手を当てている。ほら!まだ熱い!!今度は心配そうに頬を撫でた。「寝ていてください。大丈夫ですから。」しきりと頭を撫でられる。よしよしと撫でながら自分の目をじっと見ている。穏やかな、優しい目だ。大丈夫。こいつは、大丈夫。まぶたが急に重くなった。体もどっと重くなる。「。。緒方。。眠い。。。」眠い。ゆっくり眠りたい。今度こそ、ゆっくり眠りたい。なんだろう。すごくほっとする。初めてなんだ。こんなに眠いのは。心の奥がとても重くて、心地よくて。じんわり温かい。今なら、ゆっくり眠れる気がする。そうでしょう。そうでしょう。緒方は明るく笑った。不思議だ。こんなに落ち着く。誰かの声を聞いて、こんなに穏やかになるなんて。もう少し聞いていたい。大丈夫ですから。また頭を撫でられた。緒方の声が遠くなる。遠くなってしまう。もう少しだけ、聞いていたい。布団の中に潜って、静かに息を吐く。学校はどうしたのだろうか。緒方は大丈夫なんだろうか。それよりも、今は眠りたい。とても眠い。ああ、眠い。されど、眠い。こんなに眠いなんて。今まで抱えていたものが胸の奥から溢れて。体が動かなくて。またかちゃかちゃと音がする。今度は近くからだ。しばらくした後、額がふんわりと冷たくなった。冷たいけど、柔らかい感触が自分の頬にそっと添えられる。眠い。よくわからないけど、とにかく眠い。心が重くて体が重くて。あんなに冴えていた目も、頭も、今は動かない。いつもは力を入れれば動く体も、どんなに力を入れようとしても動かない。眠い。眠いんだ。緒方。。。すごく眠いんだ。。。緒方に話しかけてみる。かすかに緒方が笑ったような気がした。いつもと違う。柔らかくて、穏やかで。優しい。ああ、なんて、優しい。大丈夫だ。もう大丈夫。ゆっくり休める。相手を疑わなくていい。気を張らなくてもいい。ただ、穏やかに身を委ねればいい。神埼は大きく息を吐いた。

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