第十四話
晩御飯のことを伝えたら、神埼は案外あっさりと承諾してくれた。疑問に思い聞いてみると、「お前を育ててくれている家族だろ。怖くないよ。」さらりと何でもないことのように言う。穏やかに優しく笑うので、心がドキッとした。神埼のこうした笑顔は心臓に悪い。これから家で起こるだろうことも、心臓に悪い。晩御飯は、グラタンだという。神埼に何がいいかを聞いて、母に伝えた。どうなるのだろう。父と二番目の兄はともかく、あの二人が黙っている訳がない。特に母は恐ろしいほど機嫌がいい。母さんが幸せなら、父さんは幸せだ~!鈍感な父にもわかるほどだ。二番目の兄、元気は首を傾げ、一番上の兄、勇気はいつものように静かに笑っている。それが朝の風景だった。プレッシャーだ。神埼は、さっきからころころと変わる緒方の表情を見ていた。自分を晩御飯に誘っておいて、怯えている。よくわからないが、緒方の手に余ることが起こっているらしい。珍しいなぁと思う。神埼から見れば、緒方はいつもそつなくこなしていて、隙がないというよりは、楽しくて仕方がないという感じだ。勉強も楽しい。生徒会も楽しい。きっと家に帰るのも楽しいのだろう。神埼には温かい家庭で育っている人間がわかる。自分には無いものだ。そして、ずっと心のなかで秘かに憧れている。自分が緒方に憧れているのも、こんな温かいものが緒方から滲み出ているからだろう。もちろん、神埼が緒方に惹かれ、好きになったのはそれだけではない。「。。。本当にいいのですか?無理をしなくていいのですよ。」心配そうに見つめる緒方を見て笑った。よくわかる。こいつは優しい。人が苦手な自分を気遣っている。いつも、自分の感情を尊重してくれる。大丈夫だよ。しょんぼりとして無理はしないでくれと全身で訴えている。そんな緒方の頭を撫でてやりたい。神埼は緒方に触れたいが、きっと、引かれるだろう。安心させるように頷きながら笑った。穏やかな神埼を見て、とても安心したが、一方でとてつもなく心配だ。もちろん、神埼のことは一番心配だが、大きすぎる地雷は自分の家にある。そう、地雷だ。父は母の味方だし、勇気は得たいが知れない。唯一、元気はまともなので庇ってくれそうだが。朝も母の機嫌がいい理由を聞いて、そうですか!よかったですね。私も楽しみにしていますよ。と言ってくれた。「元気兄さんに事前に電話をしておこう。。。。怖い。。。」そう。家が怖い。神埼と一緒に帰れることは嬉しいが、そのあと慎重にならなければならない。相手はあの二人だ。避けることができた例は、一度もない。いつも当たり前のように負けている。緒方は、気が重かった。




