第十八話
熱を出してしまった。急激に寒くなったのと、無理が響いたのだろう。38度を超えている。どうしようか。学校に連絡するにもかなりきつい。まだ明け方の3時だ。このまま寝ると、朝には目が覚めず学校に迷惑をかけるかもしれない。それは忍びない。ふと、神埼は緒方から昨日携帯の番号を教えてもらったことを思い出した。晩御飯をご馳走になって、そのあとお風呂に入って。緒方に自分の住んでいるアパートまで送ってもらった。神埼が一人暮らしであることを知ると、緒方家の家族全員が泊まっていきなさいと言ってくれたけど、それはちょっと、遠慮した。とても温かい人たちだとわかる。優しくて心地よくて。でも、このまま泊まってしまったら自分の家に帰ったときに余計寂しくなる。これ以上寂しくなったら、神埼は一人で生きていく自信がない。失うのが怖くなってしまう。緒方家の家族のなかで、神埼が泊まらないことを、緒方の父は一番残念がった。泊まってほしいけど、無理を言ってはいけないなぁと、渋々帰ることを承諾した他の面々に比べて、父はとにかく、また来なさい!やっぱり泊まっていきなさい!とうるさかった。「そんなに無理を言わないでください。神埼くんが困っているではありませんか。」緒方にとっても残念なことだが、晩御飯を食べに来てくれたのだ。それだけで嬉しい。そのあとの父の弾けっぷりは凄かったが。神埼の家までの帰り道、二人はのんびりと歩いた。真っ暗で、寒くて、明かりなんて時々しかないのに。ずっとこの帰り道が続けばいいと思った。「このアパートが俺の家。ここまででいいから。」早く寝よう。寂しさがやって来る前に。神埼は大きく息を吐いた。神埼の住んでいるアパートを見て、緒方はしばらく黙った。神埼はどうしてこうも一人になるのだろう。彼が一人を選んでいるというよりも、一人で置いていかれている、という感じだ。何もかもが彼を一人にしていく。悔しい。「神埼くん、携帯を貸してくれませんか?」自分は、何があっても神埼からは離れない。もう一人にはしない。驚いた表情で神埼は目をぱちぱちしている。可愛い。どうしてこんな可愛い人を一人にするのだろう。もう一人にはしない。




